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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前休暇

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 リリアとしては反対だ。どうにも、友人と弟が付き合うとなると違和感を覚えてしまう。だがそれはリリアの気持ちの問題だ。ティナが望むのなら、自分のことなど気にする必要はないと思っている。

 クロスは頷くと、両親へと向き直った。


「リリアの言う通りです。まずは本人の意志を確認するのが先だと思いますが」

「ふむ……。そうだな。そうするか。テオもそれでいいな?」

「はい。もちろんです」


 そうして移動を始める家族たち。正直なところ関わり合いになりたくもないが、放っておくわけにもいかず仕方なくついて行くことにした。




「あ、リリア、おかえ、り……?」


 リリアが自室の扉を開けると、ティナが笑顔で振り向いてきた。そして、勢揃いしているアルディスの人間を見て凍り付いた。


「ティナさん」


 父が口を開き、ティナは慌てて立ち上がった。姿勢を正すティナに、父は苦笑して手を振った。


「気にしなくていい。楽にして構わない。座りなさい」


 はい、とおずおずといった様子でティナが座る。父は少しだけ距離を取ったまま、ティナへと言った。


「昨日、テオが君に想いを告げたそうだね」

「あ、えっと……。はい」


 ティナがちらちらとリリアへと視線を送ってくる。助けてほしいのだろうとは思うが、リリアは無言を通した。


「それで、どうかな? 君さえ良ければ、君のお父さん、ブレイハ男爵殿にも話を通しておこうと思うのだが」


 これは意味が分からなかったのだろう、ティナが首を傾げた。さすがに分からないまま話をさせるのもかわいそうだと思い、そっとティナへと近づく。


「ティナ。今回だけで決まる話ではないのだけど、あえて極端にして例を出すわよ」

「え? うん」

「この子と婚約したいかどうか、ね」


 ティナが大きく目を見開いた。そして勢いよくテオを見る。テオは顔を真っ赤にしながらもじっとティナのことを見つめていた。どうやら本当に好きになってしまったらしい。


 ――本当、連れてこなければ良かったわね……。

 ――後の祭り、だね。

 ――分かっているわよ。


 ティナは少し考え、そして言った。


「その……。お気持ちは嬉しいのですけど……。昨日会ったばかりなので答えることはできません。考えさせてください」

「まあ、そうだろうね」


 ティナの答えは想像できていたのだろう、父は頷くとテオの頭に手を載せた。


「まあそういうことだ。しばらく待ちなさい」

「はい……。分かりました」


 少しだけ残念そうにしながらも、テオはしっかりと頷いた。

 話は終わりだとばかりに立ち去ろうとする家族たち。リリアはそれを黙って見送ろうとして、


 ――リリア。本来の用件忘れてるよ。


 完全に忘れていた。慌てて父を呼ぶと、家族全員が振り返った。


「今回の休暇でティナさんの実家にも行きたいのですけど、構いませんか?」

「ふむ……。クロス。どの町だ?」

「ここから馬車で一週間ほどの距離ですね。北です」

「ああ、あの町か。リリア一人というのはさすがになあ……。それに公爵家のものが突然行くと、やはり迷惑だろう」


 先ほどまで話を通しに行くなどと言っていた男の言葉とは思えないな、と内心で思いながら、リリアは今度は兄へと言う。

「お忍び、ということでいかがでしょう。さすがに私としても、女二人というのは不安なところもありますし、お兄様さえ良ければ一緒に来てほしいのですが」

「分かった。行こう」


 即答だった。引き受けてくれないだろうと思っていたために言葉に詰まってしまう。その様子に気が付いたのか、クロスが怪訝そうに眉をひそめた。


「どうした。そんなに意外か?」

「ええ、まあ……。正直に言うと、意外ですね」

「心外だな。可愛い妹を心配するぐらいはするさ」


 兄がぎこちない笑顔を浮かべる。それを見たリリアは、そっと目を逸らした。


「待て、なんだその反応は」

「さて、ティナ。どこまで終わったの?」

「待て待て! 本当にどういうことだ!?」


 兄の頬が引きつるが、リリアは一切気にしない。すでにそこに兄はいないものとして扱う。ティナは戸惑っているようだったが、リリアに促されて教材を開く。兄はまだしばらく何かを言っていたようだったが、やがて諦めて父に言った。


「父上。仕事を片付けてきます」

「く、くく……! ああ、分かった。手伝おう」

「それとリリア。俺も途中の町に用事がある。別の町で二、三日滞在しなければならない。それと、こちらの仕事もある。急ぐが、二週間はかかる。構わないな?」


 兄の問いかけにリリアは顔を上げ、次いでティナへと視線を送る。その視線の意味を察したのだろう、ティナは大丈夫だと頷いた。


「ええ。大丈夫です」

「分かった。手配もこちらでしておくから、もうしばらくはゆっくりしておくといい」

「あ、あの! 私も一緒の馬車に乗せてほしいのですけど……」


 ティナが慌てて兄へと言うと、兄はわずかに驚いたように目を見開いた後、父を見る。父は頷いて答えた。


「ああ、構わない。自分の家だと思ってくつろいでいくといい」


 父がティナへと言って、ティナはありがとうございますと深く頭を下げた。




 アルディスの屋敷での日々はのんびりとしたものだ。朝に起床して朝食を済ませ、昼食まではリリアの部屋でティナと共に勉強をする。昼食の後は、屋敷の周りを散歩したり兄の稽古を見学したりと様々だ。ティナはと言えば、母やテオに誘われて出かけていることが多かった。何をしているのかと聞いてみれば、庭でお茶を飲みながらお話をしている、だそうだ。


「リリアのことをよく聞かれるよ。すごく心配してるみたいだった」

「全て黙秘しなさい」

「できないよ!」


 夕食の後はリリアの部屋に戻り、家族の誰かも交えてお茶を楽しむ。そんな日々が続いていた。


壁|w・)次はお買い物。


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ではでは。

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