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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校低学年編
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無人島サバイブ

 海辺に着いた相川は瑠璃をその辺に置いて折り畳み式マルチスコップを手に取り巨大な穴を掘りつつその土を波打ち際に持って行き、海の中に道を作ると言う作業を始めていた。


 その光景を見ていた瑠璃は自分を産める墓穴なのではないかと戦々恐々としつつも相川に確認し、どうせわからないだろうからと放置され現在は相川に借りた軍用折り畳みスコップを片手に不安を払拭するかのようにその手伝いをしている。


「ふむ……そろそろ砂だけだと形を成さないな。岩を砕いて砂と一緒に積み立てるか……」

「ねぇ……ホントに何してるのか教えてくれないの……? 怖いよ……」


 瑠璃の不安気に潤む瞳を至近距離で魅せられ、相川は少し思案すると口を開いた。


「……まぁ、お前には分からないだろうけど今作ってる道の方角に扉がある島があるんだよ。そこに大規模な魔素溜りがあるからそれをなるべく多く引き摺り出せるようにね……」

「そうなの! じゃあボクの為なんだね。ボクもっと頑張るよ!」


 良く分からないが自分の為ということで意気込みを見せて頑張り始める瑠璃に相川は魔力の影響を受けて魅了の力を僅かに取り込んだなと表面には出さずに驚きつつちょっとした種を埋めただけでこれだけの成果を見せる瑠璃を見送りつつ呟く。


「……ん~まぁというより……まぁ黙っておくか……」


 歯切れの悪い相川はマルチスコップを振るい、海の道を形成する続きを行う。その途中で一度止まって瑠璃に告げた。


「昼飯の調達しないとな……そろそろ一回休憩がてら貝と魚を取るか……」

「はーい!」

「……あ、言い忘れてたが……治療は大体終わった。少し体内メカニズムを変えさせてもらったけどこの世界で生きる分には問題ない。」

「え? もう大丈夫なの?」


 相川の唐突な言葉に瑠璃は驚いて大きな目を真ん丸にする。それに対して相川は至近距離まで移動して再び氣を抜いてみるように告げた。


 瑠璃は守ってくれるならと今度は最初から倒れる前提で抱き寄せられた状態で気を抜いて自力で立てることを確認し、安堵の息を漏らす。


「おぉ~……何だ、大したことないびょーきだったの?」

「……まぁ治療すれば大体治るな。この世界のやり方でやったら後遺症が残る確率も10%から20%程度で頭おかしい組の氣を扱う能力者なら2週間以内に治療を受ければ全部問題ない。」

「こーいしょー……知ってる。治らないってことだよね……?」

「治ったからもういいけどね。さっさと魚捕まえるぞ。」


 心配げにしている瑠璃にはよく分からなかったが、相川に説明する気がないのが見て取れたのでそれ以上追及することなく二人で採取を始める。


 もう話題は病気から離れて食べ物に完全に移っていた。


「……お、カメノテだ。それとヨロイイソギンチャク……瑠璃ってイソギンチャク食える?」

「食べたことない……美味しーの?」

「カメノテは何か蟹の肩肉みたいな感じだな……イソギンチャクは……なんつーか、調理法に因るが生だとナマコの親戚みたいな食感……煮たらツブ貝みたいなノリ……かな?」

「ナマコもツブ貝も食べたことない……蟹は好き!」

「そうか。」


 相川は頷くとマルチスコップを分解してアイスピックを出し、採取対象の貝類やその他が付着している岩を砕いて採取する。


「……まぁこいつらの調理は俺がするか。内臓とか残ったままだと不味いし。」

「仁くんの料理好きー!」

「味噌と醤油と砂糖と味醂と塩くらいしか持って来てないんだけどな……」


 結構持って来ているがどこに持っているのだろうという瑠璃の疑問は魔術が便利という言葉で片付けておいてその後もフジツボや小型の貝を採取してふと視線はフナムシに移る。


「……俺は虫食べたくないんだけど瑠璃は食べる?」

「えー……やだ。何で?」

「……山籠もりが普通なら虫食もやってるのかというイメージだ。フナムシはシャコみたいな味がするらしいぞ。」

「瑠璃、虫さんあんまり好きじゃない……」


 虫は食べないことになった。続いて魚や比較的動きのあり、捕獲が難しい生物の取り物が始まる。尤も二人にとっては難易度などあってないようなものだが。


「よっと、これで8匹か……こんなもんか?」

「そうだね~……お腹いっぱいになりそう。」

「別にいいだろ。」


 中型以上の魚ばかりを狙って獲った二人の前には現在、15匹の魚が転がっている。この辺の魚はスレていないらしく比較的捕獲しやすかった。


「むぅ……瑠璃もっと奥行ってくる。」

「これ以上は要らないだろ?」

「でも、ボクの方が獲った数……」

「うん。俺の勝ち。」

「う~……」


 大きさも数も負けているので瑠璃は深瀬でもっと大きな魚を得たいと思うが、相川の言葉に上半身を覆う服に掛けた手を止める。


「それはさておき、調理に入るか。瑠璃は火を起こして? はい、マグネシアロッド。」

「なぁに? これ……」

「木に擦りつけたら火種が出来る棒。まぁやってみるといい。」


 マルチスコップの中から棒を差し出した相川は瑠璃に少し離れた所にあった軽い流木をついでに手渡すと同じくマルチスコップのフィッシュナイフで魚をさばき始める。


「凄い凄ーい! 見て見て! 燃えたよ!」

「……まぁ、凄いね。お疲れ様。」


 燃やすために渡した物だから当然だと思いつつも一応顔を上げ、喜んでいる瑠璃に話を合わせて作業に戻る相川。しかし、瑠璃はいたく感動したらしく燃えていない流木の部分にこすり付けて火種を増やし始めた。


「おぉ~! 仁くんこれ欲しい! ちょうだい!」

「……自分で買いなさい。それはスコップの一部なんだからなくなったらスコップが不完全になる。」

「どこに売ってあるの?」

「通販とか。後、火遊びはほどほどにしろ。もうそれは返しなさい。」


 何か放火魔になりそうな瑠璃からマグネシアロッドを返してもらうと瑠璃には海の道を作る方に体よく厄介払いして相川は魚を切り身にしたり内臓だけを取ったり、貝類を茹でたり煮たりして下拵えを終えておく。


「ふむ……まぁ下拵えも済んだから後はどうやっても不味くはならないだろ……一応俺の分だけ自分で作ることにしておくが……」

「仁くんーそろそろ時間だよ~?」

「あぁ、こっちも終わる。」


 そろそろ奏楽たちと合流する時間なので別れた場所に戻ることにした二人。相川が荷物を持ち瑠璃がその後を続くスタイルで移動していると何度か同級生に出遭い、食料を強奪されかかって戦闘に発展するが全勝した挙句に相手のモノまで奪って目的地にたどり着くことに成功する。


「……大漁だな。」

「そっちこそ……兎でも狩ってくるのかと思えばイノシシ……」

「1人1尾くらいかと思ってたが魚も多いし何か鍋まで準備されてる……しかも山菜とかまで……海に行ったんだよな……?」

「これは戦利品だ。」

「あぁ、そうか……」


 共に微妙に獲り過ぎた気分になりつつ、別に悪いことじゃないと割り切り香草をイノシシと野鳥に詰めたり山菜を貝類の旨味たっぷりな味噌汁の中に入れて豪勢な食事を楽しむことになった。





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