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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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アリサ2

アリサ視点の続きです。

 それからすぐに、殿下がリリアーヌ様に対して婚約破棄を言い渡したのだと知りました。

 これには私だけでなく、屋敷にいた全員が驚いたと思います。リリアーヌ様は殿下に対してはとてもしおらしい態度をしておりました。それも殿下に自分を見てもらうためだったと思います。殿下も決してリリアーヌ様を嫌ってはいなかったように思えます。それが、まさか突然婚約破棄を言い渡されるなんて……。


 どうなることかと思っていたのですが、その後、リリアーヌ様は一週間も部屋から出てきませんでした。それでも、いつ出てこられるか分からない、いつ呼ばれるかも分からないので、私は常に扉の前で待機しておりました。


 純粋に心配でもありました。あれだけ自由奔放なリリアーヌ様がこれほど長い期間、部屋に閉じこもることになるなんて……。

 今日もきっと呼ばれないだろうと思いつつ待っていると、突然部屋の扉が開かれました。


「あ……」

「人の部屋の前で、貴方は何をしているのかしら……?」


 一週間ぶりに出てきたリリアーヌ様は、とても不機嫌そうに見えました。その低い声に、戻ってきてくれたと安心すると共に、どんな叱責が飛ぶかと不安になります。リリアーヌ様の顔を直視できず視線を彷徨わせていると、リリアーヌ様が大きなため息をつきました。


 今まで怒鳴られたことはあっても、ため息をつかれたことなど数えるほどしかありません。それを聞いただけで、頭が真っ白になってしまいます。失望されてしまったのか、と。


「あの……。申し訳ありませんでした、お嬢様」


 そのままリリアーヌ様の言葉を待ちます。軽蔑か、怒声か。それとも……。


「気にしていないわ。少し気が立っていたの。ごめんね」


 それは、許しの言葉でした。間違いなく許されていました。その言葉が信じられず、勢いよく顔を上げてしまいます。私の視線を受けたリリアーヌ様が後退っておりました。

 リリアーヌ様とは思えない言動でした。


「お嬢様!」

「な、なに?」

「体調でも悪いのですか! 何か変な物でも食べたんですか! 待っていてください、すぐにお医者様を呼んできますから! だから今すぐに部屋に戻ってください!」


 こうしておられません。今すぐにリリアーヌ様を寝かしつけて、お医者様を呼ばなければ! きっと心労などでどうかしてしまったのでしょう。待っていてください、リリアーヌ様、今すぐお医者様を連れてきますから!


「ちょっと、どういう意味よ」


 リリアーヌ様をベッドに入れようと試行錯誤してみましたが、結局平気だからの一点張りで聞き届けてもらえませんでした。不安な気持ちは全く薄れませんでしたが、仕方なくリリアーヌ様に従うことにします。何かあった時に駆けつけられるように見守っていれば大丈夫でしょう。


 その後、リリアーヌ様はどこかに行こうとしましたが、さすがにそれは見過ごせず呼び止めてしまいました。理由は単純で、その……。少々、臭かったからです。一週間ずっと部屋にいたのですから仕方ないことではありますが。

 そうしてリリアーヌ様の言葉を待っていると、


「分かっているなら言いなさいよ!」


 突然怒鳴られてしまいました。もっと早くに言うべきだったということでしょうか。怒らせてしまったことに申し訳なく思いながら、謝罪と共に頭を下げます。今度こそ失望されたかと、何をされるかと恐怖を覚えて自然と体が震えてしまいます。ですがリリア様の言葉は違うものでした。


「違うのよ。貴方に言ったわけじゃないの。だからそんなに怯えないで……」


 そんな優しい言葉でした。この場には私しかいません。きっと震えている私に気を遣ってくれているのだと思います。

 その後、お嬢様は自分が臭わないかと聞いてきました。あまりに直接的な言葉に返答に困ってしまいました。素直に臭い、というのはあまりに不敬です。ですがここで否定して、他の人の前に出させて恥をかかせるわけにもいきません。仕方なく私は、頷くことで返事としました。


「申し訳ないけど、湯浴みの用意をしてもらえる?」


 またリリアーヌ様から驚きの言葉をいただきました。あのリリアーヌ様が、私のようなメイドに対して、『依頼』をしているのです。普段なら間違いなく『命令』なのに。

 その後、リリアーヌ様に名前を聞かれました。やはり覚えてもらえていなかったことを残念に思いながら答えると、今度は年まで聞かれました。一応、これらは初めてお会いした時に答えているのですが。


「貴方を私の専属にしてあげる。いいわね?」


 私は驚きのあまり、何も言えなくなってしまいました。私はリリアーヌ様の専属のメイドとして今は働いています。それを忘れられていることに悲しくなりましたが、同時に今度は改めて、リリアーヌ様から専属にしていただけるという言葉を頂きました。忘れられていた悲しみなど吹き飛ぶぐらいに嬉しくなり、あまりに嬉しくてやっぱり言葉は出てこなくて。


 リリアーヌ様はそのまま浴場に行ってしまい、私はしばらく呆然としてしまっておりました。



 浴場から出たリリアーヌ様はお庭に出ると言いました。はっきり言って、今のリリアーヌ様はとてもおかしいです。良い方向なのでしょうが、とてもおかしく感じます。さすがにこんなリリアーヌ様を一人にしておけるはずもなく、私もご一緒させていただくことになりました。


 リリアーヌ様は私たちメイドの花壇に興味を示されたようでした。その瞬間、私は一つのことをずっと思っておりました。つまり、私の花壇を見るなどと言い出さないように、と。


 私の仕事はリリアーヌ様に関わることが多くなっています。それはつまり、少しでもミスがあれば容赦のない叱責がくるということです。そのためにどうしても、必要以上に一つ一つに気を遣ってしまい、他の方よりも仕事が遅くなってしまいます。先輩方はそれを知っているためか、気にしなくてもいいと気遣ってくれているのですが、遅いことには代わりありません。


 そしてそれだけ時間がかかってしまうと、花壇の手入れなど全くできなくなってしまいます。結局私は花壇を放置してしまい、先輩方が雑草が生えないようにと代わりに手入れをしてくれている状態になってしまいました。そんなわけで、私の花壇には何もありません。さすがに見られると何を言われるか分かったものではありません。


「アリサ。貴方の花壇はどれ?」

「私の、ですか? 見てもつまらないですよ。見ない方が……」

「いいから案内しなさい」

「うう……。分かりました……」


 私の願いはあっけなく潰えました。仕方なくリリアーヌ様を私の花壇に案内すると、何もない花壇を見て少し唖然とした後、不機嫌そうに目を細められて私を見てきました。その視線がとても怖くて、私は目を逸らしてしまいました。

 その後は、どうしてこのような状態のかと説明を求められたので、嘘偽り無く答えました。さすがにリリアーヌ様のための仕事に時間がかかっているとは言えませんでしたが。


「それで? 何かを植える予定はあるの?」

「いえ……。まだないですね……」

「そう」


 リリアーヌ様は何かを考えるように黙り込んでしまいました。その沈黙がとても怖くて、けれど何かを言えるはずもなく、静かに言葉を待ちました。


やっぱり終わらない……。

アリサ視点は学園に向かったところで一度終わらせるつもりです。いつまでかかることやら、ですが。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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