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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
125/254

授業の評価

 添い寝を希望されて翌日にこいつは俺のことを食い物だと思ってるんじゃないか。いや、食い物にしているんだなと相川が考えて日が流れて5年生も終盤。相川たちは無人島に来ていた。


(……本っ当こいつら無人島とか森とか好きだよなぁ……アウトドア大好きなんだろうけど、俺はなるべく家に居たい派なんだが……)


 20人ほどの同級生たちがいる周囲は気合が入っている。引率の権正も何やら元気だ。相川は引率が権正など嫌だったのだが、本来誰も引き受けたがらない引率の仕事を自ら引き受けた権正に特に文句は出ず職員会で多数決により簡単に決まってしまったのだ。


「よし、ではこれより試合を開始する。2回戦までトーナメントで行うが1回戦負けは野宿だ。それ以降は普通に宿泊施設に入ることが出来る。そして、トーナメントの2回戦で負けた子は食事は自給自足。それ以降の勝ち進んだ子はその食事や泊まる場所の等級を賭けて、総当りで優勝者を決めてもらう。」


 権正は愉しそうにそう告げるが相川は不満だ。理由は簡単。プログラムにそんなものは存在しておらず普通にこの島で過ごすことが出来れば単位が貰えたはずなのに変なことを開始されたのだ。


(……面倒臭いし1回戦負けで野宿した方が楽だな……)


 準備が整えられていく中でDクラスということで除け者にされている相川はそう考えた。権正は何やら期待しているようだがこちらが答える義務はない。遊神一門も煽って来るが面倒なのでスルーだ。


「おっ! 奏楽、1回戦から相川だな!」

「フン……楽しみに待ってろ。」

「んー……2回戦で奏楽くんか仁くんか……」


 相川はどう考えても労力と結果が会わないので1回戦から不戦敗にすることにして何やら楽しそうな権正にゲリラ戦を仕掛けるか考えておいた。







「よし、瑠璃の勝ちだ。次、奏楽と相川は構えろ。」

「……構えろって言われてるだろ。構えろ。」

「これが俺の構えだ。」


 一瞬で勝利を得た瑠璃。その次の相川と奏楽の戦いで権正は何やら期待しているようで少しだけ興奮しているのが窺える。奏楽はそれを特にかわいがられている教え子と言うことで期待されていると受け止めて相川のことを絶対に倒すと闘志を燃やすが相川は審判も向こう側という……ね……と最早帰りたい気分だ。


「チッ……それで負けても言い訳させねぇからな!」


 構えない相川に奏楽が苛立ち、権正に視線を送る。権正も相川に僅かな苛立ちを滲ませる視線を向けるが相川はどこ吹く風とやる気を見せない。仕方がないので権正は開始させる。


「……始め!」

「おい、言い訳されても面白くねぇから先手は譲るぞ。」

「お、今度はちゃんと降参させてくれるか。じゃあ参った。」

「は?」


 昔、参ったと言うのに攻撃してきたことを根に持っていた相川は警戒をしながら敗北宣言をする。それを聞いて思わず声を漏らす権正と舌打ちする奏楽。


「お前……マジでムカつくな!」

「そうか。で、降参したから後ろから攻撃するなよ?」


 相川は苦り切った顔をしている権正に視線を向ける。未だ奏楽の勝利宣言を行っていない権正に相川は先手を打って告げた。


「学校のカリキュラムにこの試合は入ってないから別に棄権してもいいですよね? この授業は生存できるかどうかが問題なのであって試合で勝つかどうかは問題に含まれてないですし。」

