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強者目指して一直線  作者: 枯木人
中学校編
199/254

罪と罰

「賊の亡骸です。」


 部屋でくつろいでいた相川の下に届けられたのは見覚えのある滅世の美少女の動かない体だった。相川はそれを持って来た女性と地面に転がってぴくりともしない少女を見て軽く目を伏せて額に手を当てた。


「……瑠璃じゃん……」

「はい。」

「何で殺すんだよ……遊神さんたちが大変なことになるだろ……」


 瑠璃の心配ではなく、第一声として計画に対する支障について述べる相川。しかし続けて「後、一応俺の友人だぞ?」と付け加えた分だけ他の人よりも扱いはマシなのかもしれない。

 それは兎も角としてやってしまったことは仕方ないと相川はこんな状態に至るまでの被害について女性に尋ね、返された答えに思わず天を仰いだ。


「何やってくれてんだこのお子様は……」

「打ち首にしますか?」

「やってお前が遊神流全員倒せるならやれ。馬鹿なこと訊くな……もういい。下がってろ。」


 相川は問答無用で目の前の女性を追い返し、倒れている瑠璃の下へ寄り、その目を開いた。


「うーん……死んでるなこりゃ……いや、まぁ何とかできなくはない……か? 凄いなこいつの生命力。」


 死後硬直で固くなり始めている瑠璃のほっぺたを掴みながら相川はそう言って彼女の遺体を相川のベッドに運び込んでもう少し詳しく様子を見る。


(……何とかなりそうだな。さて、こいつを復活させるのはいいとして事後処理どうしよっかなぁ……流石にこんだけ陣を荒らされて普通に逃がしたら軍律がねぇ……隠して帰そうにもそれが出来るレベルの実力者はこのお子様にやられてるみたいだし……)


 瑠璃のボロボロになっている服を剥ぎ取って弄りながら考え事をする相川。一応、ここで何をしたのか思い出せないように今日一日分の記憶ぐらいが曖昧になるように薬を飲ませることを確定しながら別の薬を飲ませる。


「【反魂香】……これ高いんだからなー? お前帰ったら覚えてろよー?」


 別に何もなくとも三遍回ってワンと鳴けと言われたら喜んでやっておすわりまで見せる彼女だが、それはそれとして相川は瑠璃を蘇らせる。


「……はい、気脈は戻った。血脈を戻そうかね。心臓が完全に停止してるから最初は……はぁ……気は進まないが出血大サービスだ。【魔通打】!」


 最初にこの世界では使われることのない一撃を加えてから相川は除細動器を瑠璃に繋げて電気ショックを与え、心臓マッサージと人工呼吸を始める相川。しばらく続けていると意識は戻らないにしろ、除細動器から電気ショックが不必要になったという報告が入る。


「全く……このアホは……」


 徐々に頬に赤みが差し始めた瑠璃を見て相川は記憶と意識が曖昧になる薬を更に投与して再び瑠璃の目を開く。今度は瞳孔の反射もあるのを確認しつつ相川は瑠璃の目に何かを入れた。


「甘々だな俺。過保護だ。」


 その他にも細々とした処置を加え、瑠璃を相川が用意した衣服に着替えさせる。それらが終わってから相川は瑠璃を絨毯に投げ置いて人を呼んだ。


「……お呼びでしょうか?」

「あぁ、そこの賊をコンクリ詰めにして海に捨てる。準備しろ。」

「はっ!」


 従順な兵士は眠り姫のように美しい瑠璃の寝顔を見て捨てるのは勿体ないと変な性癖を生み出そうとしていたが相川の命令には逆らえないので大人しく、迅速に手配をする。その間に相川は瑠璃を担いで部屋を後にする。その際に重傷を負った犬養と出会った。


