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強者目指して一直線  作者: 枯木人
中学校編
166/254

遊神流 合宿

 夏休みに入って照りつけるような夏の日差しが差し込む暑い日。


「人力なんだなぁ……」

「相川! 手伝えよ!」

「嫌だ。」


 動力がまさかの人力という木造船に乗った相川とクロエ、そして遊神流の面々は彼らが住んでいる場所から遠く離れた島へと向かっていた。


「こんなの持ってるから散財が酷いんじゃないだろうか……」


 そんなことを言いつつ相川は瑠璃の水着見たさに全力を出して既に疲労困憊状態に近い遊神流の門下生たちがいた動力室から出て甲板を歩く。


「……電波が悪いな。仕事は諦めるか。」


 もう少ししたら修羅の国に戻って修羅の国と他企業との提携で人工衛星でも飛ばすかと考えながら奏楽を見上げる。後ろでは門下生たちに代わって師範代たちが動力源となったようで猛烈なスピードで船も動き始めた。


「……人力だから船舶免許は要らないだろうが……このスピードってどうなんだろうね。何ノット出てるか知らんが……まぁこの辺突っ込むだけ野暮か。」


 見渡す限りの大海原だったのがしばらくして黒い点が見え始め目的地にまで着くには殆ど時間を必要としなかった。船を砂浜に上げ、遊神が号令をかける。


「よし、皆揃ったな! これから1時間は自由時間だ! 分かっておるとは思うが瑠璃に手を出した奴はな……?」


 相川的にはこの辺別にどうでもいいのに睨まれてやる気なさそうに見返し、瑠璃にハラハラさせる。しばし睨み合った後、師範代の一人である毛利が止めに入って解散となった。そして一行は上着を脱いで着込んでいた水着に着替えることになる。


「見て見てー! 新しい水着だよ?」

「「「「「ぐっはぁっ!」」」」」

「……何か面白いリアクション取るなお前ら。」


 先日相川に買ってもらった水着を着用して見せる瑠璃に門下生たちが男女問わずやられ、相川を楽しませる。瑠璃は肝心の相川が自分ではなくリアクションの方に注目したのでムッとした。


「ねぇ~!」

「何だ? ちょいとやることあるから手短に。」


 少し遅れて私服を脱いで謎のスーツ姿になる相川。黒くぴったりと肌に張り付く素材には瑠璃がこれまで見たことがない文字らしき何かと幾何学文様が並んでいる。瑠璃はアピールのことを一時忘れて荷物からヘルメットらしき物体を取り出している相川に尋ねた。


「何それ?」

「説明が面倒だから適当に言うと潜水スーツみたいな感じ。」

「……え、ボクと遊ばないの?」


 瑠璃は相川が甲板で仕事は諦めると呟いていたのを聞いていたので内心で跳ねて喜ぶほど浮かれていたのだが冷や水を浴びせられたかのようになった。

 本日は協定を結んで仲良くしているクロエも瑠璃と同じく水着を下に着てスタンバイしていたが、相川以外に水着姿を見せたくないと別の場所に隠れ、瑠璃が相川を誘導してくるのを待っているのにどうしろというのだろうか。


「遊ぶ……まぁ時間が余れば。」

「えぇ……こんな時くらい遊んだ方が……電波が届く場所だと仁いっつも働いてるじゃん……」

「別に必要なことをやってるだけで働いてるつもりはないが……」


 瑠璃の後ろでは煩悩が暴れ始めた人たちに対して遊神が戦闘を開始している。相川は元気だなぁと思いつつも瑠璃が相川の視線に釣られて後ろを向いた瞬間に気配を消して深海に向かった。













「まぁ耐圧、耐水的にはOKだな。この段階でここまで来れば順調だよ。」


 まだ世間的には未発見の4メートルほどある奇妙な柔らかさをした深海魚らしきものを焼き魚にしたら美味しそうと捕獲して持って帰ってきた相川は浮上ポイントを間違えていた。潮の流れが早く割と面倒だが気配を辿って来た島の、別地点まで泳いで移動する。


