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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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 ティナの部屋から自室へと戻ってきたリリアは、寝室に入ると机に突っ伏した。

 あの後もずっとティナとセーラによるリリア賛美は続いた。何があってあれほど評価されているのか全くもって分からない。最初は恥ずかしくなっていたが、最後の方になると呆れることしかできなかった。

 結局リリア自身は大して話をすることもなく、セーラと共にティナの部屋を辞してきた。無駄な時間を使ったような気もするが、セーラはティナに対して好印象を抱いたようなので良しとする。それが謎のリリア賛美によるものなのが納得いかないところではあるが。


 ――途中経過はもう意味不明だったけれど……。これでいいのよね、さくら。

 ――うん。ばっちり。今週もお疲れ様でした、リリア。

 ――さくらもお疲れ様。ああ、本当に疲れたわ。特に最後でどっと疲れた……。

 ――あはは。まあ嫌われるよりはよっぽどいいよ。この調子でいこうね。


 簡単に言ってくれるが、リリアの心労はかなりのものだとさくらは分かっているのだろうか。言っても仕方がないので言わないが。


 ――さてさて、明日はお待ちかねの週末だね! 自習日だね! お出かけしようよ!

 ――貴方は自習の言葉の意味が分かっているのかしら?


 呆れつつも、リリア自身明日は出かけるつもりなのであまり強くは言えない。出かける先は決まっている。先週は夜会のためにあまり巡れなかった南側の街巡りだ。今回はアリサたちにも事前に協力を要請している。特に反論されることなく、協力してくれることになっていた。

 もっとも、やはり歓迎されているわけではないらしく、諦念が感じられる苦笑だったのだが。


 ――明日はゆっくり回れるね。リリア、私は苺大福が食べたいです。

 ――食べるのは私なのだけど……。


 そんな会話を交わしながら、リリア自身も明日に期待を膨らませていた。




 翌日。アリサと共に自室を出て、前回着替えた教室と同じ場所に入った。手早く着替え、アリサに見送られてリリアは門へと向かう。やはり前回と同じく、いってらっしゃいませとにこやかに送り出された。


 ――今日はちょっと遠くまで行ってみようよ。

 ――いいけど、道は覚えておきなさいよ。私は食べることで忙しいから。

 ――開き直ってるね。でも了解だよ、道は任せてその代わりに美味しいものを食べてね!


 そうしてさくらと共に街を歩き始めた。美味しそうなものを見つけては、購入して食べていく。前回と違い道順は決めていないので、目についたものを食べていっている。リリアは五件目のところですでに帰り道が分からなくなっていたが、さくらに任せているので大丈夫だろう。


 ――ふわあ、さっきのはまずかったけど、これは美味しいね。幸せ……。


 少し、いや本気で不安になってしまうが、大丈夫のはずだ。

 その後も気ままに店を巡り、食べ歩きをしていく。さくらと共に美味しいと思えた店はしっかりと覚えておく。リリアの知らない味、知らないものが数多くあり、とても新鮮だった。

 そのまま昼過ぎになり、そろそろ学園側へ向かって歩こうかと方向転換したところで、


 ――リリアストップ!


 さくらの声が頭で響いた。わずかに顔をしかめながらも周囲に素早く視線を巡らせる。まさか誰か知人がいるのか、と思ってしまうが、リリアの知人でこんなところに来るのはティナぐらいのはずだ。


 ――誰かいるの?

 ――うん。ちょっと驚いた。


 はっきりとしない言い方にリリアは眉をひそめながら、念のために近くの店に入る。その入口から通りを見ていると、見知った人影が目に入ってきた。大勢の兵士を引き連れた一人の少年を。


「殿下!」


 周囲から驚きと歓喜の声が聞こえてくる。リリアにとっては最も歓迎しない相手の一人だ。思わず頬を引きつらせながら、そっと店の中へと逃げた。


 ――どうしてこんなところに殿下が来るのよ……。

 ――いやあ、さすがに私も驚いた。一番来ない人だと思ったけど……。でも、そうだね。王子だから来るのかな。

 ――何のために?

 ――視察、とか? 私も王家が何をしているのか詳しいわけじゃないから、明言はできないよ。


 なるほど、とリリアは頷いた。確かにリリアも、王子が何度かあらゆるところを視察しているとは聞いたことがある。その現場を見たことはなかったが、あれほど物々しいものだとは思わなかった。


 ――うん。ちょっと物騒すぎる。


 さくらも同じことを思ったのか、不思議そうな声音だった。

 しばらく観察を続けていると、どこからか兵士が走ってきた。そして王子を含む何人かに何事かを報告し、それを聞いた一団が歩く向きを変える。リリアがいる店とは反対方向に歩いて行った。安堵の吐息をつき、リリアはその店で小さな焼き菓子を一個だけ買って外に出た。


 ――人か物かは分からないけど、何かを探していたみたいだね。

 ――探しているもののために殿下自ら出てきたの? いくら何でもそれは……。


 ないだろう、と言いたいところだが、あの王子だ。本当に大事なものなら、自分の足で探していてもおかしくはない。それが何かは分からないが、少しだけ興味を覚える。だが、そこまでだ。関わろうとは思えない。


 ――気を取り直して!

 ――そうね。街巡りに戻りましょうか。さあ、次はどこに……。

「リリアさん?」


 ぴたり、とリリアが動きを止めた。うそ、とさくらも絶句する。声のした方向、真後ろへとゆっくりと振り返る。

 レイがそこにいた。


※※※ファンクラブ会議中※※※

ティナ「リリア! メンバーが増えたよ!」

アリサ「私ももちろん入ります。よろしくお願いします」

リリア「仕事しなさい」

さくら『あ、はは、ひひ……! おなかいたい……!』

今日もファンクラブは平和です。



なんとびっくり、日間ランキングにひっそり載っていました。

とても嬉しくなったので午前休みだったのでがりがり書いてみました。

ストックやばい。日曜2話更新できないかも、というか土曜のアリサ視点無理そう。

あれです、見放されないようにがんばります……!


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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