「お疲れ様です。」

「おぉ、今からこれをコンクリに詰めて海に捨てて来るからまた後でな。」

「……畏まりました。」


 複雑な眼差しを瑠璃に向ける犬養。逆さまにされている瑠璃の後頭部からは何も読み取れなかった。代わりに相川に目を向けるも彼の表情もいつもと変わらず、心境を窺い知ることは出来ない。


「にしても、こいつのせいで扉どころじゃなくなりそうだな……」

「そう、ですね……」

「鬱陶しい事してくれやがって……」


 忌々しげにしている相川に何とも言えない犬養。言いたいことがいくらあってもそれを実際に発すことが出来ないのだ。そうこうしている内に相川が準備を命じた兵がこの場にやって来て準備が出来たことを告げる。


「じゃ、俺がいない間用心してな。」

「はい……」


 力無く俯く犬養を尻目に相川は軽く片手を上げて陣から離れるのだった。










「じゃ、やるか。」


 道中、瑠璃が遊神の娘だということを告げてそれでもついて来る人を募った結果で残った5人を連れて相川は船に乗って遠洋にまでやって来た。

 瑠璃の体に似合うくらいの小さめのドラム缶の中に瑠璃を入れ、生コンを入れ始める相川。何故かついて来た2人が泣き始める中で相川は瑠璃の体表に沿うようにもの凄く微小な隙間が生まれているのを確認してどんどん流し込む。


『ここでこいつを殺して……!』

『そんなことやったって何になるってんだ!』


 後ろでは何やら言い争いが始まっているが相川は不意打ちにも慣れているので特に気にせずに首の下まで埋め終わった。ここから先が匠の技が必要になる。


(穴が塞がるとヤバいからな……後、呼吸できるように……失敗したらスーツ造りを見直さないといけないがまぁ大丈夫だろ……)


 同行者たちは冷静さに欠けているようでドラム缶のことなどあまり気にしていない。一人は何故か激昂して襲い掛かって来たので返り討ちにして海に放り出しておく。


 そうこうしている内に瑠璃の頭頂部まで全部綺麗に生コンで埋め尽くされた。それを見て泣き崩れる4人と手伝わないなら仕方ないと一人でドラム缶を持ち上げて海に投げ込む相川。不意打ちして来た一人がそれを抱え上げようとして失敗し、海に沈んで行く。


「じゃ、戻ろうかね……返事は?」

「「「「はっ!」」」」


 ドラム缶の中にいる一人と他約一名を置き去りにして相川たちは自陣に戻って行く。その間に相川はプランの見直しと万が一に備えた修正案を考えておくのだった。






 気が付くと、真っ暗な世界に閉じ込められており、身動き一つとれなかった。


「痛っ……何? ボク、どうしちゃったの……?」


 しかも、記憶がないと来た。不安になった瑠璃は相川のことを呼ぶが反応は……


「っ! 何か急に!」


 あった。不意に目の前が明るくなって思わぬ刺激に瑠璃は頭が痛くなる。しかし、その刺激に慣れてきた頃には瑠璃は落ち着いていた。目の前に、ぼんやりと光る文字が浮かんでいるのが見えたからだ。


「……そっか、ボク仁のお仕事をつけようとして……」


 状況を把握し始める瑠璃。現在、本土から遠く離れた沖にコンクリ詰めにされて沈んでいることまで理解して、意味が分からなかった。


「何でボクそんなことされてるの……? ただお仕事見たくてついて行っただけなのに……」


 色々思うところはあったが、前々からついて来たら酷い目に遭わせると言われてきてはいたのでショックはそれほどまでにはない。寧ろ、帰る手段まで教えてもらっているだけマシだと思った。


「はぁ……結局、仁は何やってるんだろ……」


 この謎の技術とかはどういう風な状態なのかなど疑問を持ちながらも瑠璃は目に嵌められた何らかの機械の指示に従って行動することを決め、遊神流の奥義の一つでゼロ距離攻撃を放ちコンクリを破壊。そして自力で本土に上陸することになるのだった。




 今年ももう終わりますね。皆様よいお年を。

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