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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
105/254

相川お悩み相談室

「チッ! 明日からやろうと思ってたのに……」


 相川は舌打ちしながら留学初日の深夜の空を飛んでいた。闇が辺りを覆っており、自らの姿はほぼ確実に見えないだろうが相川は気配も消して急いで現場に急行する。


(……まさか児ポ好きの屑が今日決行するとか……全く、常葉ときわさんは運がいいのか悪いのか……)


 相川が来てからたまたま防ぐ気の時の出来事で未然に防げてよかったのか、それともそう言った行為に遭うこと自体が運が悪かったのか。そんなことを考えながら相川は会社の従業員たちが待っていた場所に舞い降りてハンディカメラを借りると覗き見た。


「アウト。録音は?」

「そりゃもうばっちりですよ。」

「下手な証拠だと揉み消されるんで万全の態勢を整えてあります。」


 尤も、常葉父は自分でも撮影しているので必要ないかもしれないですけどねと言いながらオペラグラスを降ろす従業員の言葉を受けて相川は頷く。


「よし。突っ込んだ時点でこっちも突っ込むぞ。膜が傷ついたら可哀想だから入った瞬間にな。」


 端的な打ち合わせを済ませると相川たちは突入準備に入る。中では父親が娘に自慰行為を強要して撮影している状態だが、その撮影者を撮影している状態で待機していると動きがあった。


「角度的にどうだ?」

「……入ってるように見えます。」

「よし、確保!」


 相川が宙を舞ってガラス窓から突撃した。舞い散る破片の中で相川が衝撃を殺していた体勢から立ち上がると間抜けな顔をした二人は相川を見て固まっている。その結合部分付近に相川が蹴りを入れると男は情けない声を上げて跳ねた。


「うっせぇな。玉は蹴ってねぇだろうが。ギャーギャー騒ぐな。」

「な、何だ君たちは!」

「相川、くん……? どうしてここに……?」

「教室で君が助けを求めていた気がしてね。おせっかいかと思ったが来たのさ。」


 相川は大ウソをついた。従業員たちも何言ってんだこいつと思ったがまぁ見張り立ててましたと言うよりは綺麗なので流しておく。


「さて……婿養子の癖にとんでもないことやりましたなぁ常葉 誠士郎さんよぉ。どうやっても勝てない奥さんへの屈折した復讐を娘に向けてっと。俺がまだ喋ってるだろうが。」


 不埒な乱入者を排除しようと常葉父が近くにあった30センチほどの木の棒で相川を殴ろうとするも相川はそれを殴り壊して蹴り飛ばし、誠士郎を無手の状態に戻す。


「な、何だぁ……?」

「哀れな犠牲者の綾子さんの同級生だよ。……それで、どうする?」

「え……?」


 シーツを被せて相川は常葉に尋ねると常葉は呆然とした顔で相川を見上げた。それに対して相川はどうするの具体的内容を挙げていく。


「ムショにぶち込むか、家の中で軟禁生活を送らせるか、それともウチに任せるか……」


 最初二つについての想像はついたのだろう。しかし、最後、相川が言ったことだけは想像がつかなかったらしく首を傾げたので相川は邪悪に笑いながら内容を告げる。


「まぁ、殺したいほど憎いなら法的に問題ないように処理することも可能だし、一生表に出て来て欲しくないならそうしよう。他にも依頼者……今回は同級生か。同級生の頼み次第で色んなオプションをつけようか。例えば君が嫌だったことを100倍にして返すとか。」


 オイリッシュな40代の小汚い禿げたおっさんたちの夜のパーティ会場にでも突っ込んでやろうか? と笑いながら呟く相川から逃げようとして踏みつけられる常葉父。体重は大したことないが、脚力で動けないようにしている相川から誠士郎は何とか逃れようと叫び声を上げ始めた。


「強盗だ! 娘が犯されそうになってる! 助けてくれ!」

「おやおや……恥も外聞もないねぇ……」


 相川は外に感じる気配を受けながら男から離れて撮影していたカメラからメモリーカードを取り出すと男に飛び掛かられる。しかし、その奇襲は扉の向こうからやって来た2人組によって取り押さえられた。


