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強者目指して一直線  作者: 枯木人
中学校編
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普通か変か

 そろそろ夏休みも近付き、気温がかなり高くなり始めるころ。暑いのが嫌な相川がすぐに冷房をかけた部屋で相川、クロエ、瑠璃の3人が集まっていた。


「それで? 話って何?」

「驚かずに聞いてね……仁がウチに翔を押し込んだ所為で翔と暮らしていてわかったんだけど……ボクらって一般的には変みたいなんだよ……!」


 瑠璃の言葉に今更何言ってんだこいつという視線を向けながら紅茶を持って来たクロエと、だから何と言わんばかりの相川。先に口を開いたのは相川だった。


「まぁ、俺としては普通だがこの世界の人間的には割と変わってるかもな。」

「……突っ込みを入れた方が良いのですか?」


 相川が瑠璃に合わせたのか、それとも本気なのか判断が付かないクロエは控えめに相川にそう尋ねて問題提起してきた瑠璃の前……相川の隣に座る。


「あっ、ズルい。」

「それで、変わっているから何ですか?」

「……ボク、仁に迷惑かけてたのに気付いた……ごめんなさい。」


 瑠璃の意見を封殺しつつ話を進めるクロエに応じ、本来の用件に入る瑠璃。謝罪を受けた相川は異世界行きの補助器具の草案を見つつ適当に答えた。


「あーそう。……それよりセンサー技術がもう少し欲しいんだよなぁ……しかし今の所だと欲しいだけの技術を持ってるところは大体大手で喧嘩売る理由もない……」


 適当に流されていることは理解している瑠璃だがあまり気にしていないという風に見て取れたので話を進めようとして止まった。瑠璃の予定では迷惑をかけていることに気付いたが、引けないところもあるのでその辺は話し合いで解決しようと思っていたのだ。

 しかし、相手は話半分で聞く程度の価値しかない話題と認識して流している。つまり瑠璃が思っていたほど相川は瑠璃の行動を気にしていないということだ。それは逆に言えば瑠璃のアピールも価値なしと判断されていることでもある。


