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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
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お仕事

 5年生もそろそろ終わりに差し掛かった頃。相川はこの小学校の間に必要な単位を卒業試験を除いて全て取り終ってしまった。その為、忙しそうに単位を取得する身の回りの人々を尻目に学校をしばらく出て自宅に帰ることにしていた。


「あー……確かに興味を煽る様な文にしろとは言ったがこれじゃ煽り過ぎ。一応、公的機関と連携してるプロジェクトなんだから相手の想像を書き立たせすぎて実際できませんじゃ信用問題になる。もうちょっと抑えた表現にしてくれ。」

『わかりました。他には?』

「……そうだな。文章の構成とかはいいにしても、ちょっと用語が多いか? 出来る限り一般化した方が良いかもな。それくらい。」

『承りました。失礼します。』


 電話を終え、相川は自宅での仕事を終える。今日の午後の予定はこの辺りを占める組織との対談だ。今年の夏もお祭りをしたのだが、その取り分が少ないと強請りに来ており、更には今年から開催される予定の秋の収穫祭の取り分を多目に寄越せ。さもなくば妨害するとたかりに来ているのだ。


「……まぁこれ終わったら今日の業務は終了だしさっさと済ませてトレーニングやってから適当なことするかね……」


 別に金ならあるが味を占められても困るし、ムカつくので相川は着替えて外に出た。下に降りるとそこには高須の姿が。


「よぉ相川。今日はどちらに?」

「……あんたが懇意にしてる組の幹部さんのところだよ。そっちこそ今日はどんな感じで?」

「ま、医者の裏の顔っつーか……お前も知ってる傭兵業の仕事でねぇ……」


 笑う高須。そういうことかと相川も構えるが高須はひらひらと手を振った。


「いや、喜べ。俺はお前の味方をする。……正直、あの組はもう終わってるからなぁ……古いタイプのやり方だから時代についていけてない。優秀な人材はお前の所に取られてるし……」

「ふぅん……まぁ、それならそれでいいけど。」

「可愛くねぇの。もっと喜べよ。高須お兄ちゃんありがとーって。」

「……ロリコンと思ってたがショタも行けるのか……俺にそんなこと言われて嬉しい?」


 シリアスな話は終わってその後は軽口の応酬に変わる。相川の目の前で確認を受けた依頼書を引き裂いて相川の護衛という役で交渉を締結して相川は高須の車に乗り込み、目的地に着くまで会話した。


「……お前の去年の交渉、見させてもらった。」

「去年の交渉……あぁ、腸縄跳びか。」


 相川は去年、お祭りが出来なくなったら遊ぶ場所がなくなると言ってそうなったら仕方ないからここで遊ぼうかなと告げ、錯乱状態にした男に自ら割腹させると糞便を自らの手で部屋の隅に絞り出させ、それを捻って縄にし、縄跳びを開始させた。


 恐慌状態に陥る現場で何をとち狂ってやがると悲鳴交じりの声を上げた交渉相手の男に割腹した男が嫌な笑みを投げかけて「何を慌ててるんですか? ただそこのガキが俺の腸で縄跳びをしてるだけじゃないですか。」と答え、そこで我に返ったらしく狂乱し、自殺した時点で交渉が結ばれた。


「正直人間の所業じゃねぇと思ったが……それより好奇心が勝ってな……アレはどうやってやったんだ?」

「……いや、教えてもいいけどやるの? アレはあんまりやらない方が良いと思うんだが……後ついでにある程度を常用して脳が委縮した相手じゃないと使えない。」

「ふむ。成程……やはり条件があるか……いやでも、戦場じゃ割と使われてるしいけなくもないか……?」


 その後もしばらく相川の会社の人材についての話や新薬作るかどうか、また相川が提携している先との連携から下世話な話まで取り留めのない会話を続けながら二人は目的地に着く。


