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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校低学年編
51/254

春は陽気がいいから

あ、そう言えばあらすじが粗筋の癖に長かったので変えました。

 5月も中旬に差し掛かる頃、瑠璃の通う新校舎内は変態が徘徊していた。


「はぁっ、はぁっ……何でみんな……」


 朝登校した時は何ともなかったのだが、それが昼休みの時間に差し掛かる頃には周囲の状況は一変していた。瑠璃を標的とし、高学年の子たちが息荒く襲い掛かって来たのだ。しかも、それは普通に襲い掛かるわけではない。下半身を露出させて性的に迫り来ている。


「うぅ……どうしよ……流石にみんなを倒すのはキツイよぉ……」


 無理とは言わず、キツイと宣う瑠璃の発言はさておき、現在の状況は瑠璃の味方になってくれた低学年の子たちは為す術もなく倒され、幸運にも興味がないとばかりにうち捨てられて瑠璃のみをターゲットにしてCクラス以上の全員が血走った目で瑠璃を探している。


 この状態を何とか出来そうなのは瑠璃には相川くらいしか思いつかなかった。しかし、先日の相川の不機嫌そうな顔が思い浮かび、瑠璃は首を振る。


(何でも頼っちゃ、ダメ。ボクが自分で解決していーこいーこしてもらう……)


 そう心に決め直した瑠璃は隠れるのを止めて他の頼れる人たち……つまり、教員たちの下へと急いで移動を開始した。次の瞬間、大量の変態達が瑠璃を目撃して大声を上げる。


「居たぞ!」

「囲め! 囲め!」

「俺が先だぁっ! 全員死ねぇ!」


 瑠璃は恐ろしい光景をなるべく見ないようにして職員室へと駆けこむ。


 そして次の瞬間、後悔した。


「しぇ、せんせ……」

「いい子だから、大人しくしてくれるかなるぅりちゃん……」


 現れたのは鍛え上げられた全身を惜しげもなく晒している大の大人5人。その肉壁に囲まれて瑠璃はすぐさま回れ右をしようとしてその華奢な肩に瑠璃の顔程もある分厚い掌が乗せられた。


「遊神ちゃんは、いい子だから……先生たちの言うこと……聞けたばぁっ!」


 瑠璃が抵抗しようと振り向く寸前、肩の重みが消失し、下卑た声が苦悶に歪みその場に重量感のある物が崩れる音がした。それに続くのは愉悦を隠しきれない、瑠璃の大好きな声だ。


「はーい。もう十分撮影終わりましたんで倒れていてくださーい。」

「仁くん! ありがとー!」

「おぉ、気にすんな。さぁて、そんなことより権正ごんしょう先生よぉ……どこにいやがるかな? 今日こそ弱み握らせてもらおうじゃないか……教員同士で乱交パーティ開いてやがるんだよなぁ?」


 瑠璃が抱き着く中で相川は倒した教員たちの口に茶褐色の丸薬を含ませてからご機嫌で職員室内をうろつき始める。目的は、先日も特別訓練と言う名の補習を繰り出してきた権正という男性教諭の弱みを握ることだ。


 権正ごんしょうとは相川がこの学園で一番苦手な30代前半の怜悧な雰囲気を漂わせる美形で、無駄に強く、入試の際に相川と戦ってからはずっと無駄に目をかけてくる迷惑な存在だ。


 そんな嬉々としている相川に瑠璃は現在、どうなっているのか、またどうしたらいいのか尋ねる。相川は権正を探しながら現状について適当に喋った。


「あー、春だからね。陽気がいいから仕方ない。草木萌えいずる時期だもん。変な虫と一緒に変質者の1人や2人、300人は出るさ。」

「そーなの? だから瑠璃もいっつも変態さんに……」


 無垢に信じられた上、結構悲しいことを口走る瑠璃を見て相川は微妙に良心と思われる何かが呵責してきた。仕方ないので真実を告げる。


「……あーこの前さぁ、セクハラ屑教師を奴隷化しただろ? そいつが俺の秘薬盗んでばら撒いてるみたいなんだよね。髑髏印にバツマーク付けてたから毒薬と思ってそれをばら撒くことで俺に罪を被せようとしたんだろうね……」

「宇城先生が?」

「そうそう、そんな感じのヤツ。俺の部屋の監視カメラに血塗れで映ってた。多分暴走状態でリミッター外して瑠璃に襲い掛かりに来ると思う。」


 そんな会話をしながら相川は目を皿にして権正を探す。宇城にトラップ網を潜り抜けられたことには非常に不満だが、この機を利用する気は満々だった。そんな相川に瑠璃は気になっていたことを尋ねる。


