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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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 ――つまり、貴方は聞いていたということね?

 ――うん。もちろん。

 ――どうして私には教えてくれなかったのかしら……?


 心の中で問いかけていたのだが、いつの間にか表情そのものも動き、冷たい笑顔になっていた。かわいそうなレイが部屋の隅で震えるが、リリアはそれには気づかない。


 ――待って! 待ってリリア! 違うんだよ! 決して言うのを忘れてたとか、まあどうせリリアだし別にいっか、とかそんなこと思ってないから!

 ――いい度胸ね……。

 ――うん。というよりリリア。本当に必要あるの?


 唐突に真面目な雰囲気になり、リリアは眉をひそめた。どうやらさくらは、本当に教える必要性はないと思っているらしい。理由を聞くと、


 ――今のリリアなら放っておいても大丈夫だよ。それよりも目先の問題を片付けてほしかったから。


 どうやらさくらは考えた上でリリアに伝えないことにしていたようだった。それならリリアも何も言う必要はないだろう。さくらが問題ないと判断したのなら、リリアはそれを信じるだけだ。


 ――でもせめて一言ぐらい言ってほしかったわね。

 ――あー……。うん。それはごめん。次からはちゃんと言うね。


 リリアは小さく嘆息すると、視線をレイの方に向けて、


「何しているの?」

「あ、あはは……」


 レイの表情が青ざめていたのだが、リリアはその理由に思い至ることができなかった。リリアは首を傾げながらも、レイに戻ってくるようにと言って、戻ってきたレイに、


「それじゃあ、試験に備えましょう。分からないところがあればそこを優先するから言いなさい」


 リリアの言葉に目を丸くした。


「あ、あの……。リリア様はいいのですか?」

「私は部屋に戻ってから勉強するから気にしなくていいわよ。遠慮もしなくていいから」


 レイは少し申し訳なさそうにしていたが、それでも素直に分からない場所を提示してきた。リリアはそれに少し満足そうに頷くと、いつものように解説を始める。

 そんなリリアをレイがじっと見ていたことにさくらだけは気づいていたが、あえて何も言わなかった。




 夕食を済ませて自室に戻ったリリアは、少しぐらいは試験のための勉強をしようかと教材などを置いている寝室に向かおうとして

「リリア様、お客様です」


 アリサの声に足を止めた。


「もしかして……。ティナ?」

「はい」


 まさか夕食の誘いだろうか。そうだとすれば、すでにリリアは食べ終わっている。もう一食食べられないこともないが、無理してまで食べたいとは思わない。そんなことを考えながらティナを迎えると、


「リリア……。勉強教えて……」


 切実そうなティナの声にリリアは一瞬呆けて、そして小さくため息をついた。


「いいわよ。アリサ」

「紅茶ですね。ご用意致します」


 アリサは優しげな笑みを浮かべながら丁寧に頭を下げ、紅茶の準備を始めてくれる。リリアは満足そうに頷くと、ティナを連れてテーブルに向かった。机を軽く叩くと、ティナが申し訳なさそうに持参していた教材を置いた。


「それで? どこが分からないの?」

「うん……。まずはここかな……。あとは……」


 ティナの苦手としている分野を覚えていく。そうしている間に、さくらの声が頭に響いた。


 ――そうだ。リリア、一つ予言してもいい?

 ――唐突ね。いいわよ、聞きましょう。

 ――ではでは。今後、リリアはここで勉強会を開くことになるでしょう。そして皆から先生と呼ばれるようになるでしょう。


 リリアは驚きで目を瞠ったが、すぐに気が付いた。さくらの声が真面目なものではなく、少しばかり何かを堪えるように震えていることに。


 ――さくら。それは本当に予言?

 ――あ、ばれた? 私の希望かな。だってその方が面白そう……じゃなくて、リリアのためになるかなって!

 ――待ちなさい。今、面白そう、と言ったわね?

 ――そんな事実は知らないよ! 濡れ衣だー!

 ――言ったわね?

 ――言いました。ごめんなさい。


 リリアの声が低くなると、さくらはすぐに認めて謝ってきた。まったく、と小さくため息をつきながらも、実際のところはいつものことなのでそれほど怒ってはいない。


「リリア?」


 ティナの声にはっと我に返ると、曖昧に笑いながらティナが示す問題をのぞき込んだ。




 しばらくの間ティナに勉強を教えていたのだが、ティナは基本的なことはだいたい分かるようだが、応用になると分からなくなるようだった。そういった問題が結構多く、一日では教え終えることができなかったため、明日からも通ってもらうことになった。


「ごめんね。リリアにも自分の勉強があるのに……」

「気にしなくていいわよ。私はそれほど問題ないから。そう言えば、殿下に教われば良かったのではないの? 殿下もお喜びになると思うのだけど」


 ティナが王子のことをどう思っているか、これで確認できるだろう。そう思って発した問いだったのだが、


「え、やだ」


 一切の躊躇のない即答だった。


 ――ぶふっ! 即答で拒絶されてる! あ、はは、おなか、おなかいたい……!

 ――さくら。笑いすぎよ。私が我慢しているのだから我慢しなさい。

 ――く、くく……! はーい。くくく……!


 笑い出しそうになる衝動をリリアが必死に堪え、リリアはティナへと、不思議そうに見えるように表情を作った。


「理由を聞いてもいいかしら」

「だって! ずっとリリアにひどいこと言ってるじゃない! 私だって怒るよ!」

 ――愛されてるね、リリア。

 ――どうしてこんなに持ち上げられているのかしらね……。

 ――さあ。どうしてだろうね。


直後のフォローをぶったぎったせいで今回も罵倒ばかりしていますね……。

一応、次回にちょっとだけフォローが入ります。

リリアとさくらの失恋からくる『王子嫌い』は直りませんけども。


PV100万いっちゃいました。つい先日10万だ、とか言っていたはずなのですが……。

これも読みにきてくださっている皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも暇つぶし程度になっていれば幸いですよ。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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