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強者目指して一直線  作者: 枯木人
終章・高校生編
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仲良く喧嘩しな

(こいつ、遊ぶっていうのは本気のつもりなのか……! 敵意も害意もないが!)


「うふふ、あはは~! 仁くんだ! 仁くんだ!」


 交差することで入り口から離れてしまった相川は瑠璃の読めない猛攻の前に奥地へと追いやられる始末となっていた。あまり望ましくない展開に相川は苦虫を噛み潰したような気分になりつつ解決の糸口を探るために瑠璃との対話を試みる。


「瑠璃、ちょっといいか?」

「なぁに? 【遊神流・迅風】!」


 話には応じるが、攻撃をやめることはしない瑠璃。相川は苦々し気に落ち着いて会話もできないと嘆くことになる。


「? 【征光流・悪骨打】落ち着いて会話がしたいの?」

「そうだなっ!」

「はーいっ!」


 瞬間、瑠璃は輝く笑顔でその場に座った。回し受けから反撃の一撃を瑠璃の腹部に入れようとしていた相川はその拳を瑠璃の側頭部にそのまま打ちこんでしまう。しかし、瑠璃はその場から微動だにしなかった。


「いたた……何のお話しするの?」

「……いたたで済まされるのか……いや、まぁそれは置いといて、瑠璃はどうしたんだ?」


 驚異の耐久力に驚きながら相川が瑠璃に問いかけると瑠璃は要点を得なさそうに小首を傾げたが一先ず相川の問いかけに応じる。


「遊神 はじめが相川を瀕死の重傷に追い込み、止めようとした瑠璃を虐めたから避難してたんだよ? そしたら、仁くんが助かってきてくれたから嬉しくて武を以て応じるの。」

「……なるほど。厄介なことになってるな……洗脳か。」


 言葉の言い回しが変なのと記憶が曖昧になっている点、そして瑠璃の身体から香る脳を蕩かすような彼女の体臭とは違う薬物の香りで相川は勝手に察した。


「でね、仁がここから出て行かないようにするためには手足を折らないと……」

「は?」

「大丈夫だよ? ちゃんと介護するし、治ったらまた折るから……でも、物を持てなかったり歩けないのは可哀想だから細かい動作が出来ないのと、走れないくらいにするから安心してね……」


 朗らかに笑っていた状態から一転して目からハイライトを消す瑠璃。今度は明確な害意があったので難なく避けることが出来たが、今度の交渉は難しそうだ。


「ふむ、面倒だから俺がお前の手足を圧し折って遊神邸に放り込んでやろう。」

「駄目だよ、ボクの怪我は仁が治すんだから……」

「遠慮するなっ! 【疾風轟雷】!」


 害意があるのならば戦えると相川は狂乱の笑みと左拳を以て瑠璃に対峙する。瑠璃は立ち上がる時の勢いを利用しながらそれを蹴りで迎え撃った。


「【片引猿臂打ち】!」


 その瑠璃の蹴りに対して左拳を思い切り引き、逆手を思い切り伸ばすことで瑠璃の胸部に拳を入れることに成功する相川。しかし、伸ばしきった腕は瑠璃に取られることになる。


「【征光流・逆肘砕】!」

「【電指打】!」


 肘を砕きにかかる瑠璃に対し、接近することで伸ばしきっていた腕にゆとりを持たせ曲げる余地を生み出してそこから更に押し出すことで勢いを流して攻撃に転ずる相川。手を広げる勢いで瑠璃の整った顎先を狙うが、それは簡単に見切られ口の中に含まれる。


(チッ! 嚙み千切られ……)


 すぐに引き抜こうとする相川だが、舐られ、吸われた以外には特に何もされなかった。微妙に調子を狂わされるが相川は指先を拭って瑠璃を睨んだ。


「……手ぇ抜いてやがんのか?」

「手を抜いたのはそっちだよ。美味しかったのに……」

「微妙に言葉が通じてないらしいな……お前、何がしたいの?」

「監禁……ふふ、えへ……大丈夫、大丈夫……仁は何も考えなくていいよ。全部ボクがやるから。ご飯もちゃんとボクが嚙んで飲み込ませてあげるし、エッチも全部ボクが動く……勿論、寝る時も一緒……」


