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七市屋探偵事務所~オーパーツ回収なんでも屋~  作者: paranormal
第1章 サイボークと少年
6/7

捜査官 御厨香苗

 勇気が目を覚ました時そこは警察病院のベットだった。

 なぜなら、勇気はちょうど殺人事件のあった現場からほど近い立ち入り禁止区画とされる廃れた商店街の場所に倒れていたからだ。

 殺人事件は起ってしまった。

 今まで通り魔の傷害で済んでいたはずが殺人と言う大きな事件へ発展した。

 警察はそのために大きく動き出して容疑者を捜索するために付近を捜索中に勇気を発見した。

 警察は勇気を重要参考人として捕縛し怪我していたために病院への搬送をされた。

 目を覚ました際にある程度の話を目の前の警察の捜査官である茶髪の強気な目をした女性から聞かされて勇気はたじたじとなって彼女の質問に歯切れ悪くごまかすた応対をしていた。


「だから、俺は偶然あの場所に仕事の事情で立ち寄っただけっすよ姐さん」

「しらをまだきるか? いいか、勇気てめぇがこの事件のことに関してなにかを掴んでるのはわかってんだ。いいから、吐け」


 目の前の捜査官である彼女、御厨みくりや香苗かなえとは古い付き合いだった。

 それも勇気は職業柄といえる。

 彼女とはいわば仕事の経緯で幾度か顔を合わせて知る間柄になった。

 勇気が高校生のころからの付き合いであり彼女もまた勇気がどういう仕事をしているのかは知っておりこの事件がなんらかの不可思議な要素があると強く推測して、この問題に詳しい勇気に詰め寄っていた。


「姐さんが思うようなことはなんもありません」

「じゃあ、あの商店街のあちこちにあった斬痕はなんだ? おまえのその斬り傷もいい証拠だ! 通り魔は何者だ? それに今回のはどういう類の化け物が絡んでる?」


 彼女も勇気とかかわる中で世の中の裏事情を知っている数少ない一人。

 だけど、御厨香苗は捜査官としてはその類に関しては対応はできない。

 そのために正体がそれの関係だと判明し苛立ち、対処をどうするべきかを急いで聞きだしたく勇気に正体を吐くように進言する。

 勇気としては彼女は一般人でありいくら捜査官でも『オーパーツ』には対応はできない。

 なので、かかわらせたくあらず口をつぐんで笑いながらごまかすのが精いっぱいだった。


「化け物か……。一つだけ教えますが今回は化け物は絡んでいません。でも、姐さんのいうように不可思議な現象は絡んでますよ。だからといって警察に任せる事案ではないんで真実は話ませんけどね」

「真実を話せないで通るか! 市民の命をこっちは守ってるんだ! ほかに被害が出さないように相手の存在を吐け!」

「だからって何ができますか? 過去に姐さんはかかわってきた奇怪な事件でなにか対応できたことってあるんですか?」

「ないさ! だが、捜査官として出来ることが今回はあるはずだ」


 強引な彼女の態度に勇気は頭を掻きながらあきらめて一つだけ情報を口にした。


「俺の通う大学のある一人の片倉という教授を捜索してくださいませんか」

「教授? そいつは何者だ?」

「今回の事件の容疑者です」

「なに? 容疑者は捕まえた。廃屋に埋もれていた少年ではないのか?」


 廃屋に埋もれていた少年という言葉を聞いて勇気は彼女に詰め寄った。


「どういうことだよそれ!」

「あ? どういうこともなにも被害者の血痕を全身に浴びていた少年のことだ。てめぇが廃屋に吹き飛ばしたんだろう? だから、てめぇは重要参考人として事件の詳細を報告する義務がある」


 勇気はあの状況を第3者視点となって考えてみた。

 確かに、あの現場で被害者の血液を全身に浴びていた野郎は少年ただ一人で容疑者扱いされるのも仕方がない。事実を知らない警察からすると少年が第1容疑者とされるのだ。


「困ったことに今回逮捕したその少年は意味のわからないことを言う。自分は自分じゃない。ここはどこだとか帰らせてほしいとか」


 勇気は腕に刺さった点滴のチューブを強引に外して足を床におろして踏みしめて立ち上がる。


「おい、何処へ行く気だ! まだ寝てろ!」

「姐さん、今すぐにその容疑者のもとに連れて行ってくれないか」

「は? そんなことできるわけないだろ!」

「姐さん、彼、いえ、彼女は容疑者ではないんだ」

「ん? 今彼女と言ったな? たしかに少年は自らの性別が認識できていない状態にあって自分が女だと言ってる。まさにそれを知ってるとばかりな言い回し……やっぱり何か知ってるのか!」

