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強者目指して一直線  作者: 枯木人
小学校高学年編
101/254

引っ越し

そう言えば100話行ってたので本日は2話更新します。

 相川、クロエ、奏楽、瑠璃の4人は権正からの指令により一軒家へと引っ越してきた。


「……でっか。」


 相川の第一印象はそれだった。何故か相川を先頭にして全員入ろうとしなかったので相川が全員を伴って入るとまずは玄関からして広い間口だった。扉から廊下まで数歩歩かなければならないという旅館のような広い場所に靴箱も置いてあり、相川はそれを見て思わず呟く。


「うわ……靴箱の中に人入れるんじゃねぇかこれ……」

「おっきーね!」

「リビングはどうなんでしょうか? 早く行きませんか?」


 そんなこと言うんだったら勝手に行けよと思いつつも相川はぞろぞろ揃って廊下を進む。その時点で扉が幾つかあり、それぞれの場所を見ていくと。


「ここは……書斎か。PCとか……業務用コピー機とかあるけど。」

「広いねぇ!」

「何でこんなに大量の辞書が……あぁ、いろんな国の本があるのか……」

「娯楽本はないみたいですけどね……」


 その書斎の奥の扉を開けると寝室が二つあった。それとまた廊下に出る扉もあり、色んな所に繋がっているようだ。その廊下を挟んで向かい側にはトレーニングルームがあり、その隣が風呂。そして脱衣所と小さな洗面所を挟んで3人分くらいの洗面所。

 その向かいがトイレで、隣に3つの応接室のようなイスとテーブルのある小部屋があってその奥がやっとリビングだった。


「うっわ……広っ……」

「わーい! 走れるよ仁くん!」

「だからって走らなくてもいいんだが……」


 十名以上が余裕で入れるスペースに食卓テーブルとキッチンがあり、その奥に巨大なソファとガラス張りのテーブル。そしてテレビがあり、天井には放映器が設置されていてスクリーンまである始末だった。


「そして隣が和室……」

「……真剣だ。相川、使うなよ?」

「お前、俺を何だと思ってるんだ……瑠璃はクロエを投げない。」

『この小娘!』

「きゃー仁くん助けてー」


 畳だったからだろうか。リビング辺りで小さな声で小競り合いをしていたクロエと瑠璃が柔道ファイトを始めて相川に止められる。和室の奥に廊下があったが、そこを挟んだ先は書斎の裏にあった寝室だったのでそこは繋がっているのだろうとして一行はトレーニングルームと風呂の間にあった螺旋階段を上って2階へ行った。


「部屋が4つ……広いな……」

「何もないね。何か寂しい……」

「多分個人用の部屋だろ。奏楽、個人部屋があるみたいだから溜まったらちゃんと自分の部屋で抜くんだぞ?」

「は、おま、何言って……瑠璃たちが居るんだぞ!」


 慌てて相川の口を封じようとする奏楽に相川は嗤いかける。


「あぁ、でも下にトレーニングルームあったな。ストレス発散ならそっちでもいいか。」

「お前ぇ……分かって言ってるだろ……」


 そんな感じで各部屋の機能は見終わった。ここからは部屋分けになる。これが揉めた。


「じゃあ、まず4つの部屋割りから適当に……」

「……まずは仁くんからどうぞ。」

「そうですね、師匠からどうぞ。」

「……じゃあ、流れだ。相川から……」


 相川は別にどこも同じだろと思いつつ玄関から一番遠く、階段を上ってくる音も聞こえない場所を選んだ。その次の瞬間、瑠璃とクロエがその向かいの部屋を取ろうとして喧嘩を始める。


