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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
116/254

特になにも

「貴様! 本国は……」


 先程まで瑠璃と会話をしており眼を背けた男が相川の姿を視認した瞬間に銃を構えながら相川にそう尋ねるがその前にこの場に居たアンドロイドたちが全滅した様子を受けて絶句してしまう。


「いやぁ~……最新式ですか? 魔素を燃料として動くのではなく魔素自体を循環させて動く……いい仕事してますねぇ……」

「化物め……何故、こんなことを……」

「理由はまぁ特に何もないけど強いて言うなら化物をこんな世界に呼び込む方が悪い。しかも拘束してエネルギーリソースの為だけに使おうなんざ千年早い。俺を糧にしようとしてたからその仕返しだよ。」


 足元に転がっている今まさに瑠璃を殺そうとしていたアンドロイドを踏み躙りながら相川は笑い、真愛と瑠璃の縛めを解く。二人は相川に感謝しつつ瑠璃が軍人と相川の間に、真愛は相川の後ろに立った。


「相川さん、あの子酷いですのよ。あなたのことを売って自分は悪くないと……」

「ねぇ、あんまり殺さないであげてよ。この人、ボクたちと戦おうとしてなかったみたいなんだよ?」


 同時に告げられた言葉に相川は鼻で笑う。


「瑠璃は年上好きか。そんでもって真愛、この場に俺が来なかった場合は俺は死んでるってことだから売るべきだし、この場に来た場合は俺を売った相手は皆殺しだから売っても問題ないんだ。だから売る方が正しい判断だな。」

「ボク、別に年上好きじゃない……」

「間違ってますわ。少なくとも私は友人を売るようなまねをしたくはありませんもの!」


 両者の返答の内、真愛の言葉を聞いて相川は逃げようとする軍人たちを魔素で抑えつけながら不思議そうに受け止めた。


「へぇ~……変わってるねぇ。俺と友人とは。でも俺もう人間辞めたけど。」

「だったら友達です。今日、ここでの恩義も踏まえて私はあなたのことを大事にします。そこの方と違って!」

「む……ボクだって大事にしてるもん!」


 真愛に睨みつけられ、反論する瑠璃。それを相川は生ぬるい目で見た後特にコメントなしで別の話題へ転換する。


「まぁいい。取り敢えず帰る方法を見つけたから俺はもう帰るけど、どうする? 真愛は帰るだろうけど瑠璃はそこの人と仲良くやってる?」

「何でボクだけ置いてこうとするの? 意味わかんない。」

「……置いて行かれても仕方ない事してますからね? 顔だけ良くても問題ですわね……成程、私は人のことを見て学びました。」

「何なの? さっきからさぁ……ボクが何か悪いことしてるならはっきり言ってよ。ダメならダメって仁くんが言ってくれるんだから。じゃないとボクも何が何なのか分かんないよ。」


 真愛は瑠璃の言葉の意味が分からなかった。少なくともさっきまで全ての罪を相川に押し付けている奴の台詞ではないだろうと睨むが瑠璃の怒気に黙って怯えて相川にしがみついてしまう。瑠璃はそれが更に気に入らなかった。


「ねぇ、何で黙ってボクの「そういうのは後でやれ。」……うー」


 瑠璃が軍人から離れて真愛を掴みにかかろうとするが相川がそれを制して魔素で捕縛した軍人たちを指しながら瑠璃に尋ねる。


「……それで、瑠璃はどうしたいんだ?」

「帰るよ! 何その質問!」

「確認だ。まぁお前の愛しの奏楽君の方が顔良いもんな。」


 何で奏楽の話題が出て来たのか瑠璃には少々理解できなかったが、顔がいいことは確かなので一応頷いておく。それを見て真愛は瑠璃を毛嫌いする眼で見て相川の後ろに引っ込んだ。


