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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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 シンシアがおずおずといった様子でリリアの目を見てきた。リリアは満足そうに頷き、続いて指示を出す。


「覆面を取りなさい」

「……っ!」


 シンシアが息を呑み、目を泳がせた。その視線が天井へと何度かいっていることに気づき、リリアはそちらへと目を向ける。おそらく、男の密偵のどちらかがいるのだろう。


「構わないわね?」


 リリアが天井へと問うが、返答はない。ならばそれは構わない、ということだ。リリアはそう結論づけて、シンシアへと促すようにテーブルを指で叩いた。


「うう……。分かりました……」


 シンシアが覆面を取り、リリアのみならずアリサもわずかに目を見開いていた。

 まだあどけなさが残る少女だ。おそらくはリリアよりも、もしかするとアリサよりも若い。髪は茶色で短く切りそろえられていた。


「へえ……」


 リリアが興味深そうにつぶやき、シンシアは羞恥からか頬を染めた。顔を隠すための覆面だと思っていたが、どうやら人前に顔をさらすのを恥ずかしいと思うようだ。


「貴方はお兄様に仕えているの?」


 リリアが聞いて、シンシアは首を振った。


「私はまだ特定の主を持っていません。その、見習いとして、父上に同行しています」


 なるほど、とリリアは頷き、アリサへと目を向ける。アリサは頷いて、


「十年に一人の天才と聞いています」

「へえ。素晴らしいわね」


 シンシアへと視線を戻す。顔を真っ赤にしてうつむいていた。


 ――リリア。

 ――ええ。欲しいわね、この子。


 年齢を考えると経験不足はあるだろう。しかし才能があるなら、是非とも手中に収めておきたい。


「シンシア。仕えたい主とかはいるの?」


 兄に頼めば、リリアの要望を聞き入れてくれるかもしれない。だがそうして無理矢理手に入れようとは今は思えない。しっかりと、自分の意志でリリアに従ってくれる人材が欲しい。


「いえ、今は特には……」

「そう。なら私に仕えなさい」

 ――おもいっきり命令になってるよ!

 ――あら、失礼。

「間違えたわ。私に仕えない?」


 リリアの言葉に、シンシアは目を丸くしていた。再び目を泳がせ、やはり天井へと何度も目をやる。だが誰もそれには応えない。シンシアはうつむいて、か細い声で言った。


「考えさせてください……」

「そう。分かったわ。急がないからじっくり考えなさい」


 少しだけ残念に思うが、こればかりは仕方がない。リリアは紅茶を飲み干すと、ではごゆっくり、と寝室へと向かった。




 昼過ぎに図書室に行ってみたが、レイはいないようだった。勉強を教えた身としてどうだったのか聞きたかっただけなので、少しだけ残念に思いながらも自室に戻った。

 そして夜になって来客者があった。寝室でさくらと共に勉強をしていたリリアはアリサに呼ばれ、出迎えに行く。扉を開けると、満面の笑顔のティナがいた。


「リリア!」

「わ……!」


 リリアを認識すると、すぐにティナが抱きついてきた。リリアは少し慌てながらもしっかりと受け止め、ティナを睨み付ける。


「危ないじゃない。何をするのよ」

「えへへ。すごく嬉しくて!」


 言葉通り、ティナは満面の笑顔でリリアを見つめてくる。抱きついたままの姿勢のためにとても顔が近い。リリアはわずかに頬を染めると、ティナを押しのけた。


「いいからとりあえず座りなさい。全く……」


 そう言ってテーブルにつかせる。すぐにアリサが紅茶を出してくれた。


「それで? 試験はどうだったの?」


 聞かれたティナが笑顔を濃くする。それだけで応えは分かった。


「ばっちり! リリアのおかげだよ。本当にありがとう!」


 そう言って、今度はテーブルが間にあるためにさすがに抱きついてこないが、テーブルに置かれていたリリアの手を取った。嬉しそうに笑っているティナを見ていると、リリアも少しばかり達成感を覚えることができた。


「そう。それなら良かったわ。ところで離してくれないかしら」


 ティナはずっとリリアの手を握っている。離すどころが握る力がさらに強くなったような気がする。


「もうちょっと」

「何なのよ……」


 リリアはため息をつくが、それほど悪い気はしないので強く言うことはしなかった。


 ――照れてるリリアが可愛い。

 ――照れてないわよ。

 ――えー。顔真っ赤だよ? リリア可愛い!

 ――………。


 どうやら何を言っても無駄らしい。リリアはため息をつくばかりだ。


 ――でも親友一号は私だからね! 誰にも譲らないからね!

 ――あら、私は貴方を親友だなんて思ってないけど。

 ――え……。と、友達、とか……。

 ――友達? いやよ。


 あえて感情を乗せずにそう言ってやると、さくらは完全に沈黙した。リリアがわずかに眉をひそめ、対面のティナが首を傾げた。


 ――私は……リリアを友達だと思ってるからね……。

 ――ちょっと、泣いてるの!? ああ、ごめんなさい、冗談よ! 私も友達だと思ってるから!


 さくらの涙声にリリアは慌てて謝罪する。まさかこれほどまでに効果があるとは思わなかった。


 ――ぐす……。私はリリアのこと、好きだよ……。

 ――そう。私もさくらのことは好きよ。大切な友達だと思っているわ。

 ――えへへ。


 どうやら機嫌を直してくれたらしい。機嫌よく笑い、そして、


 ――ところでリリア。

 ――何よ。

 ――リリアって単純だよね。


 そして気づいた。さくらの猿芝居だと。


 ――さくら!

 ――あはははは!


ジャンルを友情にしたい。このままではジャンル詐欺のような気がとてもします。

何が言いたいかと言うと、ゆりじゃねーです、ということで。

女同士の恋愛かと友人に聞かれました。違うよ。

確かに未だにリリアさん恋愛してないけど。

あれです、人の恋愛を見守るお話なのです。無理がありますね。


ちょっと活動報告をかきかきしてきました。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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