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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
138/254

何か言いたいことでも?

「……まず言い訳を聞いてやる。」

「契約違反はしてない。だから問題ない。」


 契約期間を大幅に短縮させて既に戻ってきた相川に対して高須は頭を抱えるようにして嘆息した。


「……お前、俺前線に送らないと言ったよなぁ?」

「俺が前線に行ったのではなく、前線が俺の方に来たんだ。俺は悪くない。」

「犬養さん、止めてくれって言いましたよねぇ……?」

「社長の命令が絶対です。行けると判断したので暗殺して攻め落としました。」

「ダメだこいつら……」


 高須は本気で頭を抱えた。海外の内乱に傭兵を派遣する仕事を外国の名義で持っている高須だが、まさか補給兵として送られた人物によって今回送り出した範囲における内乱の首謀者、及び主要人物たちが全員暗殺されるようなことになるとは思っていなかった。


「いや~いいコネが手に入ったよ。ありがとう。」

「俺は同業者から睨まれるけどな。もっと国を疲弊させてから本格的な戦力を投入する予定だったのにってな……」

「オイオイ、規定じゃ世界秩序の維持と平和の為ってなってなかった?」

「建前に決まってるだろ……どいつもこいつも自分たちの利益しか考えてねぇよ。」

「まぁそう言わないで。向こうさんから貰った金あげるから。」


 救国の英雄と持て囃された相川は報奨金の半分程度を高須に渡す。莫大な金になるが、相川はそれよりも自社でのインフラを提供するために締結した契約の方が大きな金を生み出すことになるのでそこまで大事な物ではない。


「さーて、もう夏休みに入ったし帰るわ。」

「ボケが……偶には遊びに来いよな。勝手に引っ越しやがって……」

「気が向いたら遊びに来るね~……引っ越した理由はまぁ色々あったけど業務的な面は『めいしゅ』の従業員にでも訊けば分かると思うよ。あ、後言い忘れてたけど犬養さんがいる前で俺のこと馬鹿にすると危ないから気を付けてね。」


 既に首にナイフを当てられているのにどう気を付けろと。そう思いつつ高須は犬養に次はないと警告を貰ってから相川と犬養を見送った。










「さて、楽しい楽しいはずだった夏休みが始まるなぁ……仕事漬け確定だけど。」

「そうですね。」

「何が東の友だ……かったるい……でもあそこ定期的にクーデター起きるし霊氣を取るにはいい場所なんだよなぁ……しかも扉まであるというおまけつき。」

「そこなんですが、私もそろそろ神化したいのですが……」


 高須の事務所から学校に戻っている犬養の車の中で相川と犬養はそんな会話をしていた。相川はそれに応じる。


「ふむ。まぁ高須さんに動きを気取られない程の気配コントロールと戦場で見せてくれた動きがあれば神化できそうといえばできそうだな……」

「では。」

「そうだね。なるべく俺と一緒に行動してくれる? そっちの方が色々やりやすいし。代わりに修羅の国に何回も行く羽目になるけど。」

「喜んで。」


 常に無表情で冷静な声音の犬養がそれと分かる程喜んでいる姿を見て相川は軽く訝しみながら尋ねる。


「……そんなにこの世界から出たいのかねぇ? 結構大変なんだよ?」

「勿論です。社長の恩に報いること。それとやはり、魔法は使ってみたいものですよ。空も飛べるんですよね?」

「そりゃ、飛べるが……この世界だってやろうと思えば疲れるけど飛べるだろうに。」


 ジャンプして落下する前に空気が固まる程の圧力を一瞬で蹴り出して生み出し、それを足場にして飛び上がり同じことの繰り返しで動く。そんなイカれた超理論が通じる世界だ。やろうと思えば今挙げたやり方と別の方法でだってある。


