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強者目指して一直線  作者: 枯木人
幼児期編
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成長

 相川たちは成長し、卒園時期に差し掛かっていた。奏楽や瑠璃は可愛らしい幼児から恐ろしく、神々しさを感じさせるまでに美形に育ち、相川はそれなりに格好よく育った。

 相川に関しては内面がマフィアのボスみたいな感じになって時折闇の化生のような雰囲気を出したりするようになったが、まぁ外見は死んだ目をした若干鍛えられている普通のガキに育ったのでよしとする。


 しかし、普通に成長したといっても引っ越し騒動があった年中から、これまで色々あった。


 しばらくして武術を再開した遊神の門派生である麻生田や毛利、谷和原などの息子たち、ついでに相木の娘までが瑠璃に惚れたせいで更に一悶着があったり。


 瑠璃が何かにつけて相川に絡んでくるので相川が園を変えようとして瑠璃が号泣し、引き離そうとすると更に密着度を上げて痛いと言っても言うことを聞かない上に竜虎幼稚園から帰らせないと光の失せた目で絵本を何度も聞かせ続ける監禁事件を起こして相川が退園を諦めたり。


 相川がいなくならないかどうかが不安で瑠璃の夜泣きが始まって、瑠璃が日に日にやつれ始めて困り果てた遊神家から寝かしつけから本気寝まで相川に任されて毎晩遊神が相川の家に来ることで相川の住んでいる地帯の治安がその辺の土地よりも遥かによくなったり。


 そよぎが蕎麦屋の青年と付き合い始めたり。


 年長に上がって、男女に差が生まれ始めて瑠璃と遊ぶのが何となく気恥ずかしくなった遊神流の男たちが瑠璃に微妙に反抗したり全て気にしない相川のことを変と言って仲間外れにしたり。


 別に遊びたいとも思ってないのに相川とは遊ばない宣言を受けて別にいいけど敗者感を覚えるのが嫌だったのでそのネタで散々からかってやったり。


 相川が立ち上げた会社の一部。身寄りのない子ども向けの事業所の活動が認められ、法人が正式に相川の単独後見人になることに成功して相川が完全に自由になったり。


 その他にも紆余曲折あったが、皆無事に成長した。


 そして今、相川たちは武術小学校への入学試験の説明会を受けている。


(……ふぁ……落ちよ……)


 真面目にみんなが受けている中で相川はそう思っていた。理由は簡単。全寮制の小学校で毎日武術漬けになるらしいのだ。


 幾ら給付型の奨学金が貰えるからと言っても真っ平御免だった。


(ある程度収入に見込みは付いてるしなぁ……今更金がどうこうって問題はあんまりないし……就職先もすでに確定してるから学歴もそんなに要らない……)


 そんな感じで相川は超適当に説明を受けている。地元にある公立小学校に入った方が楽そうなので適当にやって落ちてそちらに行く算段を付けて真面目に話を聞いている遊神流門下生たちを眺める。


 瑠璃、奏楽は座学も武術も余裕ラインだ。


 最近武術を再開した麻生田 武志、毛利 彰、相木 名奈、谷和原 刀祢はギリギリ。


 相川は氣を使えば余裕ラインで、普通にやれば普通のクラスに受かるくらいのレベルとなっている。


 視線に気付いた瑠璃がこちらを見て微笑みかけて来て周囲が撃ち抜かれたりする中で相川は欠伸を殺しつつその時を待つ。





 そして、試験当日が来た。入学試験は筆記・集団戦・サバイバル・個人戦の4つだ。


 筆記では一般教養、技能戦闘に関する項目が求められる。

 集団戦は教員に対して3人で戦闘をするものだ。

 サバイバルは集団同士で生き残りをかけて争うもの。

 個人戦は教員と一対一を行う。


 そんな中で瑠璃は相川のことを見て心配していた。


(仁くん、調子悪いのかなぁ……?)


