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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
番外編(S)・後日談(A)

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206/259

A1 顔合わせ1

壁|w・)後日談その1です。いわゆる蛇足です。

 さくらがリリアに再び取り憑いた日。リリアは自室でさくらと休暇の間のことを話していた。もっとも、リリアはこの部屋でさくらから教わったことを紙にまとめていただけだが。それを話すとさくらは予想以上に食いつき、それを見たいと言い出した。

 朝までリリアが座っていたいすにさくらが座り、興味深そうに読みふけっている。さくらが知っていることばかりだろうに、何が面白いのか。


 リリアはその様子を別のいすに座り眺めている。少しだけ緊張してしまうのは何故だろうか。

 窓から差し込む光が赤くなり始めた頃、扉がノックされた。扉へと目を向け、今はアリサがいないことを思い出して自ら立ち上がる。扉の方へと向かうと、口を開いた。


「だれ?」

「あ、リリア様。アリサです。その、少し心配になりまして……」


 戻ってきてからさくら以外と話していないことを思い出し、小さく自嘲気味に笑う。さくらを見ると、こちらを見ているさくらと目が合った。


「読み終わったの?」

「まだ途中。でもよくまとめられてる。すごい」


 素直な賞賛の言葉に、リリアは少しだけ嬉しく思い、しかしそれを顔には出さずに言う。


「そう。ありがとう。ところでアリサとシンシアを紹介したいのだけど、いいかしら?」

「へ? 知ってるよ?」


 不思議そうに首を傾げるさくらに、リリアは呆れたようなため息をついた。


「アリサとシンシアは知らないでしょう。一応、さくらのことは話してあるけど……」

「あ、話したんだ? うん。いいと思うよ。じゃあ会おうかな」


 リリアは頷くと、扉へと振り返った。アリサを呼ぶと、すぐに返事がきた。


「アリサ。シンシアを呼んできてもらえる? 二人で部屋に入ってほしいのだけど」

「部屋に、ですか? でも……。いえ、畏まりました。シンシア!」


 アリサが少しだけ声を大きくしてでシンシアを呼ぶ。すぐに扉の向こう側から、誰かが廊下へと降り立ったような音が聞こえてきた。どうやらずっと部屋の側にいたらしい。リリアは小さく苦笑しながら、扉を開けた。




 部屋の中央で、さくらが興味深そうにアリサとシンシアを見つめている。アリサとシンシアの二人は緊張しているようで、表情が硬い。さくらが大精霊だという話は聞いているのだろう。緊張するのも当然だ。ある意味では王よりも上の立場なのだから。

 さくらは見た目はただの少女だ。ただし、浮いている。ふわりふわりと。地面に足をつけずに、浮いている。それだけで人ではないとすぐに分かる。


「本当にただの幽霊にしか見えなくなったわね」

「リリア、聞こえてるよ?」


 リリアの小声にさくらが反応する。リリアはそっと目を逸らした。


「アリサ。シンシア。この子がさくら。今は大精霊らしいわ」

「はろーおはようこんばんは! 初めまして!」


 さくらが片手を上げて元気な声で挨拶をする。挨拶されたアリサとシンシアはびくりと体を震わせ、目を丸くして助けを求めるようにリリアを見た。リリアにとってはさくらの元気の良さはいつも通りなのだが、初めて会う二人にとっては少し刺激が強いのかもしれない。どう返していいのか分からないのだろう。

 リリアは少し考え、全てをなかったことにして流してしまうことにした。


「さくら。知っていると思うけど、アリサとシンシアよ。仲良くしてあげて」

「あいあいさー」


 アリサとシンシアは未だ戸惑ったままで挨拶を返していないが、さくらは気にしないらしい。人懐っこい笑顔を浮かべ、二人へと言う。


「冬月さくらです。あ、さくらが名前だよ。よろしくね」


 さくらの笑顔に、アリサとシンシアは安堵からか吐息した。


「アリサ・フィリスです。よろしくお願い致します、さくら様」

「シンシアです。よろしくお願い致します」


 二人がさくらへと丁寧に頭を下げる。それを見たさくらが少しだけ寂しげに顔を曇らせたことにリリアは気づいたが、何も言わずにおいた。


「あの、お伺いしたいことがあるのですが……」


 アリサがおずおずといった様子で言うと、さくらは少し驚きつつも、嬉しそうに破顔した。


「なに?」

「さくら様は、お食事はどうなされるのでしょうか?」

「ああ、そう言えば私も気になるわね。食べられるの?」


 リリアも便乗して聞くと、さくらはすぐに頷いた。


「必要かどうかと聞かれると別にいらないんだけど、食べられるよ。というより、食べたい。美味しいもの。あとどら焼きとか苺大福とかカレーライスとか!」


 あとはあとは、と次々と料理や菓子の名前を挙げていく。アリサは唖然としてそれを聞いていたが、すぐに我に返ると真剣な表情になった。さくらの挙げていく料理を頭に叩き込んでいるのだろう。甘いものが多く、リリアは少しばかり呆れてしまった。


「さくら。また今度一緒に買いに行きましょう。今すぐ食べたいわけでもないのでしょう?」

「うん。というより一緒に食べる人が、もっと言えばリリアが食べないならいらない。一人で食べても寂しいだけだし」


 アリサへと目を向けると、小さく安堵の吐息を漏らしていた。もしかすると、さくらが挙げた料理や菓子を全て出すつもりでいたのかもしれない。さすがにそれはリリアとしては避けたいところだ。食べきれるわけがない。


「さくら様」


 アリサが名を呼び、さくらが首を傾げてアリサを見る。


「私たちでお手伝いできることがあれば、何なりとお申し付けください」


 そう言って、アリサとシンシアが頭を下げる。何故この二人が、と思いもするが、さくらはリリアと共にいることが多いだろうと考えたのだろう。リリアとしても赤の他人にさくらの面倒事を振ろうとは思えないので、この二人が中心となってくれるなら言うことはない。


「今さらっと失礼なこと考えなかった?」

「気のせいよ」

「まあいいけど……。あ、アリサさん! じゃあ早速一ついいかな!」


 さくらが勢いよく手を上げると、アリサは少し驚きながらも頷いた。


「もちろんです。あと、どうぞ呼び捨てにしてください」

「え? 目上の人を呼び捨てにはできないよ? シンシアさんも同じく」


 アリサとシンシアの頬が引きつり、リリアは思わずため息をついていた。さくらは今の自分の立場が分かっていないのかもしれない。と、そこまで考えてリリアはさくらを見た。


「さくら。私は呼び捨てじゃないの」

「リリアはお姉ちゃんみたいな感じなので却下」

「…………。そう」


 口元が緩んでしまいそうになるのを隠すためにそっぽを向く。アリサが微笑ましそうにこちらを見ていたような気がしたが、きっと気のせいだ。そういうことにしておこう。


明けましておめでとうございます。

のんびりまったり書いていきますので、今年もよろしくお願いいたします。


後日談です。この顔合わせはおそらく九話構成です。

後日談というよりは、今後のお話のための繋ぎのようなものですが。

三が日以降は奇数日に投稿します。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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