「3年分の記録を確保しました。ついでに警備員も軽く薬を嗅がせて昏倒しておきましたので人は来ないようになっています。」

「うん。お疲れさん。こっちもメモリーカードを抑えたよ。後は綾子ちゃんの判断待ち。」

「きっ、貴様ら……何者だ? どうして私を……」


 今度は大人2人によって取り押さえられて苦しげに呻く誠士郎に相川はそう言えばと名乗りを上げる。


「あー名乗ってなかったかな? ウチは株式会社めいしゅ。代表取締役の相川と。」

「社長補佐、犬養です。」

「暗部を任されている虎居です。」 

「株式会社……めいしゅ……? な、なら取引をしようじゃないか。」

「あ、名乗っておいて悪いけど今回はクラスメイトを助けに来たから営利目的じゃないよ。というよりそろそろ綾子ちゃんも落ち着いたかな?」


 呆然としていた綾子に声をかけると彼女は熱っぽい表情を浮かべて相川を眺めていた。


「おーい? どうする?」

「……あ、あの、私にはよく分からないので母に相談しても……」

「ふむ。まぁいいよ。最悪君だけで逃げないといけない事態になったらまた言ってくれ。ウチは身寄りのない子どもを引き取る事業もやってるから……犬養、データのコピーしてる? この男が嘘を流さないように1つ証拠品を持たせておきたいんだが……」

「……はい。こちらに。」


 相川はそれを綾子に渡すと虎居に誠士郎に母親が帰って来るまで綾子の安全を確保できるように誠士郎を眠らせ続けるように指示を出して壊れた窓の方に近付いて行った。


「あっ、あの……ありがとう!」

「おう。じゃあまた明日学校で。」


 手を振って相川と犬養は窓から飛び降り、夜の闇へと消えて行った。








「さぁ、始めようか。三鷹くん。」

「っ! な、何でこんな朝から……」


 翌日の朝、家にいる全員をおいて一人だけ学校に早く来ていた相川は自分の席に悪戯を仕掛けようとしていた同級生の男子生徒を前にして邪悪な笑顔を浮かべていた、

 天井から降って来た相川に三鷹という少年は腰が引けており、手に持っている瞬間接着剤が所在なさ気な雰囲気を漂わせる中で相川は掴みから入る。


「ま、君も大変なんだねぇ? 両親からかけられるプレッシャーで押しつぶされそうで。」

「は、はぁ? 何のことだよ? 急に……」

「成績だけしか見ずに出来て当然と言わんばかりの母親に褒めも叱りもしない父親。点数が取れている今の内はいいかもしれないが、点数が取れなくなったらどうしようか。点数しか二人とも自分のことを見てくれていないんじゃないかって考えると他を陥れることで自分を保つしかないもんなぁ?」


 三鷹の顔が険しくなり、怯えていた状態から一転して相川のことを睨みつける。


「お前、何言ってるんだ? 喧嘩売ってるのか? 俺は空手習ってんだぞ? しかも2級だからな!」

「本当は嫌だったのになぁ? 親に言われて無理矢理通わされて上級生からは調子に乗るなと言われ、下級生たちからは遠巻きにされて孤立して大変なんだろ?」

「なっ!」


 図星を喰らって顔を真っ赤にする三鷹。それを黙って見てしばらく少し落ち着くのを待って相川は言葉を連ねた。


「まぁ君が大変なのは分かる。だが、君の両親も初めての子ども相手にどう接していいか分からずに困ってるんだよ。そして自分たちの尺度で物事を見て君にいい物をと善意で行ってるんだ。点数だって毎回いい点を取って麻痺してるだけでね。」

「何なんだよお前……」

「君は賢い。だから、両親のことを親として見るだけじゃなくて単なる人として見て行けば自ずと君がやるべきことが分かるはずだよ。親だから何も言わなくても分かって欲しいじゃなくて、コミュニケーションを取ればいいんだから。君なら出来るでしょう?」


 自尊心をくすぐる言葉を送りながら煽る。これでこの男は大丈夫だろうと相川は黙って三鷹から視線を外して席に座る。三鷹は何と声を発せばいいか分からなかったが、相川の言葉を飲み込んで自分で整理するために自分の席に戻って行った。




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