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強者目指して一直線  作者: 枯木人
中学校編
155/254

悪ノリ

「ふむ……参ったな。」


 相川は修羅の国から帰国して自宅で瑠璃を落ち着かせてから寝かせつけ、そして椅子に揺られてそう呟いた。


 修羅の国での紛争は達人を2人殺した後、攻めるのに時間がかかっているのは内部呼応の交渉を行っているからであり、それが上手く行く見通しが既にあるから攻めて来ないのだと様々な形で情報を流し、内部を疑心暗鬼に陥らせて各部署の連携を弱め、そして心が摩耗して本当に寝返りの兵たちが出てきたところでそこから突撃して崩壊させた。


 その後もしばらく進撃を行った結果、隣接する地区の解放を済ませてしまい今回の契約の範囲は終了したことで半年ほどの休暇が得られたのだった。


(……まぁ、休みとは言え国内の仕事は鬼のようにあるんだがな……)


 ついでに紛争のお仕事は休暇と言ったがインフラに関しての仕事はバリバリに入っている。そんな仕事上でも忙しい相川に更に追い打ちをかけるように圧し掛かって来ているのが先の紛争で話をした傭兵の女性との一件だった。


(……この学校にも殺神拳、しかもウチの学校からじゃない真正の殺し屋の子どもたちが入学してるとか……いや、それだけならまだいいんだが……)


 相川は溜息をつきつつ虚空を見上げる。


「まさか今更になって奏楽が生きてるんじゃないかとか変な疑惑が出て来て殺神拳どもが回収しようとし始めるとはなぁ……どうするかね。別にウザいし売り渡してもいいんだが……特に介入する必要性も見当たらないし放置してもいい……」


 相川は奏楽の処遇について困っていた。折角去年のクリスマスに瑠璃と親密になったのにすぐに引き離されることになるのは少々可哀想と思わなくもないのだ。

 しかも、相川が余計なことをした所為で翔という別のアプローチをかけて来る男も現れ、現段階で奏楽が抜けるとなると翔によって距離を縮められることになるだろう。


 尤も、それは相川の思考内だけであり瑠璃は盲目的なまでに相川しか見ていないのだが。


「……瑠璃の自由さだと皆仲良しとか言って浮気も自由にしそうだし。いや、むしろ現時点で俺の家にいること自体問題なのに気付いてない様子だからなぁ……」


 相川の認識では瑠璃は幼稚園の頃から奏楽のことが好きなのに相川とも仲良くしようとしている変人で密着度数から考えてパーソナリティスペースがおかしく、瑠璃にその気なしでも異性側から見たらいけるんじゃないかと思わせてしまう尻軽に見えている。ついでに使える者は使い倒す悪女のイメージもある。

 例えそれが事実と反し、彼女が相川一筋で身持ちも硬く組手以外では髪も触らせたくないようなこの頃になっていたとしても、相川の認識上にそれは存在していないのでどうしようもない。


「……アレだな。ウチの抱えた案件を劇団風にやってみて浮気によって家庭がどう壊れて行くかについて学ばせてみるのもいいかもしれない。まずは浮気の定義から個人差があると言うことから……」


 相川は気分が乗って来たので面倒臭い作業に取り掛かり始めるのだった。










「仁、これなぁに?」

「360度立体的に映像を見れる機械。」


 そして1週間後、瑠璃を呼びだした相川は潜水用ゴーグルのような装置を瑠璃につけさせて完成した映像を見せる。相川の会社の恐ろしいまでの悪ノリで完成した無駄な技術の結晶を前に瑠璃は不安そうにしているが相川は気にしない。


「何見るの?」

「浮気とはどういうものか。浮気したら異性との関係がどうなるか。瑠璃は貞操概念が自由そうだから要るかなと思った。」

「ふーん……」


 正直瑠璃には浮気する気持ちが理解できなかったので、こんなものどうでもいいという感想しか浮かんでこなかった。瑠璃が察するに恐らくこの機械は凄いものなのだろうが見くびられていると言う感情の方が強く出て苛つく他ない。


「……ボクが浮気するような子だって言いたいの?」

「まぁ怒るな。人によって浮気のラインが違うんだ。一先ず見てからでもいいだろ? 楽しめるようにネタとかも入れてあるからさ。」

「……まぁ、いいけど。」


 瑠璃は相川にお願いされると拒否の方向に意思が向き辛い。代わりに条件を足してその依頼を受けることにした。


「その代わり、仁はここにいてよね? ボク、外のこと何にも見えないんだから……」

「あぁボディガードならつける。」

「仁がいい。」

「……仕事しながらになるがそれでもいいなら。」


 瑠璃は首肯した。ボディガード云々よりも相川と一緒にいると言うことが大事であり、仮にそれが互いに別のことをしていたとしても一緒にいることは出来るので問題ないとして映像を流すように相川に告げた。


「じゃ、始めるかね……」


 そして映像が始まった。まずは浮気の定義からで、早速書類に取り掛かろうとする相川に瑠璃が質問して来た。


「ねぇねぇ、腕を絡めるのってダメなの? じゃあ投げ飛ばす時……」

「……試合とか喧嘩と普段は別だろ。仮に普段から投げ飛ばしてるのならそれはそれでだめだし。」

「……手も繋いじゃ駄目なの!? じゃあパンチ捕まえるのは!?」

「いや、人によるって先に説明が入ってるはずだが……後殴られた場合はそいつをボコるのは当然のことだからいいだろ……」


 資料に手を付けようとしていた相川にあなた自身はどうなのかと尋ねて来る瑠璃。相川はこれじゃ仕事にならんと相川は資料に目を通したところで代役を連れて来ることにした。


「ちょっと用事が出来たから出てくる。すぐに戻るから。」

「えー……わかった。すぐに戻って来てね。」


 そして相川はクロエを連れて戻ってくる。瑠璃は何で二人きりだったのに要らないのが来たのかと苛つくが大きく深呼吸して相川がいない間に思った疑問点をぶつけていく。


「パン……下着とか透けて見えるのもダメって、どうすればいいの?」

「……瑠璃、人に因るって言ってるだろ? 個人差がある訳。おわかり?」

「見せたら駄目に決まってるじゃないですか。あなたその程度のことも知らずに生きて来たんですか? 恥知らず。」

「はぁ?」


 あ、スイッチが入ったと相川はもう巻き込まれることが確定したのを理解しつつクロエと瑠璃の言い争いを傍観する。


「仁以外には見せてないし。」

「奏楽の前でそれ、言えますか?」

「ぅぐっ……だ、だって、同じ家に住んでたら……」

「私は師匠にしか見せてません。この違い、お分かりでしょうか?」


(同じ家に住んでたら多少やむを得ないと言う話を補強しているだけじゃ……)


 発言すれば巻き込まれるまでの時間が短縮されてしまうので相川は何も言わずに今の内になるべく書類を片付けようと進めていく。しばらく経っても巻き込まれなかったのをいいことに仕事を殆ど終わらせていくと話は謎の展開を見せていたようだ。


「じゃあボクが穿くパンツ全部仁と買うし!」

「私はあなたには必要なさそうなブラまで買います。」

「要るもん! 一緒に買いに行く!」


(……何があったのか理解できんが……理解したいとも思わんな。ん~……まぁ面倒なことになったら強制的にシャットダウンさせることにするか……)


 相川はそう判断して瑠璃に映像がどこまで行ったか尋ねる。その後はやはり予想通り面倒なことになったので強制的に且つ物理的に眠りに就かせてその日は何事もなく終えることが出来たのだった。




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