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強者目指して一直線  作者: 枯木人
終章・高校生編
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外道魔王との一戦

「なっ……」

「ひ、仁……?」


 外道魔王たちの下に現れたのは大きな翼で飛翔する化物。即ちグリフォンだった。しかし、その姿を見て驚愕するよりも彼らを震撼させたのはその鋭い嘴に咥えられているぼろ雑巾のようになった人間大の何かである。


「カカッ! これは儲けものじゃのぉっ!」

「ぁぐっ!」

「「瑠璃(さん)!」」


 そちらを見やった瞬間に外道魔王は最も相手として面倒な瑠璃に対して奇襲を仕掛け、気絶させる。彼にとってのお目当てである瑠璃を俵のように担いだ外道魔王は上機嫌でなおも抗戦をしようとする一行を睥睨して告げた。


「やめておけ。何故これほどまでに無残な状態でも分かったのか知らんが……これは正真正銘、相川の死体じゃわいのぉ。」


 グリフォンに吐き出すように命じて相川の無残になった体を地面に捨てさせる。しかし、その手には誰も乗らなかった。


「クカカ、もう1人くらいはこの手で潰せると思うたんじゃがのぉ。ま、嫌われ者じゃから誰も心配はしないか。……遊神の小娘の心を折るには使えそうじゃから持って行くとするとして……」


 グリフォンに命じてその鋭い爪で相川を掴ませる。その一瞬の目配りの間に一か八かで翔、奏楽、悠、リタの4人が突っ込んだ。


「青いのう……【魔闘氣発勁】!」


 すれ違い様に全員の水月に拳を叩き込む外道魔王。外道魔王の後ろにいたものは全員その場に崩れ落ちて身動きが取れなくなる。


「ぁ、がっ……」

「よしよし、これで榊どもに文句を言われんで済むのぉ……じゃが流石に全員をグリフォンに乗せるのは無理か……それにしても他の幻魔獣が来ぬ辺りこの小童、やはり侮れんかったわいの……」


 抵抗できない奏楽、悠、リタに止めの一撃で完全に気絶させて瑠璃を集めながら溜息をつく外道魔王。そのついでに翔のことも見たが薄く笑って首を振った。


「こやつは要らんの。しぶといだけで才能の欠片も見当たらん……じゃがまだ五月蠅く小娘のことを言っておるのは凄いのぉ……」


 あまりにもしつこくてうるさいので外道魔王は翔だけ手加減抜きの一撃を放ち、後には目もくれずにこの島から出る手配をするために携帯を取った。


『我じゃ。第2会場で目的は達成した。すぐに出る。……あぁ、適当な奴を持ってこい。それから祝杯の準備でもしておこうかの。榊の奴の出身地じゃと……二十四代が旨かったかの? それで……っ!』


 歴戦の兵だけが得る予知能力にも似た第六感。それに引き摺られて外道魔王が反応し、後ろを向いたその時にはそれは迫っており、彼の急所めがけて不可避の一撃を放っていた。


「ぐっ! き、貴様ぁっ……!」

「チッ! 【羅刃貫手らじんぬきて】!」

「続けて喰らうかっ!」


 続けざまに出されたもう一撃には何とか対処し、大きく距離を開ける外道魔王。その直後にそれまで無傷だったはずのグリフォンが地に落ちる。しかしそちらを見ている余裕はない。不可避の一撃は何とか急所を外させたものの深い傷を作っているからだ。

 通常であれば即座に反撃に出るところだが、今は相手の行動も読めないことも相まってすぐに戦闘に移ることはできない。そのため、外道魔王は憎々しい目でその不埒な相手を睨みつける。


「相川ぁ……っ!」

「仕留め損ねたか……まぁ距離を開けるなら開けるで撃つけど。」

「ぉわっ!」


 武人など全く関係ない相川は自社生産の対達人用の銃弾を外道魔王に浴びせる。それは通常の鉛玉などであれば傷一つつくことがないと銃弾など意に介さずに好機とばかりに突っ込んできた外道魔王の右肩を貫いた。


