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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校低学年編
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無人島・パラダイス

「さぁ、跪けぇ!」


 悪の王、苛烈に立つ。楽しげな面持ちで。彼を止められる物などは、この場所には存在はしない。過ぎ去りし後にはいかなる動植物が持っていた魔力の残滓すらも残らない。


 相川は禍々しい気配を抑えることもなくしばらく島の中を徘徊していた。どうやらこの島はかなり大きいらしく多少生態系を崩しても問題なさそうだと勝手に判断しながら扉を探しながらモノを食い潰しているのだ。しかし、虫はあまり食べたくないということで放置している。余程魔力を持つ虫は殺して魔力を奪うことはするがその体は珍しいものでなければ捨てていっていた。


「いかんねぇ。発言が恥ずかしいレベルだわ。まぁテンションが高いから仕方ないよな! うんうん。仕方ない仕方ない! 皆死ね! ……っと。そろそろお昼ご飯の時間にするかね。」


 跪けとか何言ってるんだろう俺などと考えつつ笑っていた相川は海岸でとっ捕まえて持って来ていた5メートルはありそうな巨大な魚を持ち直すと地面へ魔力を通し、何かしらの金属を表面に押し出して不純物を弾き飛ばした。


「んじゃ、【骨髄炎呪こつずいえんじゅ】……内部から美味しく焼けてくれ。それと鱗も邪魔だし表面も燃えろ。」


 相川の近くで巨大な火柱が上がる。しかし、相川的にはフランベのようなものなのですぐさま炎は鎮まり、高温にさらされている魚が口から燃え盛る髄液を垂れ流している状態になるだけだ。


 その様相はまさに異様だがこの場にいるのは相川のみ。誰も気に留める者など居はしない。その匂いに誘われてきた恐鳥のような化物も焼き鳥にしながら相川はついでに焼き塩を作り、焼き上がりを待つ。


 そうしていると猫がやって来た。


「おー可愛いなぁ……魚やろうか? 鳥やろうか?」

「みー……」


 弱々しく泣きながら警戒する猫。相川はそれとも取って食おか? と続けたかったが自重して焼き鳥と焼き魚を見ることで猫から視線を外し、敵対心を持っていないことを示す。


 しかし、猫は逃げてしまった。


「ありゃりゃ。まぁ仕方ないね。」


 取り立てて残念そうな素振りは見せずに相川はシニカルに肩を竦めて香ばしい匂いを漂わせ始めた魚の方に向き直る。しかし、向き直ったのは体だけで精神は先程猫が逃げて行った方向……現在、何か巨大な氣が迫って来ている方向に向けられている。


「……まいったなぁ。猫は嫌いじゃないのに……あーあ、おかずが一品増えることになるのか……猫って寄生虫持ってるのが多いけど鶏肉と豚肉のミックスみたいな味だったよな……」

「なぁごぉっ!」


 息を殺していたつもりらしい先程こちらを窺っていた猫よりも大きな猫がこちらに向かって飛び掛かって来る。しかし、相川は振り向きもせずに裏拳を入れてそれを殴り飛ばし、一度だけ忠告した。


「……おかずは足りてる。逃げないなら殺すが……どうする?」


 殺気をばら撒きながら魔力混じりの瘴気を滲ませる相川。しかし、飛び掛かって来た猫は相川の一撃により動くこともままならず耳を倒し、尻尾を足の間に挟んで動けなくなるだけでその場で怯えるだけだった。


「おやおや、食い殺されたいのかな? 別に肉体的に食わなくても魔力的に食うことも可能だが……」

「な、なぅぅ~!」


 悪魔のような、いや悪魔よりも邪悪な笑みを浮かべながら動けない猫に近付く相川とその当事者との間に割って入る先程の子猫。それは小さいながらにも一生懸命大きな猫を逃がそうと毛を逆立てて相川を威嚇して来た。


