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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年前学期

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アリサ1

アリサ視点です。

 私はアリサ・フィリス。アルディス公爵家で働かせていただいているメイドです。私がここで働き始めたのは十二歳の時からでした。父にはまだ早いと止められましたが、メイドとしての先生である母からは許可が下りていたので、父には申し訳ないと思いつつもアルディス公爵家の門を叩きました。


 私自身、まだまだ学ぶべきことはあったので、やはりもう少し勉強をしておきたかったというのはあります。ですが、働きたい場所は、アルディス公爵家はいつでも人を募集しているわけではありません。特に今回の条件として、年齢と、魔法に精通していることとありました。魔法についてはそれなりに自信があったので今回を逃す手はないと思ったのです。


 私は、どうしてもアルディス公爵家で働きたいと思っていました。むしろそのためにメイドになる決意をしたほどです。その理由は簡単なもので、以前命を助けていただいたリリアーヌ様に少しでも恩返しをしたいと思っていたためです。


 いくつかの試験はありましたが、幸い無事に合格することができ、私はアルディス公爵家で住み込みのメイドとして働くことになりました。

 当然ながらまずは先輩方について周り、この屋敷での仕事を覚えることから始まります。先輩方の指導はとても厳しいものでしたが、同時にとても優しくもありました。


 ある日、私は公爵家の方々がどういった人か先輩に聞いてみました。私が知っているのは、私を助けてくれたリリアーヌ様の優しさと旦那様の温和な笑顔だけです。先輩はすぐに教えてくれました。


 旦那様であるケルビン様は文武両道を絵に描いたような方、だそうです。剣の腕も一流でありながら、学問にも通じているとか。奥様であるアーシャ様は魔法の第一人者で、多くの魔法陣を作り出してきました。


 長男であるクロス様は父と同じく剣にも学問にも詳しい方です。私たちに厳しいことを言ってくるそうですが、それ以上に自分に対して厳しくしている方だとか。失敗には真摯に向き合い、誤解で誰かを責めてしまった場合には、例え相手が私たちのようなメイドであっても頭を下げてくるそうです。


 次男のテオ様はご家族と違って、少し体が弱いそうです。そのために家にいることが多く、姉を見かけてはずっとひっついているそうです。姉にとてもよく懐いているそうです。


 その姉、長女、リリアーヌ様。私はとても優しい方だと思っていたのですが……。


「悪いこと言わない。関わらない方がいいわよ、あの方とは」

「え……? どうしてですか?」

「我が儘、傲慢、自分勝手。ものすごく横暴な方で、二言目には叱責がくる。ほんとに……」

「何を話しているのですか」


 初老の女性、私たちに指示を出してくれるメイド長さんが先輩を睨み付けていました。先輩はすぐに頭を下げると、あっという間に逃げ出してしまいました。後で余計に怒られるだけだと思うのですが……。


「アリサ、でしたね」


 メイド長さんに話しかけられて、私は背筋を伸ばしました。


「はい!」

「リリアーヌ様について私からは何も言いません。自分自身の目で見て、判断しなさい。そうですね……。明日から一週間、リリアーヌ様の専属のメイドをしている者と共に行動しなさい。そうすれば、どのような方か分かるでしょう」


 メイド長さんはそう言うと、きびすを返して行ってしまいました。私はそれを見送って、

 ――リリアーヌ様に会える!

 自然と気持ちが高揚し、私は残りの仕事を上機嫌で行いました。我ながら単純だと思います。



 そうして迎えた次の日。私は先輩の言葉の意味を知りました。

 リリアーヌ様は、とても横暴な方でした。どのようなことでもすぐに叱責されてしまいます。その姿を一日見ていると、私の中でのイメージは崩れ去ってしまいました。


 失望、しました。確かに私はリリアーヌ様と言葉を交わしたわけではありません。ですが、私を助けてくれたのだからきっと優しい方なのだと、ずっと思っていました。


 いえ、思い込もうとしていたのだと思います。私の家は男爵家とはいえ、一応は貴族です。当然ながらリリアーヌ様の話は伝わっていました。ですが私は、それを信じようとはしませんでした。


 ですが。それでも。私がリリアーヌ様に命を助けられた事実は変わりません。どのような方でも、私は精一杯この方のために尽くすだけです。そう心に決めて働き続けていると、いつの間にか旦那様よりリリアーヌ様の専属に任命されました。どうやら先輩はとうとうやめてしまったそうでした。


 私はその命令を受けて、リリアーヌ様の専属として働き始めましたが、叱責の回数が増えただけで他は特に変わることもなく、瞬く間に時間は流れていきました。



 そんなリリアーヌ様は、一日だけ、とてもおかしくなったことがあります。ずっと一人でぶつぶつと何かを言っては、思い出したように何事かを叫びます。私にはどうすることもできず、ただただ見守ることしかできませんでした。

 今日のおかしいお嬢様にはできるだけ関与しないと他の方は決めたようで、リリアーヌ様の側には私しかいません。時折命じられることに従っていると、すぐに気づきました。今日は未だ一度も怒られていないことに。


 リリアーヌ様は今も独り言を呟いています。これが何を意味するのか分かりませんが、できればこのまま良い方向に変わってほしいと願いました。

 もっとも、翌日にはいつも通りに戻っていたのですが。



 それからさらに月日が流れ、リリアーヌ様の奇行など忘れてしまっていた頃。寮で生活をしていたリリアーヌ様が突然屋敷に帰ってきました。あまりに急だったので何も用意をしていなかったのですが、リリアーヌ様はご自身の部屋に籠もられるとそのまま出てこなくなってしまいました。


すっぱり最後まで書きたいと思ったのですが、長くなりそうなので諦めました。

間に合いそうになかったので……。

そんなわけで、今回はアリサ視点、リリアが悪霊……失礼、さくらに取り憑かれる前のお話でした。

アリサ視点の続きはまた来週に投下できればいいな、とは思いますが、来週は忙しいのでどうなることやら……。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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