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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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「アリサの言う通りだね……」

「でしょう?」


 シンシアとアリサが微笑み合う。リリアは意味が分からずに首を傾げるばかりだ。


「リリアーヌ・アルディス様」


 シンシアがリリアの名を呼んだ。いつになく真面目な表情と声に驚きながらも、シンシアへと目を向けた。


「私は貴方に仕えます。私の忠誠を、貴方に捧げます」


 そう言って、驚くリリアの目の前で、深く頭を垂れた。リリアはしばらくそれを呆然と見つめていたが、やがて頷き、


「感謝します、シンシア」


 短く、そう告げた。


「これからよろしくお願いするわね」

「はい。いついかなる時も、何なりとご命令下さい」


 頭を下げたままのシンシアに、リリアはもう一度頷いておいた。もっとも、リリアの心の中は驚き慌てていたのだが。


 ――どうして急にこの子は従うって言い出したの?

 ――きっとリリアの友達想いなところに惹かれたんだね!

 ――意味が分からないわ。

 ――えー……。


 ともかく、今後シンシアはリリアのために動いてくれるということだろう。ならばとリリアは早速シンシアに命じた。


「では早速だけど、レイを探してもらえる?」

「畏まりました」


 恭しく頭を下げ、そして次の瞬間には天井の穴へと消えてしまった。それを見送り、


「ずいぶんと凜々しくなったわね……」


 ぽつりとつぶやいたリリアの言葉に、アリサと男が苦笑した。


「あれは仕事の時はとても真面目ですので」

「何もなければ前の状態に戻りますよ」


 それはそれでどうなのか、と思いながら、リリアはいすに座った。




 落ち着かない気持ちのまま、アリサの紅茶を飲みながらシンシアを待つ。自分でも探しに行きたかったが、これは密偵の男どころかアリサにも止められた。報告に手間が生じてしまう、と。さくらからも止められたので、大人しくここで待っている。

 どれほどそうしていただろうか。二杯目の紅茶を飲み干したところで、シンシアが戻ってきた。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。それで、どこ?」


 リリアがテーブルを指で叩くと、シンシアは懐から学園の地図を取り出した。テーブルの上にそれを広げて、ある一点を指差す。校舎の最上階の廊下だった。


「どうしてこんなところに?」


 リリアが首を傾げると、シンシアが表情を曇らせた。不思議に思いながら首を傾げていると、


 ――リリア。急いだ方がいいと思うよ。

 ――そうなの?

 ――多分。


 さくらがそう思うなら従うことにする。リリアは頷くと、立ち上がった。場所をしっかりと覚え、扉へと向かう。


「リリアーヌ様、行かれるのですか?」


 シンシアの言葉に足を止め、振り返って頷く。するとシンシアも頷き返し、


「畏まりました。ではお供させていただきます。指示があるまではリリアーヌ様の安全を第一に行動致しますが、よろしいでしょうか?」

「ええ。それで構わないわ。では行きましょうか」


 シンシアは頷くと、天井の穴へとまた消えていった。リリアは部屋の扉から外へと、改めて向かった。




 リリアは一人、校舎へと移動して最上階へと向かう。途中ですれ違う生徒はやはりリリアのために道を空けていった。


 ――すごいね。人目につかないように移動してる。忍者だ。くノ一だ。

 ――くのいち、というものはよく分からないけれど……。ついてきてくれているのね?

 ――うん。つかず離れず。才能があるとは聞いていたけど、すごい。


 リリアには全く分からないが、シンシアはしっかり来てくれているらしい。荒事は苦手なようなことを言っていたが、それでもやはり一人よりは心強い。

 しばらく歩き、階段を上り、そして目的地の側まで来てそれは聞こえてきた。


「さっさと歩けよ! 日が暮れるぞ!」


 ぴたり、とリリアが動きを止めた。その声は曲がり角の向こうから聞こえてくる。周囲の生徒は、何事かと視線を投げていたが、関わりたくなさそうにそそくさと声から離れるように移動していた。

 首を傾げながら曲がり角を曲がる。そして、それを見た。

 レイが大量の本を抱えて、よたよたと歩いていた。その周囲には手ぶらの生徒が五人。男三人と女二人だ。誰もが嫌な笑みを浮かべ、レイへと言葉を浴びせている。


「早くしてくれよ、レイ先生。勉強教えてくれるんだろう?」

「先生に教室貸してもらったんだからさあ、早くしてよね?」


 最も大柄な男子が言って、それに寄り添う女が小馬鹿にするような声音で言った。レイは何も言わず、黙々と歩いている。自分の背よりも高い本の山を、必死になって支えながら。


「なるほど、ね……」


 リリアは思わず自嘲してしまう。その光景を見た瞬間、レイが嫌がらせを受けていることを理解した。理解したと同時に、自分が情けなくなった。

 あの男はリリアで。レイはティナだ。


 ――確かにこれは、端から見ると不快でしかないわね……。

 ――リリア。後悔はあとでしようね。いくらでも聞いてあげるから。

 ――ええ、そうね。ありがとう、さくら。


 リリアは薄く微笑むと、表情から感情を消した。曲がり角から出て、向かう。リリアに気づいた周囲の生徒がぎょっと目を剥いて、慌てて道を譲っていく。

 最初に気づいたのは、五人組の中でも一番気弱そうな男子生徒だった。レイを嘲るように見ていたが、視界の隅に入ったリリアに気づき、表情を凍らせた。


「な、なんで……?」


 その声を聞き取ったもう二人もリリアに気づき、動きを止める。先ほどまで嘲るような笑みだったのに、今では怯えきったものになっていた。

 大柄な男と寄り添う女は、まだ気づかない。他の三人は声すら出せない。

 リリアがレイの側に立って、ようやく残りの二人も気が付いた。


シンシアが なかまになりたそうに こちらを見ている!

というわけで、シンシア引き込み完了です。

情報面が強化されました。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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