「クロエちゃんは……?」

「あいつ? あいつ人気高いから狭い一方通行の場所に籠城させて襲われるギリギリまで監視カメラで撮影しては強姦魔をボコって外に捨ててる。」

「……何で?」

「出来る限り弱みを握っておきたいから。」


 平然と鬼のようなことを口にする相川。因みにクロエには別薬を与えており、安全性を確認してからそのような役目を負ってもらっている。


「! 相川と遊神か! お前らは無事のようだな……」

「権正先生!」

「チッ……」


 そんな話をしながら権正を探していると向こうから平常時と変わらない権正が現れてこちらの確認をすると小走りで駆け寄ってくる。相川はそれを見て小さく舌打ちして顔を逸らした。


「……相川、お前今舌打ちしただろ?」

「いや、口を開けようとしたらそんな音が出ただけですよ。それで、先生は正常なんですか?」

「あぁ……何かよく分からないが、思考に靄がかかりそれとほぼ同時に周囲の様子がおかしくなり始めたが気合でな……」

「……気合で。」


 相川は非常に落胆した。もう帰って不貞寝したい気分だ。それを見咎めた権正から睨まれる。


「……この騒動はお前の仕業か? 相川。」

「いや、宇城って先生が俺の作った進入禁止と銘打ってトラップを張り巡らせた薬品保管庫に侵入して薬を盗んでばら撒いたのが原因ですね。証拠品として映像データもありますが?」

「……宇城さんか。」


 沈痛な面持ちながらもどこかやはり、という心当たりのありそうな権正の顔。これ以上ここに居ても特に収穫はなさそうなので相川は懐から鎮静薬を探して取り出した。


「これ、現在の状態を鎮静化できる薬です。口の中に放り込んでおいてください。別に飲み込ませなくてもいいです。じゃ、もう帰るんで……」

「待て、手伝わんか。」


 もうやる気のない相川は死んだような目を権正に向けて嫌そうな顔をしつつ一言告げる。


「……アレです。効率のいい独自のやり方を認めてくれるんならいいですよ。」

「非常事態だ。この際構わん。寧ろ効率がいいなら大歓迎だ。」


 その言葉を引き摺り出した相川は邪悪に笑って瑠璃の手を引く。


「えっ、あれ? ボクも……?」

「瑠璃が俺のやり方には必要だからね~くすくす……」

「ボクが、仁くんに必要……? や、やる! ボク頑張る!」


 やる気を見せる瑠璃。相川は権正を嗤いながら瑠璃を連れて移動を開始した。やることはクロエと同じ犯罪すれすれまで引き寄せてから弱みを確保した後気絶させる釣り行為だ。


 権正に認められたやり方ということで大手を振ってやることが出来る相川はある程度メンタルが復活した。










 そして、その日の放課後。


 元々あった予定の授業は全て潰れ、補講になったが相川はある程度満足いく出来を手に入れご満悦だった。主犯である宇城は権正の手によって掴まりこの学校から放逐されている。


「いや~……これで他クラスの高学年のゴリラみたいな人たちにデカい顔されずに済むわ~」

「アイカワ! 私、役立つ!」


 大量の弱みデータを手に入れた祝賀会を開き、功労者たるクロエと瑠璃を呼んで夕食をパーティにした相川。そんな相川にクロエが抱き着く。その次の瞬間、クロエは宙に投げ飛ばされていた。


「は……?」


 相川が思わず衝突音のした方を見るとその逆の方向、相川のすぐ近くから可愛らしいがいつもより低めの声の瑠璃が少しだけ籠る声でクロエを睨みながら呟く。


「……何でボクの仁くんに勝手に触ってるの? 活神拳だけど……殺しちゃうよ?」

「え? 何で瑠璃そんなに怒って……」


 暗い雰囲気を漂わせ始めた瑠璃に相川が困惑していると宙返りして天井を蹴ったクロエが瑠璃を睨みつける。


『誰の相川って? マッシュドポテトみたいに捻り潰すよ? ボーイフレンドの所に帰りなさい!』

「っと! お前ら喧嘩するのは別にいいが食事の前でやるな「「はい!」」……何かおかしいな。」


 超速で反応した二人に相川は首を傾げてそう言えばと手を打ち、鎮静薬を二人に飲ませた。その次の瞬間二人はそのまま倒れて空の皿に頭から突っ込む。一切傷付いた様子のない二人の頭と割れた白磁器で結構いい値段のする皿を見て相川は呟いた。


「……こいつら、二次性徴前だから効いてないのかと思ってたんだが微妙に効いてたみたいだな……まぁそれはそれとして……これ全部俺が食うのか……別に俺の体の構造的に満腹ってことにはならないからいいけどこれだと一品一品を作り過ぎたなぁ……飽きる……」


 この日は最後に少しだけやられたが、概ねいい日だと相川は二人に一応ブランケットだけ掛けてトレーニングを行って血塗れになった後、治療を行いシャワーを浴びて最後に氣を全身に回して自然治癒力を活性化させると麻酔が効いて来て心地よく就寝することができた。




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