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強者目指して一直線  作者: 枯木人
中学校編
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謎クイズ

 歌番組で今話題の4人組アイドルが歌っている場面を映しているテレビを前にして学校帰りで制服姿の瑠璃はソファに横になっていた。その様子を見ていた相川は嫌そうに近付いて念を押す。


「遊神さんが連れ戻しに来るまでだからな?」

「えー……お父さんが旅から帰って来てもここにいたい……」

「今の時点でどれだけ面倒なことになってると……はぁ。まぁいい。この件に関しては瑠璃よりあの馬鹿親が最悪だからな……瑠璃は可哀想。」


(……別に仁がいるから何も哀しくないんだけどなぁ……寧ろハッピーだよ。)


 遊神がいない状態で他の達人たちに家を貸している中に一人女の子が帰ると言うのもアレかと判断された瑠璃は入り浸るを超えて一時保護という名目で相川邸に住むことになった。その話題はもう蒸し返しても不毛なので相川は話題を変える。


「で、翔とかいう奴はどうなんだ?」


 相川はまだ旅に出ていない遊神父が居る状態にもかかわらず既にこちらに荷物を持って来て相川の家の部屋を一つ占拠して廊下にまで荷物を広げている瑠璃に尋ねた。外はもう暗くなってきているのだが、彼女の様子を見るからに帰る気は皆無の様で今日から泊まり込む気満々らしい。そんな彼女は少し上を見上げて答えた。


「んー……筋はないし、力も弱いみたいだよ。」

「……で?」


 当然そこで終わるわけじゃないだろうと相川が尋ねると案の定瑠璃は続けた。


「ただ、努力する才能はあるみたい。物覚えもあんまりよくないけど……体に染みつかせるようにすっごく基礎から頑張ってるみたいだね。」

「ほうほう。瑠璃はそういう頑張り屋好きだよな?」

「え? まぁ……うん……」


 頑張る人とかそういう問題じゃなくてただ純粋に仁が好きなんだけどなと思いつつ瑠璃はアイドルの出番が終わると同時に運ばれて来た荷物を分ける作業のため廊下に移動し、何気なさを装いつつ呼吸を落ち着けて相川に逆に尋ねた。


「仁はどんな子が好きなの?」

「……好きって感情がまずわかないからなぁ……それに近い状態は黒猫君か……」

「…………そう。」


 隠しきれない落胆を見せる瑠璃。しかし、裏を返せばチャンスはめいいっぱいあるということだ。もう生まれてこのかた、人生の半分以上を片思いで過ごしている瑠璃はこの程度では挫けない。


(仮に面と向かって告白しても冗談で済まされそう……だからこそ、頑張る!)


 謎のポジティブを抱いている瑠璃。そこに隣の部屋を占領しているクロエが現れた。


「師匠、今日は組手やってくださるんですよね?」

「……何で瑠璃の前で言うかなぁ?」


 溜息をついて相川が軽く目を伏せて首を振っている間にクロエと瑠璃の間に視線の火花が散る。相川はそれを空気で察して……突如、世界が暗転した。


「きゃっ?」

「何で疑問形……停電か。瑠璃、停電だ。大丈夫だから降りろ。」


 木にしがみついた猫のように相川に飛びついて四肢で抱き着いてくる瑠璃に降りるように言う相川。その言葉を聞いてクロエが動いた。氣を感知してさり気なく相川の手の近くに移動し、そしてしがみ付いている瑠璃を降ろそうとして動いた相川の手が偶然自分の体に当たるような位置に佇む。


「おい、何でクロエはブレーカー見に行くんじゃなくてこっちに来た? あっちいけ……」

「師匠、因みに今ぶつかって何だろうと確認するために掴んだのは私の胸です。」


 あっちに行けと払ってきた相川の手にクロエの割と大きくなっている胸がぶつかってクロエが冷静に告げる。そしてそれに瑠璃がカチンときた。


「仁こっちの方が良いよ。これ柔らかいよ。」

「何? 何で今この状況で遊び始めてんの? ボックスの中身当てるゲームでもしたいのか?」


 確かにシルクのような手触りとその内部にある程よい柔らかさと低反発な張り、仄かな温かさがある何かに瑠璃によって掴まれている相川の手先が触れている。位置としては相川の腰の辺りか。本当に触り心地のいい物なので相川は瑠璃に尋ねた。


