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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
番外編(S)・後日談(A)

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S6 悪夢

壁|w・)番外編その6。

 どうしてこうなったのか。

 考えても分からない。どれだけ考えても、何を間違えたのか理解できない。だが、何かを間違えたことには変わりない。でなければ、自分がこんなところに立っているはずがない。


 リリアは目の前のものを見る。刃のついた大きなもの。体を、首を固定し、刃を落とす道具。即ちギロチン。これから、自分の命を奪うものだ。

 不思議と恐怖は感じない。否、昨夜までは泣き叫び喚いていたが、今は何故か落ち着いていた。もしかすると、狂ってしまっただけかもしれないが。


 周囲にいるのは、一部の貴族。リリアの最期を見届ける者たち。中にはリリアと親しかった者もいる。その中の一人、クリスは沈痛な面持ちでこちらを見つめていた。泣きはらしたかのように目が真っ赤に充血している。

 家族の姿もあった。装いは質素だ。爵位を剥奪されたと聞いていたが、どうやらここにいることは許されているらしい。実際は剥奪ではなく、父が自ら返したそうだが、詳しい経緯をリリアは知らないし、興味もない。自分にはもう関係のないことだ。


 促され、自分の体が固定される。もうすぐ、終わりだ。

 不意に、声が響いた。少女の声、少しだけ顔を上げると、憎たらしい女の顔がかすかに見えた。

 ティナ・ブレイハだ。


「殿下! やめてください! 処刑なんておかしいです!」


 ティナの隣には王子がいた。王子は困惑の表情でティナを見つめ返している。


「もう決まったことだ。これは、変えられない」

「私が、私が悪いんです! だから……!」

「落ち着け、ここでそれ以上言うな……」


 王子がティナの背を撫でる。ティナは泣きそうな表情になりながら王子から目を逸らし、こちらを見た。目が、合った。

 ティナは顔を歪め、すぐに目を逸らしてしまった。王子はそんなティナの背を撫でつつも、こちらを見て、クリスと同じような沈痛な表情を見せた。何を考えているのか、リリアには分からない。


 もしかして、ティナは自分を助けようとしてくれたのだろうか。

 もしかして、ティナは自分が思っているような子ではないのだろうか。

 そんなことを考えるが、しかしやはり今更どうでもいいことだ。もう、終わりなのだから。


 もしも、ティナと友人になんてなっていれば、何かが変わったのかもしれない。今思えば、それも、良かったのかもしれない。想像はあまりできないが、きっと楽しかったことだろう。だがやはり、もう、終わり。

 リリアはそっと目を閉じる。何かが落ちてくる音が聞こえ、そして。


   ・・・・・


 そしてリリアは勢いよく体を起こした。荒い息をつき、胸を抑える。心臓が暴れ回り、落ち着かない。

 今のは、夢だ。だがあまりにも生々しい夢だった。まるで自分がそこにいたかのような、体験したことがあるような、そんな夢だ。


「リリア? 大丈夫?」


 ふわりと、さくらがリリアのベッドの隣に立った。心配そうにこちらをのぞき込んでくる。


「すごくうなされてたみたいだけど……。嫌な夢でも見たの?」


 さくらの問いに、リリアは小さく頷いた。


「自分が処刑される夢だったわね……」

「え……」


 頬を引きつらせるさくらに、リリアは今しがた見た夢の内容を語る。不思議と鮮明に覚えていた。

 そして語り終えた時、さくらは神妙な面持ちになっていた。


「確かに、間違い無く終わりの場面だけど……。どうして今更……」

「あれってやっぱり……」

「あー……。うん。リリアが何もしなかった場合、だね」


 何となく予想はできていたが、やはりそうなのか。しかし、何故リリアが体験していないことを夢に見るのか。不思議に思うが、しかし正直今は、それすらもどうでもいい。

 体が寒い。自然と震えてしまう。それほどまでに、恐怖を刻みつけられた。あの中での自分が何故あれほど落ち着いていたのか、理解できない。


「リリア、大丈夫?」


 さくらの心配そうな声に、リリアは震えながらも小さく頷いた。


「大丈夫なようには見えないね……。気晴らしに散歩でも行く?」

「そう、ね……。そうしましょう」


 歩いただけでこの気持ちが紛れるとは思わないが、何もしないよりはましだろう。リリアはそう判断して、ベッドから抜け出した。




 さくらと共に、外に出る。外の空気は少し肌寒く、しかしそれ故に心地良い。少しだけ気分も晴れる、ような気がする。


「ねえ、さくら」


 リリアが声をかけると、隣に立っていたさくらが首を傾げた。


「貴方は、私が何もしなかったらどうなっていたか、知っているのよね?」

「うん。まあ、一応だけど……」


 さくらが気まずそうに目を逸らした。あまり言いたくない内容なのだろう。さくらが口をつぐむ内容、なのだろう。気にはなるが、聞きたいとも思えない。


「今はもう……。大丈夫なの?」


 あの夢はそう簡単に忘れることができない。心に深く刻みつけられてしまった。少しでも思い出せば、体が震えてしまう。リリアがそうして震えていると、背中に重みを感じた。気づけばさくらはいつの間にか、リリアの後ろから抱きついてきていた。


「重たいわよ」

「失礼な」


 しかしさくらは動かない。リリアも抵抗する気は起きず、やりたいようにやらせておく。やがてさくらが、囁くように口を開いた。


「今のリリアならもう大丈夫。あんなことは起こらないし、私が起こさせない。それとも、私が信用できない?」

「最近のさくらを見ていると信用できないのだけど」

「ひどい!」

「冗談よ」


 さくらと共に、笑い合う。さくらと話していると、それだけで心が軽くなった。


「頼りにしているから」


 小さな声で、そうつぶやく。さくらはしっかりとそれを聞き取ったようで、一瞬の沈黙の後、照れくさそうに笑ったようだった。


壁|w・)誰かが言いました、バッドエンドはどうなっていたの、と。

よろしい、ならば書いてやろう。

と、いうわけで。さくらがいなかったら、のバッドエンド。処刑エンドです。

ちなみにこれ、何があったのかというと、リリア様、王子様を刺しています。

本編にあたるあの部分ですね。本編では濡れ衣でしたが、こちらでは実行犯でした。


壁|w・)え? 中編? ……ごめんなさい、忘れてください。


あ、ところで。

アリアンローズ様のホームページが更新されていました。

『取り憑かれた公爵令嬢2』の情報も出ています。表紙も出ています!

リリアがかわいいので是非是非ごらんになってください。

と、いうわけで。9月発売予定です。

休暇の部分をがらっと変えたので、是非ともご確認いただければ、と。

よろしくお願い致します。


ではでは。


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