「ふしゃっ!」

「うっわ、マジ可愛い。これはお持ち帰りだわ。えーと……」


 手を翳すとびくっとして逃げたい素振りを見せるが逃げない子猫。相川の心の琴線に触れたらしい。久し振りに念話をやる方法を探って波長を合わせて子猫の思考とリンクした。


『こわいよこわいよこわいよこわいよこわいよこわいこわいこわいよぉ……』

『よぉ子猫ちゃん。そんなに怯えてどうしたよ。』

『こわいこわいこわいこわいこわい……ぇっ! でっかいばけものがしゃべった!』

『クックック……そこの倒れた猫はお前さんの親か何かかい?』


 驚いて逃げ出しそうになっている子猫の後ろにいる猫を相川は指して子猫に尋ねると子猫はためらいがちにそれに同意した。そして相川は割と酷いことを言う。


『それを見逃して欲しけりゃお前は俺のペットになってずっと付いて来い。何、餌は良いモノを毎日やるよ。断るなら親子ステーキにする。』

『う、ぅ……ママ……』

『俺の指が全部倒れるまでに決めろ。』


 相川は5本指を立ててすぐに折り始める。それを見て子猫はもはや考える余地はないと叫ぶように鳴いた。


『なぅっ! なります!』

『よし、いい子だ。ではそこの親猫に用はない……殺しはしないつもりだが取り返しに戦いを挑みに来るつもりなら殺すから。さっさと行け。』


 親子の別れすらさせずに相川は親猫をこの場から立ち去らせる。しかし、動けないようなので治療しておまけに巨大魚のヒレをプレゼントして逃がした。


『……ばいばい、ママ……』

『さて、念話は結構魔力を喰うからもうしない。これから俺は時々お前の毛皮でモフモフするから抵抗したかったらしてもいいが……ククク。』


 不気味な笑みに子猫は怯えて固まる。それはそれとして相川は念話を切って子猫にそろそろ出来上がる魚と鳥の焼いたものを提供し、自らの物には塩をかけて食べ始めることにした。


「よっし、癒しも手に入ったことだし食事も万全……後は扉を確認しつつ破滅をまき散らすか!」


 子猫は相川が何を言っているのか分からないが取り敢えず碌でもないことを言っているのだろうという予測だけしつつも美味しいご飯もらえるならまぁ割といいかもと早くもこの生活に順応し始めていた。










 その頃、相川が上陸した浜辺ではダツのような魚が船に風穴を開けるなど大変な状態を招いて多くの子どもたちが怪我を負ったり、早くも死亡している人物まで出てきていた。


「……瑠璃、周囲を索敵したが……この場所はかなり危険な生き物の縄張りかも知れない。辺りがやけに綺麗に拓けてる……しかも、かなり最近の出来事みたいだ。」

「動物たちの血の匂いと猛獣たちの苦悶の呻き声が聞こえるね……食べないのに、殺すってことは……ここにいる動物たちは敵にすら思われない玩具くらいの感覚で……」


 奏楽、瑠璃、麻生田おうだ、毛利、相木、谷和原やわらの遊神グループは勿論無事に上陸していた。そして奇妙に拓け、雑巾を絞るようにして死んでいる動物たちの亡骸を見てそれをやった未知の相手に対して恐怖を覚えていた。


 未知の相手は実は既知の相手で端的に言うなら相川なのだが。


「……開けた道は奥に続いてるな……ココを歩くのは楽そうだが……」

「これ、その猛獣の通り道なんでしょ……? これを辿ったら猛獣がいるかもしれないし危険だよ。」

「だな。別のルートを探ろう。それからこのルートは危険すぎるから見つけたら近付かないようにして、それから……グループのことなんだが。」

「……全員連れて行ったら逆に足手まといだと思うぞ。ここは俺たちだけで行った方が良いんじゃないか? 少なくとも俺はそう思う。」


 瑠璃が何となく相川がやった気がする……と悩んでいる間に瑠璃のグループはこれからの行動方針を勝手に決めていた。


「じゃあ、遊神門下生で小規模な集落を幾つか樹上に作って住むか。」

「だな。まずは安全な場所を探さないと……」


 相川に遅れること30分。瑠璃たちも島の上で行動を開始した。




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