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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
番外編(S)・後日談(A)

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S8 バレンタイン

壁|w・)仕事でチョコレートを並べていたら不意に思い浮かんだネタ。超特急で休憩時間を全て犠牲にして書きました。後悔はしていないがお腹が減った。


※注意! 先ほど書き上げてそのままぶちこんだので、誤字脱字人名間違いがあるかもしれません。あったらごめんなさい!

 さくらには専属のメイドとしてファラがいる。ただメイドといっても、さくらとしては友達のような感覚だ。今もさくらに与えられた部屋に招き入れて、のんびりと会話を楽しんでいた。ついでとばかりにリリアも連れ込んでいる。リリアはすでに諦めているのか黙って同じテーブルで紅茶を飲んでいた。


「この時期になると、地球のイベントを思い出しますね」


 ふとファラがそんなことを言った。今日の日付を思い出し、ああ、とさくらは頷く。


「バレンタインだね! なに? ファラもチョコレートをあげたりしたの?」

「ええ、まあ、その……。本命を……」

「よしそいつ教えろ爆発させに行くから」

「やめてください。それに別の世界の話です」


 ちっ、とさくらが大きく舌打ちをする。それを見ているファラが苦笑した。


「ばれんたいん?」


 リリアが言葉の意味が分からなかったのか首を傾げた。この世界にはない風習なので当然だろう。


「ちょっとしたイベントだよ。友達やお世話になった人にチョコレートをあげるの。好きな人には本命の手作りチョコをあげて告白するんだよ。女の子の一大イベントだね! 私には無縁だったけどねちくしょう!」

「はいはい」

「流された!」


 もっと構ってよ、とリリアにまとわりつくと、リリアは面倒くさそうにしながらもさくらの頭を撫でてくれる。これがいわゆる、


「ツンデレだ!」

「言葉の意味は分からないけど馬鹿にされたのは分かったわ」

「いだだだだ!」


 リリアがさくらの顔をわしづかみにして力を入れてくる。ちなみにリリアもそこまで力が強いわけではないので普通なら痛みなどないはずなのだが、何故だろう、妙に痛い。本当に痛い。


「ぎぶぎぶ!」

「意味が分からないわね」

「みぎゃあ! 助けてスピル!」


 たまらず自分の部下の精霊に助けを求める。部屋の隅で丸くなっていたスピルは顔を上げ、さくらを見て、リリアの笑顔を見て、なんだいつものじゃれ合いかとばかりにまた丸くなった。


「見捨てられたー!」

「はいはい。いい加減うるさいわよ」


 リリアから解放されて、さくらは自分の席に戻る。ファラはその様子を終始笑顔で見守っている。見ているなら助けてほしい。


「で? バレンタインっていつなの?」


 リリアの問いに、さくらはテーブルに突っ伏しながら答えた。


「明日」

「…………。ふうん……」


 リリアは少し考えるように天を仰ぐと、おもむろに立ち上がった。用事を思い出したわ、と退室していく。


「むう……。忙しかったのかな?」

「そうですね。リリア様も魔導師になられてとても忙しそうですから」


 主にさくら様に関係することで、というファラの呟きはさくらには届かなかった。


「よし! せっかくバレンタインの話が出たし、ちょっとチョコレートを買ってくる!」

「はい。行ってらっしゃい」

「もちろんファラも行くんだよ? はいしゅっぱつー」

「え? ええ!?」


 戸惑うファラの手を掴み、さくらは意気揚々と買い物に出かけた。


   ・・・・・


「お世話になった人にチョコレート、ね……」


 さくらの世界には不思議な風習があるものだ、と考えながら、リリアは言った。


「足りないわ。質よりも量をお願いしたはずだけど」

「す、すみません……」


 今、リリアがいるのは、商談に使われる部屋だ。リリアの目の前には、アルディス家が懇意にしている商人。二人の間のテーブルには、いくつもの菓子、チョコレートが並んでいた。さくらの話を聞いた後、すぐに魔方陣で商人を呼び出したのだ。


「あの、ですが、数を聞いていなかったもので……」

「そう言えばそうだったわね……。それじゃあ、あと二十ほどいただこうかしら」

「二十!? そ、そんなにお召し上がりになるのですか?」

「私が全部食べるわけがないでしょう」


 食べられるわけがないでしょう、とリリアが不機嫌そうに目を細めると、申し訳ありませんと商人は顔を青くしながら頭を下げた。そこまで怯えなくても、とは思うが、未だにリリアには前のイメージがあるらしい。自業自得なので甘んじて受け入れておく。


「あと、ついでに形とかはどうでもいいからある程度大きめのチョコレートも持ってきなさい」

「はあ……。畏まりました」

「今すぐ、お願いね?」

「畏まりました!」


 慌てたように商人が立ち上がると、失礼しますと退室していく。リリアは満足そうに頷くと、背後へと視線を投げた。そこにいるのは、何がおかしいのか笑いを堪えているアリサがいる。


「何よ」

「いえ。何も」

「…………。まあいいわ」


 言いたいことはあるが、結局何も言わずにリリアは立ち上がった。




 それほど待つことなく、商人からチョコレートが届けられた。一つ一つ、丁寧に包装されたものだ。そして、大きなチョコレートの塊もある。リリアは満足そうにそれを持つと、周囲を警戒しながら移動する。いたずらっぽく笑いながら。




