斬り裂き魔と行方不明の弟 中編
伏線回収していく話です。
物語は進みます。
少女型アンドロイドの一言は依頼者の西司を『お兄ちゃん』と呼んだ。
それに対して、勇気とアイリスは言葉を失い目を瞬かせた。
それはおかしな話だ。
西司は兄弟は弟しかいないということしか聞いてはおらず、さらには彼は人間でアンドロイドの少女の兄であるという関係はおかしい。
だったら、西司もアンドロイドであるとなる。
もしくは彼女が西司の両親が養子として引き取った特殊な親子関係であるならば司の妹になるがそれも西司の証言からすればないだろう。
「えっと、どういうこと?」
アイリスは困ったように勇気に尋ねた。
勇気だって、聞かれてもわからずに首を振る。
「ちょっと、君さなんか勘違いしてないか? 彼は妹なんていないはずだし弟ならいるって聞いてるけど」
「……わかってます……だって……僕はたった一人の弟だから……」
「はぁ? いやいや、君は女の子でしょう?」
「今はこの身体でそう見えますけど僕は正真正銘の弟です。この身体は赤の他人のものです! それより、ぼくの兄は何があったんですか! これはあなたたちの仕業ですか!?」
「ちょっと、落ち着け。君のお兄さんは意識を失ってるだけでなにも俺たちはしていない。弟を探すように依頼を受けてるためにこうして意識を失ってる彼を事務所に運んで目を覚ますまで寝かせただけだ。」
パニックになった少女アンドロイドに必死に説明をした。
ようやく理解を示した少女アンドロイドはおとなしくなって彼の傍らに座る。
それより、少女アンドロイドの言葉が妙に勇気は引っかかった。『身体は赤の他人』。
言ってる意味がよくわからず頭の中は混乱する。
しかし、冷静に彼女、否、彼かはわからずとも今までのこのアンドロイドの言葉を順番に思い返した。
まるで、自分のことなのに人ごとのような言い回し。
さも、アンドロイドの知識がないような口ぶり。
最後には西司を兄だという。
「そう言えば……」
勇気は執務席に向かって歩いていく。
そのまま引き出しを開けて『オーパーツ』のチェックリストを見た。
その中に該当するような名義の『オーパーツ』があった。
「『意識刀』か」
アイリスが顔をあげて勇気の言葉に反応を示す。
「それって、確か相手を斬る衝動を抑えられずになってしまう刀で斬りつけた相手と斬った相手の意識を交換してしまうって能力の『オーパーツ』だよね」
「ああ。どういう用途で扱われてきたのかは分からない代物だが危険な『オーパーツ』だ。もしかしたら、ここ最近の斬り裂き魔事件ってのとも関係あるかもしれない」
「じゃあ、その『斬り裂き魔』の事件をたどっていけば」
「ああ、彼の弟の身体を操ってる誰かと『意識刀』を見つけられる」
勇気はさっそくリストをしまうとパソコンを操作した。
ここ最近に『斬り裂き魔』の目撃情報はアリスから聞いた話によると歓楽街の西側で目撃がある。
キーワードに『斬り裂き魔』街の名前と西側と入力すると2ちゃんサイトで数多くの証言情報が得られた。
「なぁ、君名前は?」
勇気は兄のそばで佇んで座り、兄のことを心配そうに見つめているサイボーグ、もといアンドロイドの少女に聞いた。
正確には彼女の中の意識である西司の弟だ。
「西雄太です」
「じゃあ、雄太君、君の最後の記憶はどこで途切れてる? 実際その少女には君は乗り移っているということはもしかしたら君本体が『意識刀』をもっていると仮定している」
「えっと、どういうことですか?」
「とにかくだ、君の最後の記憶を知りたいんだ」
「でも、最後の記憶と言ってもあまり覚えてないんです。僕、歓楽街を散策していた時までは覚えてるんです。そこで、誰かに会って……それから……」
「それから?」
「思い出せない……ボク……誰に会って何をもらったんだ? ……ボクなんで男の人とあんなに普通に話してる……誰だっけ?」
西雄太の状態を見て、記憶の消去が見られた。
それは西司と同じ。
つまり、何者かによる記憶の改竄があった。
「大本の犯人がいるな。この騒ぎを引き起こしてる」
「でも、一体誰よ? 何が目的?」
アイリスからもっともな疑問がかけられた。
「それは俺にだってわからない。ただ、この騒ぎは早急に止めなくてはいけないのは俺たちの仕事だ」
勇気は執務席を立ち、時間を確認する。
夜6時。
日が沈んで仕事の早帰りの帰宅時間が始まってる頃合いである。
アイリスのそばにまでよって彼女の肩を叩く。
「アイリスはここで兄弟見ていてくれ。俺は一人で例の現場に行ってみる」
「え!? ちょっと、ダメよ! 何があるか分からないんだよ! 私も行く!」
「いいや、待ってろ。もしかしたら、彼の中に入ってるその少女の意識が身体を探しに来るかもしれない。その時に何かあった時は吸血鬼のお前が必要だ」
「っ! で、でも勇気は誰が守るの!?」
「俺は守られるような人間じゃない。じゃあ、行ってくる」
そのまま勇気は事務所を去って現場へ向かう。
その後姿を眺めながらアイリスは心配で胸が締め付けられる思いだった。
「あ、あの人はどこに?」
「雄太君の身体を探しに行ったのよ。雄太君は心配しないでここにしばらく居てね。外に一人でいるのは危険だから」
「は、はい」
西雄太は素直な返事をした。
彼はただ、意識を失い眠った兄が心配なようだ。
アイリスは少しでも彼の心配を和らげるように頭を撫でて兄は時期に目を覚ますことを伝えた。
そろそろ第1章終盤に向かいます。
さて、ここにて最初のオーパーツ回収に向かいます。
『意識刀』をどうやって回収するのかは次回にまでお楽しみください。
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