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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
122/254

巫女瑠璃さん

「……師匠。こういう服が好みなんですか?」

「説明が面倒だからそういうことでいいよ。」


 一度目に見えてしまったことから何もなくても何かがいる気がしてしまい、もう怖くなって仕方がない瑠璃は目を瞑って学校を破損させたりしながら急いで相川の下へやって来て着替えさせられた。相川と一緒になってからは目を瞑っているのも目を開けた瞬間に目の前に霊がいるのではないかと怖くなったのでもう離れなくなっている。


 そんな瑠璃さんの現在の格好は白小袖に緋袴。つまり、巫女装束に身を包まれており、ただでさえ愛くるしいのに衣装効果で1.8倍の可愛らしさを誇っていた。因みに緋袴は舞用の足が動かしやすい馬乗袴になっている。


 そんな彼女が周囲に怯えて軽く涙目で身を縮め、上目遣いになって助けてほしいと懇願している様子は通常の、いや普通より身持ちの硬い男であっても倫理と法律をぶち破って桃源郷を目指さざるを得ない。


「こ、これでホントに大丈夫なのぉ……?」

「……まぁ見えることは見えてしまうがさっきみたいに金縛りにあうことはある程度防げると思う。まぁこれでだめだったら千早も着た方が良いな。」


 相川は鶴と松が描かれた千早を瑠璃に見せながらそう言う。クロエは何でこんなもの持ってるんだろうと思いながら相川を見ていたが瑠璃はそんなことはどうでもいいと飛びつく。


「最初からそれもちょうだいよぉ……」

「これはちゃんとした神事とかの用事がある時じゃないと何かイヤ。」

「やっぱり趣味なんじゃ……」

「服装云々と言うより何となく感じる宗教感覚的な問題。まぁある意味趣味と言えなくもないかもな。」


 やはり趣味なのか。相川は服装が問題ではないと言っているが何故巫女装束を持っているのかの説明にはなっていないとクロエは思い、何なら自分が巫女装束を着てやろうかと思っている中で相川は瑠璃に説明を開始した。


「で、着替えたところでこれから霊についての説明をする。この家には俺が居るからまぁよっぽどの霊以外は寄って来ないし、落ち着いて良いぞ。」

「……もうボクずっと仁くんと一緒にいるぅ……」

「却下。ではまず敵を知り己を知ろうと言うことで霊について。」


 何気に却下されたことに傷付く瑠璃のことを無視して相川は説明を開始した。その間にクロエは飲み物の準備をしにお湯を沸かしに行った。


「まず、凄まじく適当に見える人に近付いて来る霊を分類すると3種類に分かれる。一つは現状が良く分からずにやっと自分のことを認識してくれる人が来たから何とかしてもらおうというタイプ。これは比較的霊になってから日が経っていない奴が多いな。」

「そういうのにはどうしたらいいの?」

「後でまとめて説明する。」


 恐々と言った声音で尋ねてくる瑠璃の質問をバッサリ切って相川は続ける。


「次、現状を理解した状態で折角霊になったんだから脅かしてみようかなとかそんなノリで来る奴ら。これはさっきのより性質が悪い上に日をそれなりに経験してるから自分の特性を生かしてくる。」

「師匠は紅茶で瑠璃さんはココアで良いですか?」

「ありがと……」

「いーよ。で、最後。生者に恨みを持って呪い殺すか何らかの害を及ぼそうと寄ってくる霊。これは割と大変。」

「どうしたらいいの?」


 3つ出そろったんだから早く対策を教えて欲しい瑠璃に相川は薄く笑いながら答えた。


「まぁ、幾つか方法はあるが……瑠璃に出来そうなのは自分可愛いですよアピールを全力で頑張って昇天させることかなぁ……?」

「師匠、瑠璃さん本当に怯えてるんですからちゃんと教えてあげてもいいんじゃないですか?」


 巫女装束が好きなのは分かったから哀れな瑠璃にちゃんとしたことを教えた方が良いんじゃないか。もう何だったら私が巫女装束で色々やって可愛がられるからというニュアンスを含めてクロエが相川にそう言うと相川は「じゃあ」と切り返した。