 翌日。リリアは学園の寮を訪れた。すでに卒業しているが、入ることに問題はない。図書室のいつもの部屋に行くと、レイはいつも通りに勉強をしていた。


「あれ? リリア?」


 リリアに気づいたレイが目を丸くする。卒業後はほとんど来る機会がなかったので、驚くのも当然だろう。リリアはレイの目の前まで歩くと、綺麗に包装された箱を取り出し、テーブルに置いた。


「なにこれ?」

「チョコレートよ。さくらの世界には二月十四日にお世話になった人にチョコレートを配るらしいわ」

「へえ……。ありがとう。ただ僕の方がお世話になってることの方が多いような……」

「あらいらないの?」

「いりますもらいます!」


 慌てたようにレイが箱を受け取る。リリアは小さく笑うと、それじゃあ、と踵を返した。


「ちなみにお世話になった人以外にも、好きな人に贈ることもあるらしいわ」

「へ? ……ええ!?」

「ふふ。それじゃあね」


 笑いながらリリアは部屋を出て行く。後には顔を真っ赤にしたレイが残された。


「え? つまりそういうこと? でもリリアだからからかっただけ、ということも……。どっちだ!?」


 その日、レイは勉強に集中することができなかったそうだ。




 その後もリリアはチョコを配って回った。魔導師になってから顔見知りになった人にも配っていく。それはもちろん王城も含まれるため、リリアはついでに王子を訪ねた。


「ほう。そのような風習があるのか」


 チョコを受け取った王子は、何故か納得したように何度も頷いていた。側のテーブルにはリリアのものとは違う小さな箱がある。リリアの視線に気が付いた王子が苦笑して言った。


「あれはクリスがさくら様からもらったものだ。急にここを訪ねてきて、あげる、と一言残して置いていかれた」

「それは……。意味が分からなかったでしょうね」

「ああ。父上ももらったようで、どうしていいのか分からずに困惑しておられたよ。まあ、そういった理由なら、ありがたくいただくとしよう」

「そうしてください」


 朝から姿を見かけないと思ったのだが、どうやらさくらはチョコを配って回っているらしい。ファラの姿も見かけなかったので、振り回されているのだろう。帰ってきたら労ってあげよう、と決めて、リリアは王子の隣にいるクリスにも箱を差し出した。


「あら。私にもいただけるのですか?」

「いらないなら……」

「いただきます」


 即答だった。クリスは受け取った箱を嬉しそうに眺めている。少しだけ気恥ずかしく思いながら視線を外して、


「さっさと食べなさいよ」

「はい。ありがとうございます、リリア様」


 少しだけ顔が熱くなるのを感じて、リリアは踵を返して急いでその場を後にした。




 屋敷に戻った後は家族にも渡す。父の反応はいつものものだったので割愛だ。とりあえずうるさかった。

 夕方になってリリアが自室に戻ると、さくらも戻っていたようでファラとお茶を飲んでいた。自分の部屋で飲めばいいのに、とは思いながらも、口には出さずにリリアもいすに座る。すぐにアリサが紅茶を用意してくれた。


「リリア。どこに行ってたの? 探したのに」


 さくらが頬を膨らませる。リリアがその頬をつつくとぷすぷすと空気が漏れる。


「多分さくらと同じよ」

「へ? ……チョコ配り!? 私まだもらってない!」


 もらえて当然だというその反応が気になるが、リリアは何も言わずに他とは違う箱を渡した。わーい、とさくらが嬉しそうに受け取り、早速とばかりに開封する。


「ファラも」

「え? あ、ありがとうございます!」


 ファラは受け取った箱を大切そうに抱きしめる。リリアはアリサへと振り返ると、


「アリサとシンシアはまた後でね。一緒に食べましょう」

「はい。ありがとうございます」


 そうしてさくらに視線を戻す。さくらは箱の中のチョコ、歪な形のそれを見て首を傾げていた。


「変な形だね」

「悪かったわね。私が作ったらそうなったのよ」

「へえ……。へ!? リリアの手作り!?」

「溶かしてもう一度固めただけの簡単なものだけどね。大切な人には手作りを贈るのでしょう?」


 さくらは目をまん丸にしていたが、やがて笑顔に戻ると、リリアの背後に回ってくる。そのまま背中から抱きつかれた。


「んふふー」


 少しうっとうしいが、さくらが嬉しそうなのでまあいいだろう。


「あ、私もあげる!」


 急にさくらは体を起こすと、どこからか綺麗に包装された箱を取り出してリリアに渡してきた。


「私のも手作り! 受け取れ、私の愛!」

「気持ち悪い。そんな趣味はないわよ」

「私だってないよ! というか気持ち悪いってひどい!」


 ぎゃあぎゃあ騒ぐさくらを片手で抑えながら、リリアは箱を開けて中を見る。リリアのものとは違い、綺麗に成形されていた。不愉快だ。


「なんで!?」

「私より上手だとか、不愉快なだけよ」

「めちゃくちゃだー!」


 リリアはそのさくらの反応に笑いながら、チョコレートを口に入れた。少し甘すぎるような気もするが、たまには悪くない、と思える味だった。




「ちなみにレイに渡したのも手作りよ」

「おお! どういう心境の変化?」

「気まぐれかしらね。まあ、包装は他の適当な店のものを使ったから、気づかないでしょうけど」

「なんで隠したの!?」


壁|w・)友チョコっていいよね。仲の良さがよく分かると思うのです。

仲良くはしゃぐ二人を書くのはいい気晴らしになります。


ちなみに何となく分かると思いますが、このお話ではリリアはすでに卒業しています。



大急ぎで書いたので変なところがあったらごめんなさい。

ではでは。

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