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だから俺は死神になった  作者: 林 愛
2/4

手紙

夏休みも残り少なくなってきた。今日入れてあと1週間と一日である。俺にとっての夏休みは暇すぎる。話し相手は、妹しかいない。毎日午後1時頃起きて、昼飯を食べて、アニメ見て、お菓子食べて、ゲームして、夕飯食べて、風呂入って、ネットして寝る。この生活を1ヶ月間続けると朝食という概念がなくなることと、体重が3キロ増えることがわかった。このことを自由研究にしようかな、などと高校2年が考えているとは思えないことを考えながら、ベッドから上半身を起こした瞬間

「パチン」

という音と共に背中に激痛が走った。

「うあああ」

思わず絶叫してしまった。後ろに振り向くと、顔を真っ赤にした妹の姫依が木刀を持って立っていた。

「なにすんだよ?」

と少し怒った口調で言うと姫依は

「そそそんな、か格好で、なな何してるの?」

と少し震えた声で言ってきた。俺の格好は今パンツのみだが、別に寝るときパンツ一丁の人などたくさんいると思う。

「わわ私が、いい言っているのは、ふふ布団の、とと隣にある、そそその本のこと」

布団の隣を見ると、エアコンつけて寝たら鼻水が止まらなくなったためティッシュと、昨日届いたネットで買ったエロ本が開かれた状態で置いてあった。

「そそその格好で、とと隣に、ええエッチイ本とティッシュって、まままさか」

「いや。待ってくれ誤解だ」

「嘘だ。しし静姉がこないだ男の人がエッチイ本見てるときは、はは発情しているときって言ってたもん」

くそーあのやろー。姫依に変なこと吹き込むなよ。ただでさえ中学3年という年頃の女の子なのに。静姉こと青木静香は、近所に住む大学2年の幼馴染である。俺の父は姫依が産まれてすぐ死んでしまった。なので俺と姫依には母しかいなくて、仕事柄家にいないことが多かったので、俺と姫依はよく近所の青木家に預けられた。青木家は青木剣術流という流派の道場であり、俺や姫依はそこで武術を習った。俺は去年で辞めたが、姫依はまだ道場に通っている。そう言えば道場の稽古は15時までだった気がするのだが、ズボンに着替えながらそんなことを思っていると、

「ねぇお兄ちゃん」

「なんだ、まだいたのか」

「うん。ああのさ」

なんか姫依の顔が赤い気がする。熱でもあったから、稽古を早退したのか。

「おおお兄ちゃん。き今日が何の日かわかる?」

姫依がモジモジしながら尋ねてきた。今日、何かあったか?まず今日は夏休み終了まで、あと1週間と1日だった気がするつまり今日は、8月23日である。8月23日、8月23日、8月23日8月23日8月23日・・・

「何かあったけ?」

「酷い。もういい」

「お、おい」

「お兄ちゃんのバカバカ」

姫依は、怒りで顔を真っ赤にして俺の部屋から出て行ってしまった。姫依があんなに怒ったってことは、姫依にとって大切な日なのだろう。

「あ!」

思い出した。今日は姫依の誕生日だった。ヤバイ。妹の誕生日を忘れるなんて兄貴失格なのでは。とにかく、急いで姫依に謝らなければと、2階にある俺の部屋からダッシュで姫依がいる1階のリビングに向かって走り、リビングに着いてドアを開けようとした瞬間ドアの鍵が閉まっていてドアに激突してしまった。

「痛ってー」

「大丈夫。お兄ちゃん。わぁ、おでこから血が出てる」

姫依がドアを開けて出てきた。

「大丈夫だ姫依。慌てるな」

「本当に大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ。心配してくれてありがとな。あと、姫依の誕生日忘れてた俺が悪かった。すまん。愛する妹の誕生日なのに」

「もういいよ。そそそれより今、愛するって」

「ああ。俺はお前のこと家族として愛してるぞ」

「家族としてか。でも、ウフフフお兄ちゃんお兄ちゃん」

なんか姫依が変なモードになってしまったので、部屋に戻ろうとしたら

「お兄ちゃん、許してあげるなんて言ってないよ」

「いや、姫依さっき、もういいよって言ってただろ」

「え?何きこえなーい」

「いやいや、聞こえてんだろ」

「お兄ちゃんが今日、私と一緒に映画観に行くなら聞こえるよ」

「わかったよ」

「やったー。じゃあもう行こう。10分後リビング集合ね」

「わかったよ」

まったく、照れたり、怒ったり、喜んだり、忙しい奴だ。

10分後、俺と姫依は家を出た。後ろを誰かが、ついてきてるとも知らずに。




映画館に着いて観たい映画を姫依が30分もかけて選び、選んだ映画は15時スタートで時間があったので、近くのファミレスで昼飯を食べた後。駅ビルをぶらぶらしていると

「お兄ちゃん」

「なんだ?」

「誕生日プレゼント買って」

「あまり高いのは、買うなよ」

「わかった」

「あと、なるべく早く選べよ」

「うん」

と言い姫依は、近くの文房具屋に入ってった。俺は、自動販売機でジュースを買い、文房具屋の前で待ってることにした。早く選べと言ったけれど、女性は何かを選ぶのに異常な位、時間をかけるので一緒にいると疲れる。それにしても、高2の夏の思い出が妹と誕生日祝いに映画を観に行きました、とか寂しすぎるだろ。確かに姫依もかわいいけど、彼女が欲しい。せめて高2の終わりまでに彼女が欲しい。このままでは、姫依に依存してシスコンになりかねない。

「お兄ちゃん。決まったよー」

珍しく早いな。

「どれだ?」

「このブックカバーがいい」

「これでいいのか?真面目だな」

「えへへへ」

値段は、1500円だった。遠慮するなと言えるほどお金は、ないので助かったが、もし妹に遠慮させていたら兄貴として恥ずかし限りである。




映画館に戻り映画を観た。姫依が選んだ映画は、兄妹で恋してしまった兄と妹が周囲の反対を押しきり最終的に結ばれる、といった内容のものだった。この映画を観てますます、このままではシスコンになってしまう気がした。早く彼女を作らなくてはと決意して、映画館を出て、少し早めの夕飯を食べて帰っている。

「今日は、ありがとうお兄ちゃん」

「どういたしまして。楽しかったか?」

「うん。楽しかった。また、2人で来ようね。約束ね」

「わかったよ。それより今日、稽古を早退したのってこのため?」

「う、うん。そうだけど」

考えてみたら、この夏休みで一番長く外にいたと思う。シスコンが悪化しそうだったとは言え、楽しかったし充実した1日だった。

帰ってポストを開けると、俺あての手紙が入っていた。「横芝諒太様へ」と封筒書いてあるけど送り主の名前がない。

「お兄ちゃん誰から?」

「わからん。気味悪いな」

とりあえず、家の中に入り俺の部屋で封筒の中身を出すと、手紙が1枚入っていた。そこには

「あなたの今欲しいものは何ですか?あなたの願いは何ですか?正直に聞かせて下さい。」

と綺麗な字で書いてあった。誰かが、ふざけてポストに入れたのだろうか?そう言えば切手がないので郵便で送られてきたことはないだろう。間違えて誰かが入れたのか?いやでも、ここら辺で横芝なんて名前は俺の家くらいしかないし

「まぁいいや。次入れられてたら警察にでも言うか」

俺は、もう一度手紙を見て呟いた。

「願いか・・・。彼女が欲しい。あはは。単純過ぎるだろう俺」

このとき僕はこの手紙を楽観的に見すぎてた。この冗談半分で言った呟きが後にどれ程重要な物となるか知る由もなかった。

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