「むぅ! 何でマネするの!」

「真似したのはそっちです。邪魔なのであなたはここがお似合いです。」

「ヤダよ! ボクが先に選んだんだから君がそっちに行ってよ!」

「……喧嘩するなよ……」


 言っても無駄だが一応言っておく。その間に奏楽が誰も選ばなかった部屋を選ぼうとして相川に止められた。


「どうしてだ?」

「どっちかが要望を通したら次の遺恨になる。お前がケンカの原因の部屋を取ればいい。」

「なるほど……」


 そんな話を聞いていた二人は相川に宣言する。


「部屋から出て出会いがしらに瑠璃を見たら私は喧嘩を始める自信がありマス!」

「ボクだって! しかもびっくりして加減間違えるかも!」

「洒落にならんから止めろ……」


 死人が出かねない上、間違いなく家のどこかが破損するだろうことを事前に防ぐために部屋割りは後回しにすることになった。次に決めなければならないのは寝室だが、これは簡単だろうと相川と奏楽は気軽に言って……後悔した。


「寝室は1部屋2人みたいだから男女で……」

「「はぁ!?」」

「無理だよ! クロエちゃんと一緒に寝るなんて最悪極まりないよ!」

「そうです! 瑠璃なんかを寝起きに見たら寝てる間に神様の手違いで地獄に落ちたかと思って絶望の朝を迎える羽目になります!」

「何でお前らそんなに仲悪いんだよ……」


 そんなの決まっているが、二人とも口には出さない。代わりに出るのは互いへの罵詈雑言か、自分優位に進める代替案だ。


「じゃあボクが仁くんと同じ部屋で寝るからクロエちゃんは奏楽くんと一緒ね。そしたらお互いに嫌な朝を迎えずに済むよ。」

「はぁ? 私の寝起きが嫌どころか嫌悪に達しますが? 何が悲しくてこんな男の顔を朝から見なければいけないんですか。ここは日頃師匠と一緒に寝ている私が師匠と一緒に寝てあなたがそのボーイフレンドと一緒に寝ればいいんですよ!」

「ヤダよ。だって奏楽くんボクが寝てるとボクの髪の毛、変にするし。時々ボクの寝てる顔じっと見て笑うこともあって気持ち悪いし。」

「そんなの聞かされてじゃあ私が気持ち悪いのと寝ますと言うと思いますか!? 絶対嫌です!」

「……お前ら無暗に奏楽を傷つけるなよ……」


 瑠璃の気持ち悪いという言葉にぐっさり心をやられた奏楽を慰めながら相川は口を挟むが、実際寝ている瑠璃の髪の毛を弄って寝顔を見て微笑むのはちょっと……と思わなくもなかった。

 そんな相川はクロエが同じようなこと、もっと言えば起きた後の相川のベッドにダイブして転げまわったりしていることを知らない。


 部屋割りの議論は相川が霊草の手入れを毎日しっかり行って夜までに写メを送るように言っていたモノが届くまで続けられ、結局寝る場所は奏楽が和室。瑠璃とクロエが別々の寝室。相川がソファに決まり、部屋割りは妥協して相川の前にクロエ、相川の部屋の隣が瑠璃、相川の斜め前が奏楽ということになってクロエと瑠璃が斜め向かいで落ち着いた。



「あー……疲れた。明日からの学校に向けて明日は朝早くに家を出て書類を持って学校に行って……実際のルートを確認したりしないとなぁ……」


 風呂場で相川は溜息をついて天井を見上げる。濾過機能の付いているジャグジーで一般家庭に普及している物ではないよなと思わないでもないがある物は使っていくスタイルなのでこれでいいと少し思考停止しておく。しかし、その状態は外の喧騒で壊された。


「ちょっ、瑠璃! まだ師匠入ってます!」

「ボクはボクの目で見た物しか信じない!」

「脱衣所見たらわかるでしょう!? あなたの目は節穴ですか!?」

「いーの! あ、ホントに居た。」

「きゃぁっっ! な、何してるんですかぁっ!?」

「俺が訊きたいわ……」


 全裸で強襲を仕掛けてくる瑠璃とそれを止めようとしていたクロエ。呆れる相川だが目はしっかりと瑠璃から逸らしておく。しかも騒ぎに釣られたのか奏楽もこの場にやって来た。


「な、何だ?」

「殿方は見たら駄目です! 出て行きなさい!」

「いや、お前らも出て行けよ……つーかクロエの殿方って表現はどこから来たんだろうか……」

「うわーぼこぼこだ! ボクそれ好き!」


 初日から先が思いやられる日常が繰り広げられることになった。




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