「へー……確かにいい物みたいだね……どこで売ってんの?」

「売ってないよ。」

「え? つーかこれ何?」

「ボクのお尻。」


 沈黙が降りた。一応、聞き間違いかもしれないので相川は手を動かすのを止めてもう一度尋ねる。


「What is this?」

「This is my hip!」


 可愛らしく元気のいい瑠璃の返事に相川は抑えられている手を一度引き、そして思いっきり叩いた。


「アホか!」

「きゃんっ! いたぁい……」


 自らの尻を抑えるために相川の手を解放する瑠璃。クロエは呆れた声音で告げる。


「瑠璃、あなた頭おかしいんじゃないですか?」

「クロエちゃんに言われたくない。」

「お前は言われる必要あると思うよ。」


 ブレーカーを上げるまでもなく戻った照明。シルクの手触りは要するに下着で本物のシルクだったという愚にもつかない話で相川は瑠璃のことを見つつ考える。


(……思春期の知識をもう少しつけさせるべきか。こいつこのままだとやべぇ……クロエと張り合ってどこまで行くんだ……仮にクロエが初体験したら速攻で自分もとか言って誰かに襲い掛かったりしそう……)


 基本的に忙しい時には相手の心配などしない相川が割と本気でそう思わざるを得ない状況。尤も、瑠璃は相川を誰かに取られたくなくて必死なだけであり、余人相手だと触れさせもしないので大丈夫だがそんなこと相川は知らない。


 少し沈黙が降りる中、瑠璃は涙目で自らの尻を撫でている。それすら欲情を掻き立てる動作でクロエも忌々しそうに魅了されつつ敗北感を感じて睨むだけだ。


「……組手、行こうか……」

「あっ、ボクも!」

「……仕方ありませんね……」


 黙っていても仕方ないということで、相川たちは着替えて自宅内にあるトレーニングルームへと行くことになった。






「……俺の組手はどうなった。」


 目の前では瑠璃とクロエがどっちが先に相川と戦うかで揉めて戦闘に発展しようとしていた。二人まとめてかかって来いと言いたいところだが、瑠璃の規格外は相川並なのでそれにクロエを足されたら組手になるには厳しい。かと言って疲弊した状態で戦っても意味はないので相川は別の戦い方を提示した。


「じゃあ今週の学校での告白数で勝負したら?」


 冗談交じりの提示。これから期間をもう少し広げていこうと考えている相川にクロエは普通に乗って来て困り顔を浮かべる。


「……まだ学校が始まったばかりな上、2日しか通ってないなんですが……」

「ボク2人。」

「「!?」」


 まさかの答えに相川とクロエが驚いて瑠璃の方を見る。これは盛り上がって来たとわくわくしながら相川は瑠璃に尋ねた。


「本当に?」

「……うん。何か、初めて人を好きになったとか言ってきた普通のクラスの人と、ワーキエルの社長夫人にならないかとか言ってきた隣のクラスの人がいたよ。」

「それでそれで?」

「それで、って……ごめんなさいして終わりだけど……」


 何でそんなに楽しそうにしてるのか、少しくらい嫉妬してほしいと拗ねる瑠璃。相川は相川で奏楽と翔以外の当て馬の気配に笑いつつ、ふと難しい顔をした。それを見て瑠璃は少しは嫉妬してくれたのかと期待するがそれはそれとしてクロエとの勝負に勝ったので組手を持ちかける。


「勝負勝負! 勝ったら何かして!」

「……私が先にお願いしてたのに……」

「負けたんだから黙ってて。」


 シビアな瑠璃に相川は苦笑しつつクロエと場所を入れ替えて見学と審判をさせることにし、半身で構える。瑠璃はにこにこしながらクロエの開始の合図とともに重力を感じさせない動きで飛び掛かって来た。


 その後、クロエが目で追うのがやっとの攻防が繰り広げられることになり、その戦いで勘を取り戻した相川は御門中学校に事業による公欠の届け出を行ってから新たな武器を持ち、殺神拳が現れると言う修羅の国の戦場へと戻って行くのだった。




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