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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前休暇

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「これはこれは。レイフォード様。ようこそおいでくださいました」


 屋敷に入ってすぐに、父が三人を出迎えた。三人を、というよりはレイを、だろうか。父を見たレイは首を傾げていた。


「あの……。もしかして、城から何か聞いていますか……?」

「ええ。聞いていますとも。レイフォード様が見つからない、と大騒ぎです」

「や、やっぱり、ですか……? ごめんなさい……」

「それは城の者に言っていただきたいですね。とりあえず部屋を用意させてありますので、そちらでお休み下さい」


 レイは残念そうにしながらも、大人しくメイドたちに案内されて立ち去っていった。


「さて、リリア」


 レイが立ち去った後、父がリリアへと顔を向けた。難しい表情を浮かべ、どこか困惑しているようにも見える。


「レイフォード様と面識があるのだな?」


 父の問いに頷くと、ふむ、と顎に手を当て、何事かを考え始める。一体どうしたのかと思っていると、父がリリアの顔色を窺いながら言った。


「レイフォード様はあてがわれていたメイドに、毎日のようにアルディス公爵家を訪ねたいと言っていたそうだ。リリアに会いに来た、と見ていいだろう」

「そうでしょうね。休暇中は暇だと聞いたから、と言っていましたし」

「ふむ……。そうか……」


 父はその後も何かを考えていたようだったが、それ以上は何も言わずにきびすを返した。ぶつぶつと独り言を言いながら立ち去っていく。その後ろ姿に何故か少しばかり不安になるが、問い詰めても答えてくれるとは思えない。


「俺は父上と話をしてくる。ここで解散としよう」

「はい。分かりました」


 兄はすぐに父を追って駆けていった。一人残されたリリアは小さくため息をつき、自室に戻った。

 その日の夕食は父と兄は一緒には食べなかった。家にいる時は必ず家族と食事を取る父にはとても珍しいことだ。レイの姿もなかったことから、二人でどこかに出かけたのかもしれない。


 ――気になる?

 ――そうね。お父様が余計なことを言わないか、気になるわね。

 ――あはは。そっち?


 結局、その後も父たちの姿を見ることはなかった。




 翌日。ティナと共に食堂に入ると、


「あ、おはよう、リリアさん」


 レイがテーブルについていた。にこやかな笑顔をリリアに向けてくる。


「そっちの人は初めましてだよね。レイです。よろしくお願いします」


 席から立ち、ティナへと頭を下げる。ティナも慌てて頭を下げた。


「初めまして。ティナ・ブレイハです」

「男爵家でリリアさんの友達、だよね。アルディス公爵から聞いています」


 ぴくり、とリリアの眉が動いた。父の姿を探して部屋を見回す。今はまだこの部屋にはいないようだが、すぐに入ってくるだろう。


「ん? 早いな。おはよう」


 兄が先に入ってきた。そう言えばこの兄も昨日は父を追ったと思い出す。つまりはレイと一緒にいたということだろう。じっと兄を見つめると、それに気づいたのか、あー、と意味の無い音を発した。


「俺からは何も言っていない。父上だ」

「私がどうかした、か……」


 兄に続いて父が入ってくる。リリアが父を睨み付けると、言葉が尻すぼみになっていった。そして回れ右をして部屋から出て行こうとして、


「父上。どこへ行かれるおつもりですか?」


 兄にその腕を掴まれていた。


「い、いや、急用を思い出して……」

「まあ、お父様。私とお話をするのがそんなに嫌なのですか? 悲しいです」

「そ、そんなことは……ない、のだがな?」

 リリアがそっと父の手に自分の手を重ねる。動きを止める父に、リリアは笑顔を見せた。

「是非とも、昨日、何を話したのか、聞かせていただきたいのですが」

「う……! わ、分かった……」

 父が力無く肩を落とした。


 朝食を始める前に聞いたところ、父がレイに話したのは、リリアの友人が滞在していることと、リリアの幼い頃の話を少しだけ、だそうだ。幼い頃の話、というのは少し恥ずかしいものはあるが、父がリリアから逃げようとする理由にはならないだろう。

 つまりは、リリアに言っていないことがまだある、ということか。

 問い詰めようかとも思ったが、母やテオも食堂に入ってきたので中断された。


 朝食前に、レイはその場にいる全員に自己紹介をした。使用人たちも信用できるということで、本名を名乗り、身分も明かした。母はさすがと言うべきかわずかに眉を動かしただけでほとんど無反応だったが、ティナとテオの二人はそろって大きく目を見開き、驚きを素直に顔に出していた。


「それで? 具体的に何の用なのよ」


 リリアが隣に座るレイを見ながら聞くと、レイは笑顔で言った。


「リリアさんに会いに来たんだよ」

「それは分かったから。本当の目的は?」

「いや、だからリリアさんに……」

「怒るわよ」

「え、えええ……」


 半眼で睨むリリアと、頬を引きつらせるレイ。もう一方のリリアの隣、ティナは事情を察したのか、少しだけ目を見開き、そして何故か苦笑い。それはテオを除く家族全員が同様だった。テオだけはきょとんと首を傾げていたが。


「いや、えっと、うん。アルディス公爵にちょっと話があってね。国のことだから、秘密で」

「あら、そう。最初からそう言えばいいのに」


 そして朝食へと戻る。レイがため息をついたが、それには気づかなかった。

 朝食を食べ終えた頃、父が口を開いた。


「リリア。一つ、聞いておきたいのだがな」


 リリアが眉をひそめ、父を見る。父は真面目な表情をしているが、口角が少しだけ持ち上がっているのは気のせいだろうか。


「リリアは、どういった男が好みだ?」

「は……?」


 何を問われたのか一瞬理解できず、口を間抜けに開けてしまう。父をよく見ると、やはり笑っているように見える。気のせいだと思いたい。


 ――ストレートだね! リリア、私も気になる! 教えて!


 さくらまで楽しそうに聞いてくる。助けを求めても無駄なようだ。気づけば、部屋にいる全員がリリアを見つめていた。


壁|w・)少しだけレイとの絡みが続きます。


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ではでは。

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