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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校低学年編
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休み明け

 長期休暇は相川は書類や仕事に追われ、クロエは2年生になってからの特別カリキュラムでキャンプに行くことになりそのまま終了した。どうでもいいが、結局海には行っていない。


 そして休み明け、未だどこかに行ったままのクロエが隣にいないお蔭で羽を伸ばすことが出来ている相川は中期履修届を終えて家で薬草と毒草の世話をしていた。


 日が高く、相川の体を苛む中。相川は出来のいい毒草を摘んで洗い、食べながら氣で無理矢理その毒性を食い潰しつつ汗をぬぐう。


「……茹だるように暑い。昼前とはいえ、昼近くにやるもんじゃねぇなぁ……」


 ぼやきつつ家に戻ってシャワーで汗を流し、クーラーの効いた部屋に戻る。そこで相川は夏休み中に仕掛けておいたモニターが付いていることに気付いた。


「……お? 誰もいないけど何だろ……これは……氏神神道流さん家の奴かね……っとぉ?」


 学生証にあるGPSが学外に出た時に反応するように設定してある映像が付いており、何があったのか再生して問題さえあればそれを口実にすぐさま介入しようと考える相川。しかし、その顔は狂気の笑顔に染まり、モニターなどガン無視して立ちあがる。


「……これは美味しそうな、魔力……あるじゃねぇか、この世にも……最高じゃねぇかよぉ……っ!」


 次の瞬間、相川はこの場所から消えていた。残されたモニターに人が映った時、そこにいたのは新藤姉妹という瑠璃の友人。そしてその二人に連れられている瑠璃の姿だった。










 相川が魔力、魔素を感知して飛ぶ前。瑠璃は新藤姉妹に誘われて彼女たちの自宅へと向かっていた。その発端は瑠璃と同い年で同じクラスに所属している新藤妹……亜美が妙に元気がなかったことから始まる。

 彼女を励ますために瑠璃は今、新藤姉妹の故郷に居て彼女たちの田舎の友達と一緒に亜美を元気づけようといているのだ。


「ね~大丈夫?」

「うん……大丈夫。」

「瑠璃ちゃんは心配しなくていいよ? 亜美も、ちょっと最近は色々あって疲れてるけど瑠璃ちゃんと一緒にお家で遊べばすぐに元気になるからね……?」


 新藤姉、美香が笑顔でそう告げると亜美は微妙に力無く頷いた。そしてそろそろ建造物が見えて来る頃になると瑠璃が亜美を励ます。


「階段きつかったね~? 亜美ちゃん大丈夫? もうすぐみたいだよ!」

「……お姉ちゃん、やっぱり……」

「亜美? 二人で皆と遊ぶの? それじゃみんなが楽しめないじゃない……大変になるわよ?」


 瑠璃はここにも瑠璃と一緒に遊んでくれる人たちがたくさんいると聞いて此処まで来ている。しかし、亜美が微妙に体調不良と言うことで結構時間がかかっているのだ。瑠璃は心配そうに何度も亜美の方を振り返る。


「……ごめんね。」

「え?」


 瑠璃が疑問の声を上げたその直後、彼女の意識は暗転した。





「うぅ……? 何か、かゆ……っ!?」


 そして瑠璃が気付けば四肢を拘束されて布地を限界まで切り詰められた巫女装束を着せられ、動物の呻き声のようなモノが響く中で恥部に対して変な薬を塗られている状態だった。


「何!?」

「ごめんね……? 氏神様を呼ぶために必要なことなの……」

「亜美ちゃん……? 何でボク動けなくされてるの……? 後むずむずするから変なのを付けないで!」


 瑠璃が自分の近くでその薬を塗っていた張本人に怒ると動物の呻き声が途絶え、瑠璃の知る人物が一糸まとわずにこちらにやってきた。


「お目覚め? 瑠璃ちゃん、今日は氏神流へようこそ! 瑠璃ちゃんにはまだ10年ほど早いんだけど……誰かに万一先を越されたら瑠璃ちゃんの幸せが実現できないから先取りしました☆」