「おのれ、おのれぇっ!」

「……あれ一発幾らすると思ってんだよ。何で避けるの? 死ねよ。」

「下種がぁっ!」

「外道に言われたくない。」


 薄ら笑いを浮かべる相川に対し外道魔王は表面上、怒り狂っていた。しかし彼の目的は相川と争うことではなく、瑠璃たちの奪取だ。外道魔王は挑発に乗ったふりをして相川に襲い掛かる。


(……強っ! こんだけ重傷にしておきながらこれかよ!)


 外道魔王の暴風雨の如き攻撃に防戦一方になる相川。しかし、焦っているのは外道魔王の方だった。


「き、さまぁっ! 扉を潜ってもいないのに何故……!」


 相川に喋っていられる余地などない。だが笑みだけは浮かべて相手を怯ませておく。それにより外道魔王は相川の沈黙は余裕からくる恣意的なだんまりと見て後のことを考えてギアを一段下げた。


「魔が……貴様、そもそもなぜ生きて……!」

「おいおい、この大会で俺のこと見てたんだろ? じゃあ俺の名も知ってるはずだ。」

「【死喰らい(デスイーター)】……! 伊達ではないということか!」


 相手を混乱の坩堝に導くブラフ。しかし、あながち嘘でもないその言葉に外道魔王はまんまと騙されてここでの戦いは何の益も生み出さないと移動手段が来るまでの逃げに徹することにした。


(受けに回ったな! 【魔喰らい】発動!)


 先ほどと比にならない程の力を込めてその能力を発動する相川。それにより外道魔王は思わず眩暈がするほどの脱力感に苛まれた。


「き、さまぁ……! だが、これでわかったぞ……! 貴様の不死性は魔によるもの。なれば有限ということだ!」

「さて、君の可愛いペットたちを喰らい、あなた自身からも魔力を喰らい、名を現すことなく常に貯め続けた俺の魔力について……その有限性についての指摘は必要かな?」


 相川の余裕の宣言に対して外道魔王はこの場でそれを否定することはできない。しかし、だからと言って逃げるのは三傑の名が廃る。


「なれば試してみるだけだわいのぉっ!」

「チッ……! 無駄なことを……」


 下げていたギアを上げて魔力に頼らない純粋な体技で相川に襲い掛かる外道魔王。相川からすればそれが一番面倒な手法であり、重傷を負わせているのにもかかわらず完全に受けに回らざるを得ない。


「カカッ! 不死と嘯く割に避けるではないかのぉ!」

「喰らって気持ちいいものでもないんでね。失血死を待とうと思ってるだけだ。」

「その前に殺しきるわ!」


 そう言って必殺の気迫を叩き込みながら飛び下がる外道魔王。相川がその行為の意味を理解して反応するには少々遅かった。


「目的達成が先だわいの。さらばじゃ小童! 覚えておれ!」


 無言で発砲する相川。しかしそれは避けられてしまう。更に外道魔王は銃弾を避ける間に奏楽と瑠璃を回収してしまった。そんな外道魔王の背中に相川は大声で告げる。


「どうやって逃げるつもりかな? 貴様の飛行機は既に抑えてあるというのに!」

「カカッ! 龍宮寺の小娘どもじゃな? なぁに簡単なこと。主の飛行機を乗っ取れば済むわい。我に操縦できぬとでも思うたか?」

「あ゛ぁ?」


 言いながら逃げていく外道魔王を相川は弾雨を浴びせながら追いかける。しかし、それは突如現れた殺神拳の弟子たちによって止められた。


「チィッ!」

「ふん。我は主と違って武人じゃからの、多対一はせぬ。じゃが、この場は引かせてもらうぞ?」


 完全に捨て駒扱いの殺神拳の弟子たちを相手に相川は瞬殺を決め込む。しかし、その時すでに外道魔王の姿はなく、影さえも見当たらなかった。




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