 嗤いながら襲い来る瑠璃に相川はあまり時間もかけてられないと溜息をついて本気を出すことに決めてドーピングを飲む。


「ふぅっ! さっさと決着つけるぞ!」

「じゃあ、降参して? 早く結婚しないと……籍は入れたかったけど……普通に生きてると人権とかの問題があるから、鬼籍に入ってもらわないとね……」

「誰が死ぬか!」

「【遊神流・鉤裏打】」


 鉤打ちから入り裏拳を入れる瑠璃。相川はその流れるような攻撃に対して初撃を避け、追撃に膝で迎撃することで応じる。そんな相川に対して瑠璃は更に踏み込み、鉄槌打を繰り出した。


「……⁉ ない!」

「外性器は収納してまーす。」

「嘘……脱がなきゃ!」

「⁉」


 金的のお返しに背足を瑠璃の側頭部に打ち込む相川。しかし、瑠璃にとってはそれどころではないらしく何故か自らの服を破り始めた。


「止めろ! 何やってんだお前!」

「起こさないと!」

「お前何なの⁉ 強敵感出しておきながら、実際に前に戦った時に比べて格段に強くなっておきながら、本当に何なの⁉」

「起きた!」

「それで何でわかるんだよ⁉ なんなのこの変態!」

「【征光流・転身左蹬脚】!」


 出てきたら問答無用なのだろうかと相川が思うより前に半身を繰り出して蹴りを入れてくる瑠璃。大事なところは見えそうで見えない状態だが相川はそれどころではないので蹴りの反動で反った上体を滑るように移動し、首に腕を引っ掛けて倒す。


「やん♪」


 素早く回り込んで絞めようとする相川と自分の間にその御御足おみあしを入れ、三角締めで反撃する瑠璃。その被服箇所はかなり少なく、相川の眼前はほぼ白に近いベージュ色だった。しかし、締められる前に相川はその強靭な首の力を以て頭突きを放つことで瑠璃の束縛を緩めることに成功。再び距離を取った。


「……赤ちゃん産めなくなったら仁のせいだからね……いや、仁が産めって言うなら何とか頑張るけど……」

「何を今更。」

「……仁の子ども早く産みたい。監禁しないと……手足折らないと……!」

「……そっちのモードでずっといてくれたらもっとマシな戦いができるのによぉ……」


 害意を纏ってまた衝突してくる瑠璃に対して今度は相川の方から仕掛ける。まずは中段前蹴り、避けたところで蹴り下げて転身しつつ上下の諸手突き。そこでダッキングされたので頭突きで……瑠璃がそれを見た瞬間に目を閉じて首の角度を変えた。


(痛っ! さっきから何なのこいつ!)


 避けられると判断されるも動いた相川に合わせてキスをしてくる瑠璃。相川はそこでふと考えた。


(【毒化】)


 自らの体液を日頃の瑠璃でも耐えられるようなレベルではなく、猛毒に変える相川。舌が痺れるほど強烈なそれを与えられると流石に引くだろうと予想した相川だが瑠璃は引かなかった。


(……? 効かないわけはないんだが……)


 今俺は何をやっているんだろうと思いながらしばし沈黙の時間が流れる。周囲では今こそ相川を殺すときと何やら色々やっているようだが、瑠璃を気遣いながら攻撃する武器において相川の装備を貫通できるほどの威力はないようだ。

 そんなことを考えていると不意に瑠璃の方から離れ、思わず銃撃を行っていた外道魔王の私兵たちが見惚れて攻撃を忘れるような微笑みを浮かべた。


「ごちしょう、しゃま……れし……」

「……しっかり効いてたな。」


 呂律も回らずにそのまま崩れ落ちる瑠璃を抱き留めながら最初からこうすればよかったのではないかと思いつつ相川は周囲の掃討を始めるのだった。




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