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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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 小さくため息をつき、気を取り直して再びレイに視線を投げる。レイは直立で姿勢を正していた。それほど怒るつもりもなかったので少しばかり申し訳ないと思ってしまう。


「それで? レイは何をしにここに来ていたの?」

「お買い物ですよ。いろいろとおもしろいものがあったりするので、あちこちを見て回っています。あと、ついでに買い食いもですね」

「人のこと言えないじゃない」

「はい。僕は食べることが大好きです」


 清々しいまでの開き直りだ。悪いとは思っていないかもしれないので開き直りとはまた違うかもしれないが。ためらいもなく言えるレイが少しだけ羨ましく思えてしまう。


「そうだ。せっかくだから一緒に行きませんか? おすすめのお店があるんですよ」


 おすすめ、と聞いて少しばかり興味を持ってしまう。アイラのおすすめの店を巡った時はそれなりに満足できた。レイのおすすめにも興味はあるが、このまま共に行動していいものだろうか。


 ――リリア。まだお腹減ってるの? 結構食べてなかった?

 ――まあ……。正直、余裕があるとは言えないけれど。

 ――太るよ。

 ――……っ!


 そう言えば。最近、どことは言わないが、太くなったような。そんな気は確かにする。だからこそさくらの言葉には真実味がある。気にしない貴族令嬢ももちろんいるが、リリアは自分の外見にはそれなりに気を遣っている方だ。太る、と聞くと一気に食欲が減じてしまう。

 残念そうにため息をつくと、リリアは首を振った。


「ごめんなさいね。もうそろそろ私は帰らないといけないのよ。あまり遅くなると心配されてしまうから」

「そうなんですか……。残念です。それじゃあ、また次の機会にしますね」


 リリアと行くことを諦めることはしないらしい。リリア自身、別に嫌というわけではないので、素直に頷いておいた。


「ええ。分かったわ。機会があればね」

「はい! 約束ですよ!」


 そう屈託無く笑うレイにリリアも微笑を返した。

 表の通りまで二人で歩き、さて、とリリアは学園への道へと足を向けた。


「私は帰るけど、レイはまだしばらく回るのかしら?」

「はい。今日はありがとうございました」


 頭を下げてくるレイに、まだ何もしていないのにと苦笑してしまう。レイも照れくさそうに笑って、リリアとは反対方向に行こうとして、


「あ、そうだ。リリアさん」

「なに?」

「先ほど、殿下がいらっしゃっていましたよね。どちらに向かわれました?」


 そんなことに興味があるのか、と意外に思いつつ、リリアは学園への道を示した。あの時の王子の進行方向から、おそらくはこちらで正しいはずだ。一応そうも伝えると、大丈夫でしょう、とレイは一言でリリアを信じてしまった。


「では、ありがとうございました!」


 そう言って、レイは走って行った。

 学園とは反対方向へ。


 ――あれ? てっきり王子を見に行くのかなと思ったんだけど。

 ――私もそう思ったけど。違うようね。

 ――どうして聞いたんだろうね。もしかして、王子たちが探しているのがレイだったりして!

 ――全くもって繋がりが浮かばないわよ。

 ――王様の隠し子とか。

 ――堂々と探してどうするのよ。


 呆れたようにため息をつくと、だよね、とさくらは笑った。リリアもレイの行動に少しばかり疑問を覚えるが、今は答えが出るはずのないものだ。考えても無駄なことだろう。リリアはレイが走って行った通りから視線を外すと、学園へと歩き始めた。




 学園に戻ったリリアは、アリサや密偵たちに苺大福をお礼に渡し、その後は勉強をして過ごした。自分で買ってきたお菓子を食べながら勉強していたのだが、さくらは咎めるようなことはせず、むしろ終始上機嫌で講義を続けていた。

 翌日の休日も、リリアは勉強に費やした。自習日となっている日に遊びに行ったのだから、代わりに休日は勉強しなければならない。これはさくらの言葉だったが、リリアも同意できたので食事時以外はずっと寝室で勉強をしている。

 そして夕食時になって、


「リリア様。お客様です」


 アリサの声に、リリアはペンを置いた。何となく予想はついている。夜会の件があるのだから大人しくしていればいいのに、とは思わなくもないが、少しばかり嬉しく感じている自分がいるのもまた事実だ。

 アリサを下がらせ、リリア自ら部屋の扉を開ける。そして、


「こんばんは! ご飯行こうよ、リリア!」

「こ、こんばんは……」


 ティナの他に、居心地悪そうにしているアイラとケイティンの姿があった。そしてさらにその隣には、


「何よ。見ないでくださる?」


 クリスもいた。考えたこともない組み合わせにどういう状況だと困惑してしまう。そしてすぐにさくらから告げられた予想に納得した。


「なるほどね。ティナさんだけならともかく、アイラさんとケイティンさんはここまで来られるはずがないわね。間違いなく誰かに呼び止められる。今回はクリスさんが声をかけて、仕方なく一緒に来てくれたと。ありがとうございます、クリスさん」


 笑顔を浮かべてクリスに礼を言うと、クリスは動揺を隠せずに狼狽え始めた。


「たまたま会っただけです! この三人は貴方に会いたいと言うから、ここまで連れてきただけです。それだけですよ」

「ここに来るまでに、次はどこかで待ち合わせするように勧めてくれました。下級貴族が大勢ここに来るには目立つからと」

「余計なことは言わないでほしいですね、ティナさん!」


 クリスが顔を真っ赤にして叫ぶと、ティナたちは楽しそうに笑いながら、すみません、と頭を下げた。全く、とリリアへと視線を戻す。


「リリアーヌ様。下々の者にはもう少し毅然とした態度を取るべきかと思いますが」


 クリスが言って、リリアは微笑んだ。


「心配していただきありがとうございます」

「な……! 心配なんか……!」

「ですがこの三人は私の友人です。友人には対等に接するべきでしょう?」


続きを求められた、だから投稿した、理由などそれだけで十分だ!

……あ、本気で日曜分をのぞいてのストックは尽きました。

明日からは本当に1日1話です。これ以上はお仕事に影響が出ちゃいます。


日間ランキングを見てみたら5位にいました。

2,3日前に「PV10万いったよわーい」とか言っていたのが嘘みたいですよ……。

ありがとうございます。本当に感謝です。

ただ私は気が小さいので素で怖いです。ガタガタブルブル。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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