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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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 ――違うの?

 ――うん。私はもう未来予知はできないよ。リリアががんばってるから、私の未来の知識はもう当てにならなくなってる。

 ――それは初耳ね……。じゃあどうして分かったのよ。

 ――さくらちゃんの天使としての能力です! ありがたがれ。

 ――はいはい。すごいすごい。


 適当に切り上げておく。さくらが、流さないでよと文句を言ってくるが、相手をしているときりがない。


「貴方が殿下を呼んできてくれたのね。ありがとう、助かったわ」


 そう言うと、女生徒は目を丸くした。そしてすぐに苦笑へと変わる。リリアが不思議そうにしていると、女生徒が言った。


「呼びに行く必要はなかったみたいですけどね。リリアさんがレイ君を助けてくれていましたから。とても格好良かったです!」


 弾んだその声に、リリアはしかし意味が分からなかった。リリアとしてはレイを助けるための行動であり、それ以上の意味はない。だがわざわざ説明する必要もないので、リリアは礼だけを言っておいた。


「ねえ、そろそろ……」


 女生徒の奥、残り二人が声をかけてきた。リリアと目が合うと、怯えたように体を振るわせ、目を逸らす。見慣れた反応にリリアは内心でため息をついた。


「お友達が待っているわよ。行きなさい」

「あ……。はい! また今度、お話できますか?」

「そうね。少しぐらいなら構わないわよ」


 そう答えると、女生徒は嬉しそうに微笑んだ。それでは失礼しますと勢いよく頭を下げて、一緒にいた二人の元へと戻っていった。


 ――いい子だね。


 さくらの声に、リリアは小さく頷いた。自室へと戻り始める。先ほどの子はおそらく貴族でも何でも無い、庶民の一人だろう。精一杯の礼儀を尽くそうとしていたようだったが、リリアから見てみればまだまだだ。

 だが、それでも。それだからこそ、好意がしっかりと伝わってきた。


 ――まあ、悪くないわね。


 リリアの口角がわずかに上がる。それに気づいたさくらが嬉しそうに笑っていた。




 自室に戻ると、アリサが丁寧に頭を下げて出迎えてくれた。紅茶を頼み、テーブルにつく。そして用意された紅茶を一口飲み、視線を天井へと向けた。


「下りてきなさい」


 リリアが言うと、すぐにシンシアが下りてきた。今回はさくらに場所を聞いておらず適当に言ってみたのだが、やはり天井にいたらしい。いつも天井にいることを考えると、秘密の部屋でもあるのかと疑ってしまう。

 リリアがテーブルを指で叩くと、シンシアは恐縮そうにしながらもいすに座った。


「あ、あの、リリア様。とても格好良かったです。お疲れ様でした」

 ――本当に戻ってる……。


 さくらが驚いたようにつぶやき、リリアはシンシアを興味深そうに見つめてしまう。アリサと密偵の男から元に戻るとは聞いていたが、予備知識があってもこの違いには戸惑ってしまう。


「シンシア。リリア様の前なのだからもう少ししっかりしなさい」


 見かねたアリサが声をかけるが、それはむしろ逆効果だったようで落ち込んだようにうつむいてしまった。


「まあ、構わないわよ。シンシア、今日はありがとう。本当に助かったわ」

「い、いえ! 私はレイという子を探しただけですので……。途中で介入しないといけないようなことにならなくて、本当に良かったです」


 どうやらシンシアは、荒事にならないかと不安に思っていたらしい。その点については、あの五人を見た時からリリアは心配していなかった。あれらは威勢がいいだけの子供だ。実際に手を上げるようなことはなかっただろう。もっとも、逆上した場合はどうなるか分からなかったが。


「リリアーヌ様に仕えるなら荒事の対策もしておかなければいけませんね……」


 気落ちしたようなシンシアの言葉に、リリアはわずかに目を細めた。


「リリアでいいわ」

「え?」

「リリアでいいと言っているの。そちらの方が呼びやすいでしょう」


 シンシアは間抜けに口を開けて、しばらく固まっていた。リリアがじっと見つめていると、慌てたように頭を下げた。


「ありがとうございます! えっと……。リリア様」


 リリアは満足げに頷き、紅茶を飲む。そっとシンシアを見てみれば、照れくさそうに笑うシンシアが視界に入った。


 ――シンシアはやっぱりいい子だね。


 さくらの声が頭に響く。リリアは紅茶のカップをテーブルに置き、内心で頷いた。


 ――ええ。能力も高いようだし、よく働いてくれそうよ。

 ――またそういうこと言う……。リリア、ここでは何を言ってもいいけど、口に出したらだめだからね。

 ――分かっているわ。

「ところでシンシア。貴方は荒事が苦手だと言っていたけど、具体的に教えてもらえる?」


 その問いに、シンシアは一瞬だけ体を震わせ、次いで視線が泳いだ。どうしたのかと首を傾げると、アリサが苦笑した。


「どう答えればいいのか分からないのだと思います」


 アリサの答えに納得して、それじゃあ、と訂正する。


「そうね。もし南側で面倒なことに巻き込まれたとしましょう。どこまでなら対処できるの?」

「南側ですか。相手にもよりますけど……。武術を学んでいない人が相手でしたら、三人までならおそらく対処できます」

「武術を学んでいたら?」

「程度にもよりますけど、一人、ですね……」


 なるほどね、と頷いておく。だが頷いただけで、他の者がどこまで対処できるのか分からないので判断のしようもない。聞いている限りでは、少なくとも学園内では問題なさそうではある。先の五人が相手になっても問題はなかっただろう。


 ――実際のところどうなの?

 ――うん。というよりね、リリア。分かっていると思うけど、密偵に荒事の対処を求めたらだめだよ。

 ――あら。そうなの?

 ――そうなの。密偵は見つからないことが前提だからね。当然だけど戦闘のプロと正面切って戦う時点で密偵にとっては負けみたいなものだと思うよ。


 なるほどと納得する。なら先ほど思いついたことは愚策だろうか。そう思っていると、さくらは笑って否定した。


 ――確かに密偵に護衛を求めるのはお門違いだけど、シンシアなら大丈夫だと思うよ。というより今まで誰も連れていなかったんだから。お願いしてみるべきだと思う。


 リリアは頷くと、改めてシンシアに視線を向ける。リリアが真剣な表情をしていたためか、シンシアは紅茶のカップを置いて居住まいを正した。


ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません。

今後もこのまま、のんびりまったり続けていきます。

今後について昨日の夜に活動報告を投下しておきました。


ともかく。

壁|w・)私は元気です。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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