「……まぁ何でもいいけど。」

「可愛いのは認めますけど、嫌な子ですわ……」

「だからぁっ! はっきり言ってよ! 何なのもう!」


 瑠璃が怒って真愛を捕まえようとするが相川が間に入ってそれを阻止し、瑠璃に尋ねる。


「それより、お前はここにいる人たちに挨拶とかしないでいいのか?」

「あっ、そうだね……んー……特に何もないかな? ばいばーい。」

「さっきまであんなに仲良くしてましたのにね……」


 真愛の言葉に瑠璃は反応して睨むが真愛の前に相川が居て何もできない。瑠璃は不機嫌になった。しかし、そんなこと相川には関係ないのでさっさと帰る準備に入った。


「ねぇ、仁くんボク何でその子に怒られてるの?」

「今忙しいの見てわかんねぇの? お前置いて行くぞ?」

「う、ごめんなさい……」


 空気も読めないし子どもっぽい。こんな子が我が物顔で相川を独占しようとしているなんて真愛には許されないと思った。


「……相川くん。友達付き合いは考えた方が良い「ねぇ、俺今忙しいから話しかけないでくれないかなぁ? 両方とも喧嘩売ってんの?」……ごめんなさい。」


 心配している真愛の思考など知ったことではない相川は帰るために術式を組む。そうすると鈍色に輝く扉が相川の目の前に現れて相川は苦笑する。


「不味そうなスパゲッティだこと……まぁ改良してる暇はないからさっさと組み直すが……」

「スパゲッティ? そう言えば瑠璃お腹空い……」


 相川の言葉に反応しそうになって瑠璃は慌てて口を両手で塞いだ。その動作もわざとらしさを感じさせない物で可愛いと思ってしまった自分が憎いと思いつつ真愛は相川のことを見て……その奥で相川を何とか狙撃しようとしている軍人に気付いた。


「危ない! あっち!」

「ん? あぁ、あの銃なら効かんな。神経毒が塗布されてたから最初は死ぬかと思ったがもうしこたま撃たれたから無駄。」

「え、だ、大丈夫なの?」

「あ? お前に心配される筋合いないんだけど。つーかそろそろ書き直しで忙しくなるから黙ってて。」


 他人の書いたコード、しかも下手くそがやったものなんざ見たくもないと思いつつ相川は黒猫君たちのために帰ろうと頑張り始める。その間に何度か銃声が響いたが相川は無視した。


「……うーわー怠ぃ~今日はここまでにしようかなぁ~……」

「血、血が……大変だよ……」

「でも帰らないとなぁ……この世界楽しくねぇし……まだ向こうの世界の魔素島の方が魔術使えるし……ゴミだよな。代金代わりにリソース搾り取ろう。」


 狼狽える小娘どもを無視して相川はリソースと呼ばれる魔素や氣、エネルギーと物質に分化する前のナニカを吸収して傷を修復する。次の瞬間、転がっていたアンドロイドが崩れ始める。


「な、何が……」

「崩壊現象。この世界の魔素からなくなっていって、後20年もすれば世界ごと滅びるよ。そうなったらこの世界の均一化されたエネルギーを俺が有効活用するから安心してくれ。まぁお前らその時は死んでるけど。」

「何を……」


 軍人の内、相川の近くに居て攻撃を受けた分だけ嫌がらせをされていた男が呻くようにそう言うが、相川は取り合わずに扉を開いた。


「よし、まぁ行き先はまぁ多分別荘の近くだと思う。真愛、行こうか。」

「はい。」


 相川は真愛の手を取って扉に近付く。瑠璃も手を繋ごうと待っていたが相川は瑠璃の方には行かなかった。瑠璃は怒りながら相川が待つ扉の方へと進む。


「何でボクの所には来ないのさ。待ってたのに。」

「せっかく俺が何かこの辺で転がってる奴らと会話でもあるかなと気を遣ってやったと言うのに何だその言い分は。」


 情緒不安定かよと相川は面倒臭そうにするが、一応こんな見ず知らずの場所に飛ばされていきなり戦闘になったことなどを考えてある程度気を遣う。


「じゃ、よい終末を。」


 そして一行はやっと元の世界へと戻ったのだった。




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