「それはイヤです。」

「まぁ俺も面倒臭いからあんまりしたくないけど。」

「これからもよろしくお願いします。」


 この世界から出て行くつもりのある人物の頼みに相川は何とも言えない顔で頷くのだった。そうこうしている内に車は学校付近まで進み、相川はそこで見覚えのある人物の姿を視認した。


「……あの金髪は……」

「クロエさんですね。」

「学校に何か用があるのかね? お礼参りとか? まぁ会ったんだから挨拶くらいはした方が良いか……」


 どちらにせよそろそろ停車する所だったので相川は犬養の車から降りて中学校の制服姿のクロエと見知らぬ同じ服装の女子生徒の方を見て少々思案した。


「いや、他に人がいるな。俺と居たという過去の汚点は抹消すべき存在かもしれない。ここはやはり挨拶なんぞせずに裏ルートで行くべきか。」


 遠くからこちら目掛けて走ってくる存在に気付きながら相川はそう言って学校を囲う木々の上に飛び乗り、その奥にあるネットを支えるポールの上にまで飛び上がろうとして走ってきた存在に下から呼び止められる。


「ししょー! 私です! クロエですよ! 降りて来てください!」

「……まぁ呼ばれたなら仕方ないか。」


 ネットのフレーム部分に足をかけて更に上に上がろうとしていた状態から身を翻して地面に着地する相川。立ち上がるとほぼ同時にクロエに抱き着かれた。


(……身長、負けた……? い、いや、まだギリギリ勝ってるな。)


 中学生になってから身長が伸びていたらしいクロエに物理的にも熱い抱擁を交わされながら相川は何かよく分からないがはしゃいでいるクロエの奥で呆れている女子生徒に視線を向ける。


「あ、どうも……師匠くんだよね? クロエちゃんからいっつも学校で聞いてます。」

「……何か色々おかしいんですが。えぇと、まぁ一先ず初めまして。相川です。」


 悪評でも流されているのだろうかと相川が首を傾げようとするもそこにはクロエの頭がある。その様子を見ていた彼女は笑った。


「いや~中学生にもなって小学生に熱上げるとかクロエちゃんって正直ヤバいんじゃないかって思ってたけど……まぁ、思ったより普通の子なんだなって思いました。」

「……何の感想なんですかそれは。後『クロエはいい加減暑いから離れろ!』」

「! 懐かしいですねぇ……『わかりました。』」

「本当にドイツ語喋れるんだぁ……スーパー小学生だねぇ……」


 真夏と言うのに冷たい眼差しをしていたクロエの連れの視線の温度が上昇し、彼女は相川のことを見てある程度納得したのか用事は済んだと去っていく。そしてクロエの汗にまみれた相川はクロエを連れて家に帰ることになるのだが……


「……何で帰って来たの?」

「何でこの家にいるんですか?」


 当然のことながら瑠璃とかち合うことになる。互いに睨み合ってから軽く攻撃を交わすと瑠璃はクロエの成長の伸び代に、クロエは瑠璃の能力の高さに驚きつつ相川を見る。


「仁くん。クロエちゃんはもう中学生だから小学校に入っちゃダメなんだよ?」

「師匠。何でこの女が私たちの家に住んでるかのような状態になってるんですか? 師匠の防御力は0なんですか?」

「瑠璃、別に部外者でも入校許可書があれば別に入れる。それで、クロエの説明は……まぁ、色々言いたいことはあるだろうが一言で済ませると、色々あった。」


 それ以上は互いに話し合って勝手に納得しろと言わんばかりの投げやりな返事にクロエと瑠璃は一先ずどちらが強くなったか決めるためかどうかは分からないが外に出て争いを始めた。


「……あ、薬草の群生地に足踏み入れたらその足切り落とすからな。ちゃんと気を付けて戦えよ。」


 相川はそう言って二人を見送ると修羅の国に関する新しい事業を始めるために御紋小学校にいた知人たちと連絡を取り、その会社と取引を開始するのだった。




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