「良いですから連れて行ってくれ!」


 襟首を掴まれて強引に勇気は揺さぶられる。

 勇気も必死に抵抗して襟首をつかんだその手を掴んで強引に引きはがそうとする。


「こっちも事情があるんだ。警察官として重要参考人である人物と容疑者を会わせるにしても手続きがいる」

「じゃあ、その手続きを済ませろ!」

「できないって何度言えば分かる! そうすぐできるようなことじゃない!」


 いがみ合う両者の空気を壊すように病室の扉が開かれた。

 病室に入ってきたのはアイリスと西兄弟とアリスだった。


「な、なんでアイリスたちがココに!?」


 アイリスは泣きはらした顔で勇気に向かい駆けよって抱きついた。

 バラのような良い香りが鼻孔をくすぐり女らしい柔らかい肌が勇気を優しく包み込んだ。


「ばかぁ……心配かけないでよぉ」

「アイリス……」


 人の前で平然と抱きつきながら泣きじゃくるアイリスを勇気も優しく抱き返してそっとその頭をなでる。


「わるい。心配かけたな」

「本当よぉ……」

「それにしてもどうしてココが?」

「それは私さ」


 その言葉に対して返事をしたのは同じく病室に入ってきたアイリスと同じ金髪をした一人の美女で勇気の恋している人物アリス・クラウリーであった。


「あはは。嬉しいな。アリスさんまで見舞いに来てくれるなんて」

「見舞いではないよ。彼らをここに連れてくるべきかと虫の知らせで勘付いて護衛も兼ねて来たわけさ」


 などと言いまわすが実際、アリスは見舞いも兼ねていた。

 しかし、本人としては照れからかそれが素直に口に出しては言えなかった。

この虫の知らせという言い回しはアリスの情報稼業において客から噂で耳にした情報と言うこと。

さらに彼女の能力であるテレパスで周囲の状況を嫌でも耳に聞こえてきてしまう体質によるものだった。


「それはそれでショックだな。それはそうとその連れて来てくれたのはよかった」


勇気はアリスが照れているなど思うこともなく心底がっかりした表情を浮かべた。


「おい、面会を許可した覚えはないぞ。今すぐ出て行ってくれ九条もクラウリーさんも!」


 御厨香苗は外の警備員を呼び出してこの場からアイリスたちを追い出そうとするがアリスが含み笑いをもらす。


「それは無駄なこと。外の彼らは私の言うことに絶対服従の暗示をかけたからしばらく呼んでも来ない」

「また、私の部下に暗示を使ったのかクラウリーさん!」

「ふふっ、ごめんなさい。でも、今回の事件を解決したいなら私たちを追い出すのは得策ではないわよ。香苗さん」


 笑って謝罪を口にしながらも全然その謝罪には誠意は籠ってはおらず現状を打開できると言う。

 その言葉を聞いてはさすがの御厨も言葉を詰まらせて「どういうこと?」と質問してくる。


「はぁー。今の容疑者が捕まってるような事態はさすがにまずいか。話をしますと今回の一件は『オーパーツ』がかかわっている」


 勇気は最初から最後まで事の経緯を話した。

 すると、次第に御厨香苗は表情を青ざめさせた。


「うそ……。今まで捕まえてきた被害者の精神障害にも説明がつく。じゃあ、全員正常な判断だった? やばい。今すぐ署に被害者の精神障害を撤回させるように手配しないと。それに容疑者の件もだ」


 彼女は髪を掻き毟りながら苛立ちを身振りで表しながら電話をしだした。

 すると、例の片倉教授の捜索の依頼の件も口にして勇気はほっと安堵の息をこぼす。


「ええ、お願いだ」

「どうなんだ?」

「どうもこうもない。署は混乱だ。上にはまたうそをつく羽目になった。今回捕えた少年は真の容疑者の薬によって催眠暗示により殺傷事件を起こしたってね。さらに被害者は毒物による傷害で自律性が失われているって伝えたがいいわけには苦労したぞ」

「うまい言い訳だ。姐さんもずいぶん口が達者になったな」

「誰のせいでこうなったと思ってるんだ、だれのせいで!」

「あはは」

「ったく、それはそうとその話が本当ならばそこにいるのが容疑者の身体の持ち主なんだな?」

「ええ」


 香苗の眼はアンドロイドの少女に向けられていた。

 少女アンドロイドも自分が西雄二だと言うと香苗はしばらく苦悩しながら何度か頷いた。


「どうにかかけあう。とにかくまずはどうしたい?」

「こちらとしては戻したいので一度彼女と会わせてもらえたらいいなと思うな。それから、姐さんに押収された『意識刀』も返してもらえるとうれしいね」

「……どうにかしよう。じゃあ、まずは着替えるんだな」

「それならココに持ってきたの」


 アイリスは手に持ったかばんを勇気に押し付けた。

 その中には勇気の私服が入っていた。

 

「おー、サンクス。じゃあ、着替えはどこで」

「ここで着替えていけばいいだろう。私たちは出てる」


 そう言ってぞろぞろと病室から立ち去っていく。

 最後まで着替えを手伝おうと言うことを聞かなかったアイリスを強引にアリスが連れ出しほっとし勇気は手にしたシャツの袖に腕を通し着替え始めた。


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