「さて、着いたけど……どうする?」

「アポイント取ってあるけど気配消して交渉相手の所まで乗り込む。この際全員闇の中に葬り去ってもいいんだが……」

「他の組が敵対してくる可能性があるからやらないのか?」

「……まぁそんなところだな。じゃあ行こうか。」


 そう言うと相川は気配を消し、足音もなく人々の死角から風も全く起こさずにカメラにも映らぬ速さで乗り込んで音もなく扉を開いた。扉の向こうは普通の会社と言われてもおかしくないようなデスクが並んでおり、通常ならば仕事を行う社員たちが座って交渉している席に怒声を上げている組員ややけに深刻な声音で話している人々が居た。


(……まぁそんなに本気で気配消さなくてもバレなかったかもなぁ……)


 そんなことを考えながら奥の部屋に移動する相川。途中で何か他の場所より浮き出ている気がするタイルを発見して周辺に瞬間接着剤を塗ってあげたりしながら音もなく奥の部屋に入った。


(……真昼間からお盛んなことで。確かに午後からのアポだったが何やってるんだか……)


 交渉相手はどこの学校かは知らないが制服を着て怯えながら嫌悪感に耐えている女性を相手にベッドで奮戦していた。相川は取り敢えず無音で撮影してから脱ぎ散らかされている男の服を瞬間接着剤で地面にくっつけておく。


(……気付くかなぁ?)


 何だか忙しそうだったので男で遊んで時間を潰す相川。棚の上に置かれている高そうな本革の時計を見てそれを手に取り重さを確かめるとそっと瞬間接着剤を塗って男の肩に慎重に張った。高須はそれを見て笑いをこらえている。それを見て次は高須の番だと相川は視線を送る。高須は部屋の中を見渡した。

 その間に女性は男の顔から視線を逸らしていた顔を別方向に向けて不自然に張り付いている時計を発見して目を見開いた。何か口に出したが、その前に男が気持ち悪い睦言を吐いて掻き消される。


 高須が選んだのは何かの鍵だった。重さを確かめ、相川が時計を張った方向と逆の肩にそれを張ろうとして首を別方向に傾けた女性と目が合う。


 しばしの空白。女性が叫ぶ前に高須は急いで鍵を接着すると身を隠した。しかし、その女は叫んでしまう。その声に釣られて男も顔を動かし、異変に気付いた。


「なっ、何だこれぇっ?」

「思いの外可愛い声してますね。どうも、上がらせてもらってますよ。」


 あーあ、何バレてるんだよ。と言わんばかりの表情を向けている相川の前で高須が口を開く。尚、相川はまだ気配を消したままだ。男は制服を乱した女性から身を離して全裸に鍵と時計という新時代のファッションで高須に応対した。


「何しに……?」


 凄味ながら応対しようとして地面の洋服を引っ張り抵抗を受け首を傾げる男。高須は笑った。


「あ、接着剤でくっ付いてます。」

「何しに来たぁっ!」


 本当に何しに来てるんだこいつと思いながら怒声を上げる男。組み敷かれていた女性は涙を流しながら血の付いたシーツを呆然と眺めている。高須が何しに来たんだっけと思いつつ相川を視線で探すが相川はいない。本当に何しに来たんだろと思って高須は一先ず相川の用件を告げることにした。


「えーと? 滅びろだったかな……」

「カチコミかぁ? おもしれぇ……お前、嬲り殺してやるよ。」


 せめてズボンくらい掃こうとしてそれも接着されており地面と取り合いをしている男。そちらの光景の方がよっぽど面白いと思わなくもない高須の下に相川が戻ってくる。


「テメェ! めいしゅの……!」

「どうも。最初は交渉しに来たんですが……成り行きであなた方の組織を解体することになりました。どうぞよろしくお願いします。」


 笑顔でそう告げ、丁寧に腰を折った相川。その宣言通り、この組織はその日中に圧倒的な暴力によって再起不能にされるのだった。




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