 そんなことなどを考えつつ瑠璃はどうせ気にされていないのならと探りを入れてみることにした。


「……ねぇ、仁って好きな人いる?」

「!?」

「いないな。」


 ド直球の質問にクロエが驚いて瑠璃、そして相川に視線を向けるが相川は微塵の動揺もなくそう断言した。その表情を見て瑠璃はこれは本当と安堵と落胆をしつつ続けて尋ねる。


「じゃあ誰か好きになったことある?」

「ないな。」


 これも本当。瑠璃は悔しくなった。対する相川は何やら笑っており、その笑みは先程より興味が出て来たと言う顔だ。瑠璃は続ける。


「じゃあドキっとしたことは?」

「戦闘「じゃなくて、話の流れ。」……んー……」


 これは無きにしも非ず。瑠璃は多少希望を見出した。クロエも興味津々で成り行きを見守っている。


「……ちょっと失礼かもしれないけどホモじゃ「ねぇよ。」……ありがと。」


 露骨に安堵する二人に相川はこいつらは俺のことを何だと思ってるんだと思いながら今度は逆に質問してみた。


「お前ら色気づき始めたのか。お年頃だもんなぁ……?」


 完全な保護者目線の発言に瑠璃とクロエはムッとする。その反応自体が答えを物語っているようで相川はタブレットを置いて本格的に話に参入を始めた。


「よし、じゃあ恋愛感情何ぞ持ち合わせてないが知識だけは持ち合わせている俺が話だけは聞いて適当なことを答えてやろう。」


 今の発言だけで二人の恋愛相談に関しては結構致命的な台詞が混入していたが、本人の協力が得られるならと瑠璃とクロエは若干ノリ気になって尋ねてみる。


「じゃあ質問。男の人はどうやったらドキッとするの?」

「何の脈絡もなく虚ろな目つきで肩を寄せてお腹を撫でながら熱っぽく『できちゃった……』と呟けば大体は「普通の恋愛的にね。」」


 開幕早々ヘビーすぎる発言にこれはダメだと思ったクロエだが、割と真面目に考えているかも知れないので聞いてみる。


「そうだなぁ……一般的には押したり引いてみたりして距離感を惑わせてから冗談で攻めるとか。」


 近くに行ってみたり少しスキンシップ過多じゃないかと意識させたところで少し引いてどうしたのかなど考えさせ、ちょっと色々あってね? と戻って来てから嫌われたのかと思ったと呟く男に「嫌いになる訳ないじゃん、だって……」と返す辺りの展開を話す相川。


 その話が終わったところで瑠璃は相川に告げる。


「でも仁、前にボクがちょっと悪戯したら冷たい目をして1ヶ月帰って来なかったこと……」

「俺は別。基本忙しいのに面倒なことされたら優先順位下げるのは当たり前だろ。」


 じゃあ意味ないじゃんと瑠璃は質問を変えてかなり直球で訊いた。


「ひ、仁はどんな時にドキッとするの? れ、恋愛だからね!」

「俺?」


 尋ねられて腕を組み、左上を見上げながら考えたかと思うと首を傾げた相川。クロエが無表情に、瑠璃がわくわくしながら答えを待っていると相川は「特にねぇなぁ……」と呟いてから何か考え始めた。


 その様子を見て瑠璃が動く。席を立つと相川の左腕に目立ち始めてきた胸を当てながら熱を込めたと息を吐いて尋ねたのだ。


「こ、こういうのは、どう?」

「……んー……まぁ、ドキッとした。」


 相川の言葉には実感が全然籠っていなかった上、鼓動も少しも揺れていない。逆側からクロエが瑠璃よりも更に大きな胸を当てて同じことをしても反応がない。思わずクロエが尋ねたほどだ。


「……あの、機能不全……」

「……全身統制使えるから反応がないだけだよ。」

「ズルい。ボクが前に言ったときは殺されても文句言えないからなってパンチしたのに!」

「いや、まぁ流石にこの状況で反応がないとなると少し疑ってもおかしくないからなぁ……」


 瑠璃の怒りと共に繰り出されるサバ折り紛いの抱き着きに氣を纏って抵抗する相川。それはそうと瑠璃はここに来た別件の用事についてこのタイミングで何故か思い出した。


「あ、夏休みに遊神流の合宿に来ない? 今年は何か地代を払ってるのに使わないのは勿体ないからどっかの島に行くみたいだよ?」

「……そう言う無駄遣いするから金がなくなるんだよあの馬鹿……瑠璃は可哀想だなぁ……」


 現状、相川の店で結構バイトをし、学校からの奨学金も得ている瑠璃だが学費や生活費、通信費を考えると交友費などに自由に使えるお金は殆どない。服も基本的に制服のままが増えて来ており、成長期真っ只中の彼女は買い替えで更に金銭面での圧迫を受けている。


「? ボク可哀想なの?」

「割と。まず俺と出会った時点で最悪。」


 この時点で瑠璃は話を聞く気がなくなった。相川も瑠璃が聞く気がないのは見ればすぐに分かるので逆側で力を込めて自己主張をしているクロエの方を見る。


「何? そろそろいい?」

「……はい。それでなんですが、島に行くのであれば水着を買わないといけないので……」

「学校用ので……」

「サイズが合わなくなりました。」

「あ、ボクも水着……」


 誇らしげに胸を反らせるクロエと複雑な顔で目を胸部に落とす瑠璃。たかるつもりでこんなことをしてたのかと納得した相川は別に金銭面で困っているわけでもないので夏物を買うついでに水着を買いにいくことにし、ふと気付いた。


(……行くこと前提になってるな……まぁいいけど。)


 思い立ったが吉日と言うことで3人は買い物に出かけるのだった。







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