表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/259

44

「リリアさん……ですよね?」

 ――さくら! 私はどうすればいいの! 確信しているみたいだから逃げるべきよね!

 ――うん。取り乱す人を見ると本当に逆に落ち着くものだね。えっとね、リリア。ここで逃げたら正解ですって言うようなものだから意味がないよ。

 ――じゃあどうすればいいのよ!


 リリアの心は完全にパニックになっていた。公爵家の者がこんなところで買い物をしていた、など公になれば家族に迷惑がかかる。赤の他人なら気にしないが、さすがに家族となると少しだが気にしてしまう。


 ――リリア。落ち着いて。はい、深呼吸。


 さくらに促されるまま、リリアは深呼吸する。レイが不思議そうにをそれを見ているが、今はそんなことは気にしていられない。


 ――リリア。落ち着いて。レイはリリアのことを、『リリアーヌ・アルディス』とは気づいてないよ。だからまだ、慌てるようなことじゃない。


 さくらの言葉に、そう言えばと思い出す。本当かどうかは分からないが、レイはリリアのことをどこかの上級貴族としてしか認識していない。まだ最悪の事態でなかったことに胸を撫で下ろし、なら次はどうするのかとさくらに問うた。


 ――下手に誤魔化すよりも味方につけちゃおうよ。レイは賢い子だから、リリアの格好を見て何となく察してくれてると思うよ。

 ――そう……。分かった。


 リリアはレイに視線を戻すと、一先ず落ち着くために咳払いをしてみた。それに反応したのか、レイが姿勢を正す。何故、と思うが気にしないことにして話を続ける。


「よく分かったわね、レイ」

「わあ! やっぱりリリアさんだったんですね! こんな所で会うなんて思わなかったので驚きました!」


 レイが満面の笑顔を浮かべてくる。リリアに会えたことが嬉しいらしく、素直に喜びを顔に出してきた。リリアは先ほどまでどのように誤魔化そうかと考えていたために、少しばかり罪悪感を覚えてしまう。


「でも驚きました。リリア様は上級貴族ですよね? そういった方はこういった場所には来ないものと思っていましたから」


 上級貴族、という言葉が聞こえたのだろう、周囲の一部の人がぎょっと目を剥いてレイを見ている。そしてその話し相手、リリアも。リリアが頬を引きつらせると、次の指示がさくらから届いた。

 今すぐこの場所から連れ出せ、と。

 リリアはすぐに頷き、レイの元まで歩くとその手を取った。驚くレイを無視して、リリアは足早に歩いて行った。

 そうしてその場から離れ、建物と建物の間、薄暗い細い通りに入ると、リリアは一息ついた。


「あ、あの……」


 レイの声に我に返った。そう言えば何も言わずにここまで連れてきてしまった、と。謝るために振り返ると、レイが申し訳なさそうにうつむいていた。


「ごめんなさい……。身分を隠しておきたかったんですよね……」


 その言葉に、リリアはわずかに目を見開いた。先ほどのリリアの一連の動きでしっかりと察してくれたらしい。やはり頭はよく回るようだ。少なくともリリアが同じことをされれば、憤りから冷静ではいられなくなるだろう。


 ――いやそこはリリアと比べたらレイに失礼だよ。

 ――今の貴方の言葉がまさしく私に対してとても失礼だと思うのだけど。

 ――気のせい気のせい。


 楽しげに笑うさくらにため息をつきつつ、リリアはレイに向き直った。レイは不安げにじっとリリアを見つめている。


「次から気をつけてくれればいいわ」


 少しだけぶっきらぼうな言い方になってしまったが、レイは安心したのか、良かった、と微笑んだ。


「リリア様はこちらには何をしに来たんですか?」


 レイの問いに、リリアは言葉に詰まった。笑顔で首を傾げるレイからは悪意など全く感じないが、それでも正直に答えていいものかどうか迷ってしまう。


 ――正直に答えてもいいと思うよ。この子なら多分大丈夫。


 さくらの指示に従い、リリアは口を開いた。


「少し前に知り合いからお菓子を頂いたのよ。どら焼き、というお菓子だけど、聞いたことはある?」

「はい! 美味しいですよね。僕も好きです」


 何故だろうか、レイの笑顔がとても眩しい。直視できずに目を逸らしてしまう。


 ――なんて悪意のない笑顔なんだ……。薄汚れた私たちの心には辛いものがあるね。

 ――薄汚れた、を認めたくないわね……。


 そう言いつつも、強く否定はしない、というよりはできない。


「あ、なるほど! だから自分でも買いに来たんですね。もっと食べたいから。リリア様って意外と食い意地が……」


 がしりと。右手でレイの頭をわしづかみにした。完全に凍り付いたレイへと、リリアは『笑顔』で問いかける。


「ごめんなさいね。よく聞き取れなかったわ。なんて言おうとしたのかしら?」

「あの、その……。ま、また食べたくなる味ですよね! よく分かります!」


 あはは、とレイが引きつり気味に笑い、おほほとリリアは貼り付けた笑顔で笑った。


 ――怖いよ。

 ――うるさいわね。誰のせいだと思ってるのよ。食い意地が張ってるのは間違いなく貴方でしょうが。

 ――うぐう……。反論できない……。


 黙り込んださくらに一先ず満足し、リリアはレイの頭を放した。解放されたレイは二、三歩後ろに下がり、リリアを警戒するようにじっと見つめてきていた。その瞳はわずかに濡れているような気さえする。少しやり過ぎただろうか。


「ごめんなさいね。でもレイ、女性に対して言っていいことと悪いことがあるのは覚えておきなさいね」

 ――いやあそこまで怒るのはリリアぐらい……。

 ――反省の色がないわね……。

 ――ひい! ごめんなさい!


 さくらの言葉に思わず眉根を寄せていると、それを自分に向けられたものだと勘違いしたのか、レイが勢いよく頭を下げてきた、驚くリリアの前で、レイが言う。


「ごめんなさい! 確かに女性の方に対する言葉ではありませんでした。以後、気をつけます」

「え、ええ……。分かればいいのよ。うん……」

 ――かわいそうに。トラウマになるよ。

 ――…………。

 ――ごめんなさい。


壁|w・)な、なんだかPVがすごいことになってるんですが。

ブックマークがすごい増えてるんですが。

なにこれなんだこれどうなってるのこれ!

とても嬉しいのですが正直怖いです。ガタガタブルブル。

壁|w・)裏切らないように少しでもがんばりたい、ですよ。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