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強者目指して一直線  作者: 枯木人
中学校編
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調査

「部屋一緒なのかよ……まぁ瑠璃と一緒の部屋とか今更だしいいけど……」

「……うん。」


 桐壷グループ経営のホテル内に到着した相川は既にそこにいた桐壷兄妹により部屋をあてがわれて既に部屋の中にいた。相川は瑠璃と同じ部屋に不満気だがそれ以上のアクションを起こさないのを見て瑠璃は多少やはり前進はしているんだよなと思いつつ複雑な心境で相川のことを見る。


「ねぇ、仁……林間学校、楽しもうね……?」

「ん? おう、頑張れ。俺はやることあるからしばらくこの部屋に籠っておく。」


 相川の返事に瑠璃は溜息をつきたい気分になった。しかし、そこはぐっと堪えて何とか優しく相川に翻意してもらおうと説得を開始する。


「折角の林間学校なんだよ? 楽しまなきゃ林間学校の意味……」

「林間学校の意味はクラス及び集団の所属意識を高めてクラス運営を行いやすくするためのことだ。楽しむことは林間学校の本意ではない。」

「うぐぅ……そう言うんじゃなくて、もっと、普通に……」

「俺に普通を求めるな。」


 今度こそ瑠璃は溜息をついてしまった。折角楽しみにしていたのにこれでは自宅に居たのと大して変わりがない。それもそれで悪くはないのだがそれだけでは不満なのだ。


「レクレーションとか不参加なの?」

「いや……」


 相川の返答に瑠璃の顔が明るくなるが続く言葉でそれは打ち消された。


「参加だけしてすぐに抜ける。」

「もう! 遊んでよ!」


 本格的に悲しくなってきた瑠璃。ここに来るまでのバス、翔とのやり取り、そして今のこの態度に調べ物と言いながら奏楽に対して匿名で翔と瑠璃が急接近しているという手紙を書いているのを把握してもう泣きそうだ。


 そんな瑠璃に相川は首を傾げてそう言えばとタブレットを操作して瑠璃にあるページを見せた。


「遊ぶで思い出した。これお前も来る?」

「……リゾートセミオープン……? 行くけど! 今は林間学校の話だよね!」

「ほー……まぁ予約しておくわ。」


 瑠璃の言葉を聞き流して相川は既に仕事の資料に思考を移動させている。ついでに遊神の動向を把握したところ、旅から戻って来たようだった。


(……ん? 旅って言うか……ほうほう。)


 現在、遊神邸に戻って来て活神拳の師範代たちと旅の目的だったことに関する進捗状況について話し合いをしているのだがそこで初めて相川はあることを知る。


(瑠璃の妹の……茜音か。あいつ誘拐されたのか~……へー。まぁあいつも写真を見る限りじゃ瑠璃には及ばないが相当な美貌持ちだったしなぁ……アレを自分の物にするためにやろうと思えば遊神さんとかあの学校のセキュリティレベルじゃ出し抜きまくれるだろうな。)


 今現在まさに遊神たちを出し抜いて内情を把握している相川は現代社会の情報伝達能力と早さを舐めてもらっては困るんだが……思いつつ何故か会社ぐるみで保護されている瑠璃のことを見る。遊神たちの話では不安を与えないように瑠璃たちには茜音が誘拐された情報は伏せられているようで、何も知らないとのことだ。


(ん~まぁ頼まれてないのに出しゃばるのも面倒だし、相手は現段階の三傑に入る外道魔王とか抜かす奴らしいし……正直結構どうでもいいから放置だな。瑠璃にブチ切れられたら便利屋じゃねぇんだって切るとして……)


 人間関係の整理についてまで思いを馳せた相川はそこでようやく林間学校に参加して楽しもうと教師のように言ってくる瑠璃に意識を戻す。


「仕事はクロエちゃんに押し付けてさ、もっと……」

「何気に酷いこと言ってるな……それは兎も角、林間学校が終わったら遊神さんが家に戻って来たらしいから瑠璃も家に戻ろうな?」


 無言で嫌な顔をする瑠璃。日中は男だらけの自宅は翔という内弟子を取ったことで夜間まで男性の方が多い。ただでさえ瑠璃は父親のことがあまり好きではないのに最近は急に接近してくる奏楽の相手もしないといけないのに翔までプラスされ、現在いるところでは想い人が別の異性と二人きりだ。


「……どうせすぐいなくなるし、ボクのことなんて見てもくれないんだから家に戻らなくても……」

「まぁでも親には居所指定権があるし。」

「そういう決まりじゃなくてボクの気持ちも考えてよ……」


 瑠璃は悲しそうに俯いてそう呟く。その間にも相川は仕事を行い、瑠璃が切れて飛びかかった。


「遊べ! ボクと一緒に!」

「何? っぐ、何なの?」


 四肢に全力を込められて胴体にしがみ付かれた相川はタブレットから顔を上げて至近距離にある瑠璃の顔を直視し、目を逸らす。


「こっち見ろー!」

「幼児退行してないかお前……」


 幼稚園ぐらいの頃は基本的にこんな感じだったなと思いつつその頃とは違う自己主張を行う女性らしさを帯びた肢体。ついでに強靭なその力は不意を突かれた相川に抵抗を許さない。


(瑠璃は基本的に悪意も敵意も害意もないからなぁ……やり辛い相手だ……)


 密着している間に熱が籠る。相川の体と違い瑠璃の体温は高く、甘く脳を蕩かすような髪の匂いが相川の鼻腔をくすぐった。それは相川の理性を解し、殺意の発露を促す。


(ふむ。こんな状況で殺意が最初に芽生えてくるあたりやはり俺は俺だな。性欲も来たが遅い遅い。お前はお呼びじゃない。まぁ殺意もなぁ……)


 理性のリソースを削ぎ取った瑠璃の可愛らしさに少しだけ驚きつつ相川はタブレットをなるべく遠くに置いてリアクション待ちの瑠璃を見直す。

 幼く可愛らしかった顔立ちはそろそろ綺麗と呼ばれるような顔立ちとの中間地点に至っており、それでも神憑ったバランスの良さで瑠璃の魅力を損なうことはない。


「……瑠璃、近い。」

「物理的にはね。でも、今考えてることは多分遠過ぎるからプラマイしたらそうでもないよ。」

「ほう、なかなか上手いこと言うな。」


 否定されなかった悲しみを覚える瑠璃だがそれはそれとして密着できる理由になるので割り切って今はこの状態を楽しむことにした。少なくとも、瑠璃が耳を当てている相川の心臓部分は鼓動を早めており、意識されていないことはないようで、それだけでも瑠璃は少し前を向いて歩ける。


 しばし、均衡した状況が続いてベッドに組み敷かれていた相川は仕方がないとばかりに瑠璃に告げる。


「分かった分かった。ちゃんと参加するから解放しろ。」

「約束だからね……」


 言質を引き摺り出した瑠璃は少々名残惜しそうに相川から身を離す。そんな瑠璃に相川は物理で攻撃すればやり返すし悪意でもあれば仕返しも万全なのに上手いことやるなぁと感心しつつ身を起こした。


(まぁ人前ではくっ付かなくなったし、泣きながらしがみ付いて言質を引き摺り出した時点で泣き止んで疲れてそのまま寝ると言う悪癖を改善した辺りには成長が見られるよな。)


 そんなことを考えながら相川は約束通り林間学校に参加し、レクレーションで経営層ながら護衛組に対して無双を行って心を圧し折り、計画通りに殺神拳を割り出して後は彼らを使って瑠璃と一緒に悠々自適の時間を過ごした。




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