 どうもやる気と言うか全ての力を家に置いて来たかのように気力が見当たらない。筆記具を持って来ず、テスト中もボケっとして周囲の雰囲気を見て仕方なく紙に何かを書いているようだ。


 因みに、瑠璃はもう終わった。


(大丈夫かなぁ……)


 そんな心配をよそに、相川は意外と楽しんでいた。


(えーと、お母さんが泣いた理由は何でしょうか? 確かこの試験監督の人の名前は出島さんかぁ……愛する家族を全て出島に奪われ、生き残った幼い息子だけを心の拠り所として生きていたのにもかかわらず、その息子が母の日に描いた似顔絵が出島そっくりで命だけでは飽き足らず立場すらをも奪われたと思ったから……というより、最悪これが本当に自分の似顔絵だったとすれば絶望せざるを得ない顔だったから的な答えで行こう。)


 一枚絵でおかあさんいつもありがとうという絵を見て泣いている女性の絵の説明に関して相川は幼卒とは思えない思考回路で最後にブラックジョークまで添えて提出。


 他にも人物名を答えよではペンネームではなく本名を答え、心情理解の問題では模範解答だと思う物を書いた上で「かもしれない」と付与し、注釈をつけてそれを正確に理解できるのは本人以外にありえないとマジレスし、楷書で書けと言われなかった漢字は繁体字で書くなど暴虐を繰り広げた。


 そして裏面まで遊びつくしてすっきりした相川を盗み見て瑠璃も満足いく答案が出来たのだろうと安心し、次の試験に移る。今度の試験は教員との集団戦である。


 相川は連携を崩さない程度に手を抜きまくった。頑張れば倒せそうだったが煽りと応援と挑発、そして補助に野次などを繰り返すだけでそこまで戦闘せずに引き分けに終える。


 続くサバイバルでは3日間もやってらんねーとパスして別試験を受け、破壊活動に勤しんだ。


 そして最後、教員とのバトルでは痛いの嫌だと言いながら受けに回り、全ての攻撃を捌きつつ教員が軽くキレて真面目にやれと軽く本気を出されて攻撃を最低限ながら、かなり喰らいつつこちらは本気で防御する羽目になって軽く涙目になりかけ、冷や汗を掻かされたりもしながら全ての試験を終える。


(ま、落ちたでしょ。)


 相川は余裕綽々だった。寧ろこれで受かったら他の受験生に失礼だ。そこまで考えながら試験後、唯一教員を倒した瑠璃が不安気に迎えに来る中で合格発表を見に行くことになる。


「あった! あったよ仁くん!」

「……何で?」


 結果、合格していた。合格証書には戦闘におけるそれなりの評価と態度に関するマイナス面の注意事項が事後報告の欄の隅々まできっちり延々と述べられており、最低クラスでの編入が決定してしまったのだ。


「瑠璃は主席か……」

「……クラス離れ離れなの……? 瑠璃ちょっと先生に言ってくる!」

「いや、ダメ。無理だろ。」


 というより、瑠璃の担任が出島先生の時点で行ったら4割ぐらいの確率で試合中の事故と言う名の殺害が行われる。

 そんなことは伏せて適当な理由をでっちあげて瑠璃を説得する相川。そんな相川は説得しながら頭の中で別のことを考えていた。


(まぁ、最悪場所は選ばなくても何とかなるか……問題はクラスごとに中てられる寮だよなぁ……実力主義で単位制の学校だからクラスの年齢とか関係ないし怠いよなぁ……上下関係厳しかったら少~し暴れて実力の彼我だけ見せつけて出来れば退学させられるか……)


 なんて嫌な学生なんだと思いつつ相川は自己嫌悪を嗤い潰してこの日は家に帰る。瑠璃たちは合格祝いのパーティを行ったが、相川にそんなものはない。粛々と引っ越しの準備をして卒園式を待つだけだ。


(……まぁ、小学生の間だけだし……その間は女子の方が体もデカいし、特に俺と同い年レベルの間なら女子の方が身体能力は高い。最底辺のクラスは野郎ばっかりで適当にやれるだろ……)


 超適当に楽観思考をして相川は卒園式に出る。全員が温かな家庭や幼稚園での友達と過ごす中で友人もいない相川は一人直帰する。


「くぁ……さて、何するかねぇ……そろそろ、この世界から出たい……魔法も使えない世界とか気持ち悪いなぁ……」


 圧倒的な疎外感とある程度経済的なゆとりが生まれたことから芽生えるより良い場所を目指して移動したいという感情。


「……何したらいいんだろうな……全然わかんねぇ……」


 金はある。力はそこそこ形成されてきた。時間は生み出そうと思えば生み出せる。何をするか。


「……まぁ、やっぱり知識を得ていくしかないよなぁ……それと、人外レベルの人たちが見てる風景も知っておくべきか……何か俺の知ってる人知の範囲越してるしもしかしたら出て行ける可能性もある……」


 賭けになるが、この世界を定めている法氣の想定範囲外の力を出すことが出来ればこの世界から出ることはできるかもしれない。ただ、何の根拠もない。


「……はぁ……嫌だねぇ……」


 相川は溜息をついて自分が建てた予定通りの行動を起こすことしかできなかった。




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