「……Dクラスは、そうだが……お前は評価を……」


 そこまで言って権正は相川の顔を見てどうやっても無駄だと諦め、奏楽の勝利宣言を行う。相川はそれを聞きながらさっさとこの場を後にしてしまった。


「む~……何で戦わないのさぁ……」

「スカしてるのが本っ当に気に入らない……あーっもう! 瑠璃、次はちょっと激しく行くぞ!」

「うん……」

「クロエは去年きちんと戦って毎回上位に入っていたのになぁ……あいつは、ほんっとうにどうしようもない……」


 瑠璃や奏楽、権正の嘆きや苛立ちは潮風に飲まれて消えて行った。










「……つーかさぁ、無人島とか好きな割にアレだよね。野宿しないの?」


 悪口などを言われている相川だったが、本人は特に気にせずに来た方面とは別の海岸を目指して移動していた。理由はいちゃもんつけられたりするのが面倒だからだ。


「さて、今の内に寝床を作りますかね。ついでに飯はどうしようかな……持ってきてはいるが獲ってもいいしなぁ……まぁ送迎の船が難破する可能性もあるし確実に補給できるのはとっておくか……」


 海岸近くの木を斬って地面に等間隔で突き刺し、そうそうなことじゃ倒れないように石などでそれを抑えて横一列と斜めに樹皮の縄で固め、左右の壁にも上から樹皮の紐のようなものを通し、大型の葉を乗せて日除けを作る。


「……まぁ、大丈夫だろ。」


 高さ1m程、幅も1mほど、奥行きが2m弱の壁が半端なく手抜きな簡易小屋を完成させて相川は木の枠組みに樹皮を巻き付け、枠組みに足を着けたベッドを作って入れる。


「……まぁ、寝れるだろ。」


 適当だ。後は近くに垂直型爆発の地雷と踏むと空気の力で膨らんだ槍がスプリングで突き出て来る相川謹製のトラップを家の周りに配備して食料確保だ。


「ここって南の方だしなぁ……何が釣れるんだろ……まぁ毒あっても食えるけどね。」


 別に食べようと思えば何でも食べられる上、食べようと思わなければこの島に滞在中くらいの間は余裕で何も食べずに生きられる相川は釣り糸を垂らしてのんびり釣りを楽しむ。


「……おっ、ミノカサゴじゃん。刺されたら少し痒くなるんだよねぇ……」


 普通激痛だがまぁ気にせずに捕獲。そして次は割と大きな魚が釣れた。


「おぉ……オニダルマオコゼ……ココがどこだか知らんがこの辺でも釣れるのか……?」


 同じく毒持ちの魚を釣って相川はまぁそれでもヒレを何とかすればいいやくらいで済ませて釣りを続ける。そしてアカエイが釣れた。


「……この辺の魚、擦れてないのはいいんだが……何でこう毒ばっかりなんだろ……? まぁアカエイとか美味しいからいいんだけど……」


 肝を潰して醤油と砂糖、みりんに酒で煮るかと考え、全部煮付けにして適当に頂くことにした相川。気分はキャンプだ。


「まぁヒレとか針に気を付ければいいだけだから楽だけどね……」


 これまた適当に地面に突き刺した木のテーブルで解体し、面倒臭いのでエイの味に全てを染め上げてしばらく放置。仕事は家に置いて来たので特にやることもなくボケっと気配察知する。


(何か来るな……まぁ、これだけ強い氣だし瑠璃だろうけど……)


 食い物の匂いを嗅ぎつけてやって来たかと相川は思いつつ特に何もしない。程なくして瑠璃がこの場にやって来た。


「……何か危なさそう。」

「よく分かったな。トラップまみれだ。……それで? 何か用?」


 相川の居住エリアに近付くや否や危険を察知した瑠璃に苦笑しつつ相川は用件を尋ねる。すると瑠璃はしばらく言うかどうか迷ったようだが口を開いた。


「ねぇ……その、ボク、クロエちゃんが卒業したらさ。仁くんのお家に行きたい……」

「いいよ? 来れば?」

「いいの? やったぁ!」


 別に遊びに来たいなら来ればいいし、いつもそうしていた癖に何を改まっているのだろうと相川は首を傾げるが、瑠璃はその気配を若干察しつつも何も言わずに笑ってお辞儀する。


「じゃあ、よろしくお願いします!」

「……それだけか? 本当はこれ食いたいとか……」

「あ、うん。お泊りの所から食器持って来たよ。あと、ご飯も。」


 そっちには遠慮しないのか……本当に食い物扱いされてるなと相川は思いつつまぁいいかと流しておくことにした。




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