「岩壁だな。あっちで何か氣が蠢いてるから巻き込まれないように気配消してこっちでのんびりやりますかね……」


 そろそろ日も傾いて色を濃くしている時刻。帰りの船がある島に辿り着いた相川は波によって抉られた岩壁の上に魚を2度程投げつけて魚の上陸成功に至らしめ、そして自らも上陸を開始する。


「……助けてくれごっこ。」


 ついでに時間が出来たので遊んでみた。岩壁にナイフを刺して登りながら片手でその一本を掴み、「もう駄目だ……」などと苦しげに呟いて遊ぶ極めて不謹慎な遊びだ。遠目から見たら確実に絶体絶命の状況だと判断される。


「!」

「お?」


 そしてその状況をかなり遠くから把握した人物がいる。一人だけ余裕でメニューを終わらせていた瑠璃だ。彼女は一度深海魚らしきものを綺麗に放り投げるのに失敗し、二度目には発勁した相川を感知していた。

 そんな彼女が猛烈なスピードで移動してくるのを感知した相川が何だろうと思った時には既に視認できるところにまで来ていた。


「待ってて! もうちょっとだから!」

「来なくていいぞー!」

「バカなこと言わないで!」


 遊んでるだけだからと言う前に必死な顔で瑠璃が岩壁を駆け下りて来た。それを見た相川は何だかなぁと思いつつも片手に持っていた刃物で岩壁を切り裂いて二人が入れるスペースを確保し、抱き留めてクッションになろうと相川を抱えようとしていた瑠璃を捕まえて跳ねこむ。


「ふぇ……?」

「うん、まぁ……これは割と俺が悪いな。別に遊んでただけだから気にしないで良かったのに。」


 捨て身のダイブだったのに何てことないまま相川と密着している状態に持ち込まれた瑠璃は少し呆けた後に現状を認識して変な声を上げた。


「あーあー……割とうるさい。」

「な、この、本当に心配させて……何が遊んでたで、この……」

「お、夕日が綺麗だ。」

「……ホントだ……」


 かなりロマンチックな風景とシチュエーションではないかと瑠璃は思考を再び鈍らせ、水着と水着で触れ合っているということを思い出し少し冷たい相川に瑠璃の熱が伝わっていることを認識し顔を紅潮させる。


「……じゃない! 何であんなことしたの!?」

「遊ぶのに理由は要るまい。」

「洒落になってなかったよ!? もう駄目だとか聞こえてるんだからね!?」

「……潮風とかで流れ……いや、何だこいつ。」


 どう考えても無理だろと思ったが相手が相手なので諦めることにして溜息をつき、黙り込む相川。微妙な雰囲気になった後、瑠璃は反省してるかな? と相川を見て至近距離で夕日が綺麗な情景を二人きりで見ているシチュエーションに何だかいい雰囲気だと酔い、相川の肩に頭を乗せる。


「瑠璃……」

「仁……」


 不意に名前を呼ばれ、瑠璃は相川の顔を見た。このままキスの流れだと本人が目を閉じている間に相川の方は上方の巨大な氣が既に目前に迫っているのを告げようとし、声にならない溜息に変える。


「……瑠璃に手を出した奴は、分かっておるなと最初に言っておいたはずだが……?」

「瑠璃、協定違反じゃないですか? 誘導もせずに私を合宿に放置した挙句、師匠と二人きりでこんなことを……いったいどういった了見でしょうか……?」


 どうやら巨大な氣に隠れて金髪のお方も来ていたらしい。相川がどうするか考えている間に空気をぶち壊された瑠璃が崖に直立している遊神と相川が使っている様なギミックを使っているクロエを前にして岩を破砕して立ち上がる。


「よくも……!」


(まぁこの隙に逃げるか……)


 そして相川も岩を破砕し、岩壁を崩して遊神がそれに気を取られた一瞬の間に気配を完全に消して彼の領域から逃れ、自力で本土に帰還することになるのだった。




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