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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
3学年

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「レイはどうするの?」

「僕は父上次第、なんだろうけど……。好きにしていいって言われてる。貴族の人たちはうるさいけど、王様の父上がそう言ってくれているから、どうにかしてくれる、はず。まあまだ僕はあと一年、学校があるけど。その後は、その時考える、けど……」


 レイが意味ありげにリリアへと上目遣いで見てくる。リリアはそれに気づきながらも無視すると、レイはため息をついて肩を落とした。


 ――レイは嫌い?

 ――どちらでもないわよ。それに、好きだとしても、私が応えてあげることはできないでしょう。

 ――ん……。そうだね。


 リリアはサンドイッチを食べ終えると、テーブルを指で叩いた。レイがはっとしたように我に返り、すぐさま紅茶を用意する。いつの間にかこの合図だけで、レイが淹れてくれるようになっている。仮にも王族を使うことに躊躇いがないわけではないが、レイならいいだろう。


 ――さらっとひどい。


 レイが勉強道具を取り出してテーブルに広げる。教材を手に取りながら、リリアは早速レイに指示を出し始めた。




 レイとの勉強が終わり、自室へと戻る。自室に入ると、メイド服姿のティナがいた。


「あ、リリア。おかえり」


 何も言わずに扉を閉じた。


 ――ねえ、さくら。二週間も空けるだけで、色々と変わりすぎではないかしら。もう帰りたい。

 ――落ち着けリリア。どこに帰るのさ。帰る場所は目の前だよ。色々と同感だけど。


 さくらと共にため息をつき、もう一度扉を開ける。やはり変わらず、メイド服姿のティナが待ち構えていた。


「ティナ……。それは、どうしたの?」

「うん。似合わないかな?」

「知らないわよ……」


 頭痛を堪えるようにこめかみを押さえながら、リリアはいつもの席に座った。テーブルを叩くと、すぐにいつものようにアリサが紅茶を……。


「ではティナ様。淹れてみましょうか」

「うん」


 ティナがアリサの指導を受けながら紅茶の用意をする。呆然としたままそれを見守っていると、やがてティナがリリアの前に紅茶を置いた。自分のものも用意したようで、ティナはリリアの対面に座り、目の前に自分の紅茶を置いた。

 ティナがじっとリリアを見つめてくる。それの意味するところを察して、仕方なくリリアは紅茶のカップに口をつけた。


「まあ……。悪くはないわ」

「本当に? 良かった」


 ティナが嬉しそうに笑う。リリアは小さくため息をつき、ティナを睨み付けた。


「で? どういうつもりなの?」

「リリア、怖いよ……。フリジア様が私の実家で働いているから、卒業してすぐに戻る必要はないみたいで。だからリリアのメイドさんにでもなろうかなって。だめ?」

「だめよ」


 即答すると、ティナが少し怯んだようだった。すぐに気を取り直して、リリアにどうして、と聞いてくる。


「私は貴方を対等な友人として見ているのよ」

「うん。ありがとう」

「はいはい。私のメイドになった場合は対等ではなくなるでしょう」


 リリアの言葉に、ティナが目を丸くした。考えていなかったのか、と思わずため息をついてしまった。


「私は貴方を下に置くつもりはないわよ。気持ちだけ受け取っておくわ」

「うん……。残念。それじゃあ、別のものを考えないと……。リリアは、魔導師になるんだよね」


 確認するようなティナの問いにリリアが頷くと、ティナは悩むように唸りだした。どうやらリリアの側で働きたいらしい。何故かと首を傾げると、ティナは言う。


「お医者様に言われたんだ。リリアの魔法陣がなければ、私は多分死んでいただろうって」

「そうかもしれないわね」

「うん。だから、リリアは私の命の恩人なんだよ。少しでもリリアのために何かしたいの。もちろんお父さんやお母さんにもちゃんと言ったよ。二人とも、私の好きにしなさいって」


 どうやら突発的な思いつきのようなものではなく、しっかりと考えた末の結論らしい。だがそれならなおさらに、理解はできても納得はできない。


「私は、貴方に恩を売るために助けたわけではないわよ」

「え? あ、うん。それは分かってるけど……」

「私のために何かしたいのなら、貴方のやりたいことをやりなさい。私のことは気にしなくていいから、しっかりと、自分のことを考えなさい。しっかりと考えて、それでも私の側にいたいのなら、少しは考えてあげるわ」


 ティナが目を見開き、すぐに眉尻を下げた笑顔になった。


「リリア、ずるい」

「失礼ね。とにかく、卒業までまだ時間はあるのだから、もう少し考えなさい」


 少しばかり憮然とした表情でそう言い終えると、ティナは頷いた。どうやら納得してくれたようで、リリアは密かに胸を撫で下ろした。偉そうなことを言ってはいるが、やはりティナを下に置きたくないというのが一番の本音だ。

 ティナはゆっくりと紅茶を飲み干すと、よし、と何かを決めたように頷いた。まだ何かあるのかと身構えてしまうリリアに、ティナは笑顔で言う。


「次の休日は予定ある?」


 全く違う話だった。小さくため息をつき、次の休日ね、と予定を思い出す。もっとも、大した予定はないのだが。


 ――さくら。次の休日は最後の休日だけど、何かやりたいことはある?

 ――むしろリリアはないの? リリアがやりたいことでいいよ。


 少し考え、それなら、とティナに言う。


「予定はないわよ。それで?」

「南側に行かない? もちろんお買い物に」


 予想通りの内容にリリアは苦笑しつつ、いいわよ、と頷いた。そしてすぐに、思い出したように言う。


「私は構わないけど、ティナは大丈夫なの? もうすぐ試験でしょう」


 リリアの問いに、ティナはそうだけど、と目を逸らした。何かを言葉にしようとして、しかし上手く説明できないのか口をもごもごと動かしている。しばらく見守っていると、ティナは迷いながらも口を開いた。


「どうしてか分からないけど、なんだか後悔しそうな気がして……」

「そう……」


 リリアは特に変わりのないように生活しているつもりだが、何かしら感じるところがあったのかもしれない。リリアもそれ以上は何も言わなかった。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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