「瑠璃に俺みたいに消滅術式とか霊氣での強制昇天。もしくは説法などで霊を説得する技量や悪夢の拷問で生きていたくないと思わせるほどの残酷さ、それかあの世からの迎えを呼び寄せる能力があると思うのか?」

「……いや、師匠そんなの出来るんですね……何か師匠なら本当にやってそうですけど……他の、も……厳しいですか……」


 クロエは諦め、瑠璃も何言ってるのかよく分からないと言うことで相川の言う通りにすることにした。


「じゃあ瑠璃、瑠璃の推しどころ……チャームポイントはどこ? 最近人から可愛いって褒められたところでもいいよ。」

「………………おしり?」

「……ケツを推して行ったら霊だけじゃなくて教師とか変態が寄って来るな……」

「何でお尻なんですか……瑠璃にはもっといいところがありますよ?」


 瑠璃の返答に何とも言えない表情でそう返す相川とクロエ。瑠璃は小首を傾げながら説明した。


「彩香ちゃんがね、ボクのお尻気持ちいいって言ってたの。枕にしたいって。」

「……それは、どういうリアクションを取れば……」


 クロエと相川で協議が始まる中、瑠璃はソファに横になって首だけ相川に向けて言った。


「お尻、枕にする?」

「……瑠璃、恥じらいって知ってる?」

「うん。男の子をゆーわくする時に必要な物でしょ? 彩香ちゃんがね、何かもじもじしながら言うといいんだよって教えてくれた。」

「……アウトなんじゃないですかね?」


 協議の結果、彩香という少女は少々瑠璃に変なことを吹きこんでいるらしいと言うことが確定した。しかし、まぁ面白いので放っておく。


「まぁ尻を推したいのは分かったが、無難にルックス及び声と仕草にしておくか。」

「全部じゃないですか。」

「まぁ正直何もしてなくても可愛いし。」

「えへへ~瑠璃可愛い? 可愛い?」

「うざい。で、次に……」


 一瞬で落ち込んだ瑠璃。下を向くと何かと目があった。


「ひにゃっ!」

「うわっ……何だ?」


 文字通り飛び上がって相川に飛びつく瑠璃。相川が至近距離にある瑠璃の顔を見ると瑠璃は何故かキスして来た。


「何で!?」


 クロエが叫ぶと瑠璃は顔を真っ赤にして誤魔化す。


「違う! 間違えたの! お化けが部屋の中に居たの!」

「……それで何でキスに……霊? あ、ホントだ。この前の奴かな? 消え失せろ。」


 相川が気付いてそちらに指先を向けた瞬間、断末魔を上げるナニカ。しかし、瑠璃は木にしがみつくセミのように相川から離れない。


「降りろよ。」

「ふぁ、ファーストキス……」

「お前5歳くらいの時キス魔だったじゃん。奏楽とか遊神さんに「あれはナシなの! もう!」……そんなもんかい。」


 自分がしでかしたことに真っ赤になっていた瑠璃に言葉の冷や水をかける相川。瑠璃は小さい頃のことを思いだして不貞腐れつつ相川から降りる。そして絶対零度の視線を瑠璃に向けるクロエに気付いた。


「……このビッチ……」

「ビッチじゃないもん! ボクちゃんと一途だし!」

「可愛い顔してやることはしっかりやってるんですね……師匠。こんなの放っておいて私に巫女装束を着せてもいいですよ?」

「……いや、確かに昔は巫女装束にそういう意味もあったらしいが……まぁ今は置いといてだ。瑠璃のアイドル計画的なのをやって霊どもをまとめて昇天させよう。」


 何がどうつながるのか瑠璃とクロエにはよく分からなかったが相川が言うならまぁやるかというノリで説明を受け始めた。




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