「何? 美香さん、変なのが体についてるよ? それのせいで変なこと言ってるの? ボク、動けないのヤダよぉ!」


 瑠璃は首を起こして声の主を見る。彼女は未だ幼さを残す体に白濁した粘液を付けており、それを指で掬うと口に運んだ。


「これ? お薬だよ~……そろそろ、金の器に皆さんのモノが本尊に塗り固められて……あぁ、これが神の光なんだぁ……」

「何? 何? 何なの?」


 一切理解が及ばない瑠璃に誰も何も説明をせずに光に対して独特なポーズ、彼女たちが最敬礼と呼ぶそれを取ってから跪く。光が終息した際、そこにいたのは薄汚れた白の道衣を纏った年老いた老人だった。


『大儀である。して、此度の贄は……その子じゃな?』

「はい、大師様。どうぞお納めください。」

『承った。』


 突如、道衣を脱ぎ去りその枯れた身からは想像できない程大きな一物を衆目の前に晒す老人。瑠璃は一直線にこちらに向かってくるその存在に対して恐怖を覚えた。


「やっ! ボクもう帰る!」

「瑠璃ちゃん……これは皆の為だから。それに瑠璃ちゃんの為なんだよ?」

「知らない! ボク、今嫌!」

『安心せい……すぐに、虜になる……』


 気付けばすぐ近くにいた。何をされるか分からないが異様な雰囲気に委縮した瑠璃は目を閉じて叫ぶ。


「助けて! ヤダ! 怖い! 誰か来て! ママー! 仁くんー! パパー!」

『誰も来れはせん……可憐な蕾を……「おっ、あったあった……」』


 突如響く幼い声。瑠璃は思わず目を見開いて先程とは一転した希望の声を上げる。


「本当に来てくれた! 仁くん助けて!」

「無粋な……」


 侵入者を睨みつける老人。しかし、彼は乱入者の姿を見て細めていた目を見開くことになる。


「あん? 何か面白いことでもありましたかね? 俺の顔? うっせぇ馬鹿野郎。生まれつきだ。」


 自分で言って哄笑している少年。彼は酷い血の香りがしていた。そして何よりも謎の球体が彼にぴったりと付随しており、それに人の上半身が呑み込まれて行っている。視線を辿った相川は納得したように頷いた。


「あぁこれ。正当防衛ですよ正当防衛。ちょいと道をお尋ねしただけなのに襲い掛かって来た人非人ですからまぁしょうがない。それで……カルト集団の皆様方にお尋ねです。」

「それより助けてよぉ!」

「……今いい所なのに……ん? 瑠璃……いたんだ。可哀想。」


 何やら知り合いがいたので取り敢えずこの場の誰の目にも映らない速度で飛び去り、瑠璃の縛めを解く相川。すると彼女はすぐに飛びついて薬を塗られていた部分を相川の口に押し当てた。


「!? 何するんだこのバカ!」

「お薬が、変なの塗られたの! 仁くん舐めたらわかるんだよね!? なめなめして!」

「ふざけんなボケが! 誰がそんな真似するか腐れ!」


 以前、木材にのみ興奮するようになった男がロリコンだった時、瑠璃をロープで縛った時の一件を覚えていた瑠璃は相川に飛びつき様に解毒を頼むが相川は気持ち悪い目にあったので蹴り飛ばしてついでに解毒の為の強力な薬を散布して瑠璃をノックダウンしておく。


 そして今度こそ老人を見て告げた。


「どこで、この力を手に入れたのか……教えて頂けませんかね?」

「青二才が……世の中の道理も知らずにヒーロー気取りでここに来たこと。後悔するがいい!」


 瞬間、相川の背後に居た球体が爆発するかのように広がった。そして、相川は呟く。


「絶望の喝采を奏でようか……」


 闇が、この場の空間を仕切る物を伝い、形を変えていく。


「踊れ」


 その一言で、部屋にいた全員が四肢を拘束、あるいは貫かれ、制圧された。




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