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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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 目を覚ましたリリアは、少しの間ぼんやりと天井を眺め、そしてゆっくりと体を起こした。ぐっと伸びをして、ベッドから下りる。周囲を見ると、そのどれもに色がある。その事実に少しだけ安堵してしまった。

 さくらは、あの黒い世界で、今も一人きりでいるのだろうか。


 ――さくら。

 ――ん?

 ――その……。私で良ければ話し相手ぐらいにはなるから……。夜にでもまた呼びなさい。


 さくらの返事を待つが、返ってきたのは沈黙だった。どうしたのかと首を傾げると、さくらの少し気まずそうな声が届いた。


 ――ごめんね。気持ちだけでいいよ。

 ――どうして? 一人では退屈でしょう。

 ――いやいや、リリアを見ていると十分面白い……いや、何でも無いです。

 ――しっかり聞いたわよ。全く……。


 罵声の一つでも浴びせてやろうかとも思ったが、あの場所を見た後ではどうにも強く言えなくなってしまう。リリアは代わりにため息をつくと、気を取り直して続けた。


 ――理由は? 何かあるの?

 ――えっと……。リリア。体の調子はどう?


 突然何を聞いてくるのか、と眉をひそめ、そしてようやく気がついた。まさか、と思いつつも問いかける。


 ――そう言えば少しつらいけど……。まさか……。

 ――うん。ごめんなさい。私のせい、だよ。


 リリアが思わず目を見開き、それに気づいたさくらが沈んだ声を出した。


 ――ごめんね。言っておかなくて。

 ――別にいいけど……。どういうこと?

 ――えっとね……。私もこれには詳しいわけじゃないけど。寝ながら色々できる、と思いそうなところだけど、そういうわけじゃないんだ。言うなれば、体は休んでるけど心は動いてる。そんな状態。当然だけど、体は休んでるから体力は回復するよ。でも、ずっと動いてる心はそうはいかないんだ。少しずつ疲弊して、最後には……。

 ――最後には?

 ――ごめん。知らない。


 リリアの頬がわずかに引きつった。ここまできてそうくるのか、と。つまりは最終的なリスクは分からない、ということだ。それを踏まえてのリリアの結論は、


 ――いいわよ。

 ――え?

 ――貴方にはお世話になっているもの。少しぐらいの無茶ならしてあげるわ。

 ――リリア……。


 さくらの声が震え始める。リリアは苦笑しつつ立ち上がった。


 ――この程度で泣かないで。寂しくなったらいつでも呼びなさい。

 ――うん……。ありがとう、リリア。


 感極まったようなその声を聞くと、リリアの方が恥ずかしくなってしまう。リリアはわざとらしく咳払いをすると、そろそろ出るわよ、と扉へと向かう。


 ――じゃあ、ね。週に一回、休日の前の一時間。どうかな?


 ドアノブに手を掛けて、リリアは動きを止めた。さくらの言葉が続かないことを確認して、小さく吐息を漏らした。


 ――別にもっと長くてもいいわよ。

 ――これでも十分すぎるよ。リリアも、辛くなったらいつでも言ってね。

 ――ええ。分かったわ。さくらも、遠慮せずにいつでも言いなさい。

 ――うん……。嬉しい。本当にありがとう、リリア。


 さくらには珍しい、心のこもった感謝の言葉だった。気恥ずかしくなり頬が朱に染まるが、さくら相手には隠すことはできないので苦笑して誤魔化した。

 扉を開けると、テーブルにティナとクリスが向かい合って座っていた。珍しい組み合わせにももちろん驚いたが、それ以上に二人そろって楽しげに笑っていることにさらに驚いた。


「リリア様。おはようございます」


 リリアに真っ先に気づいたアリサが恭しく一礼をする。リリアはそれには応えずに、テーブルに座る二人を見ながら、


「アリサ。あれはどういうこと?」

「あ、その……。リリア様がお休みになられてすぐにいらっしゃいまして……。リリア様が起きてくるまで待つとあちらに……」


 リリアは小さくため息をつくと、彼女たちの方へと歩いて行く。すると二人ともすぐに気が付いたようで、席を立った。


「リリア! 大丈夫? もしかして具合悪いの?」


 そう聞いてきたのはティナだ。リリアは笑顔で首を振る。


「そんなことはないわ。少しだけ横になりたかっただけ。ところで、クリスはどうしてここにいるの?」

「この子の付き添いです。私自身、少しだけ用事があったのもありますが」

「そう。聞きましょう。何の用かしら」

「では回りくどいものはなしにして……。リリアーヌ様。どのような手を使いましたか?」


これがリリアなりのデレです。多分。


今日は少しばかり短くなってしまいました。

先日の連続投稿の影響、ということにしておいてください……。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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