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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
3学年

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壁|w・)読み直しができていないので誤字脱字が散見されるかと想います。

ご了承ください。

なおこの前書きは読み直すができ次第削除します。

 学園主催の夜会当日。リリアはシンシアに用意してもらった空き教室で着替える。ティナたちはすでに会場にいるらしい。


「ティナ様は入口近くでリリア様を待っているそうです。お気をつけていってらっしゃいませ」

「ええ。ありがとう、シンシア」


 礼を言いながら教室を出て会場に向かう。今回の会場も先週の王家主催の夜会と同じ会場だ。参加者が変わっているだけだろう、と思いながら足を動かす。


 ――楽しみだね。

 ――人が変わるだけで何を楽しみにしているのよ。


 リリアが呆れたように言うと、さくらはいたずらっぽく笑う。行けば分かるよ、と。リリアは首を傾げながら歩き続ける。

 たどり着いた会場では、学生が兵士の代わりに受付をしていた。そこから見える会場ではどの出席者も制服か、もしくは質素な衣服だ。リリアが着ているワンピースですら目立つかもしれない。そして、参加者の多くが心から楽しげな笑顔を浮かべていた。


 無論、王家主催の夜会でも皆が笑顔を浮かべている。だがそれは、作り笑いであることの方が多い。心から楽しむ者もいるだろうが、少なくともリリアに寄ってくる者には少なかった。最近ではセーラがとても楽しげに話しかけてくれるが、多くの者はアルディスと繋がりを作ろうとしている者ばかりで相手をするのも面倒なほどだ。

 リリアが受付に向かうと、その側にいたティナが手を振った。楽しげな笑顔で、薄い青色のワンピース姿だ。その両隣のアイラとケイティンは制服で、ティナの様子に苦笑していた。

 リリアがティナの元まで行くと、ティナは満面の笑顔で口を開いた。


「こんばんは、リリア! 来てくれてありがとう!」

「貴方が礼を言うのはおかしいと思うのだけど」


 それもそうか、とティナは笑いながら受付に向かう。受付にいた生徒は笑顔でティナたちに応対し、そしてリリアを見て凍り付いた。


「リリアーヌ、様……?」


 リリアが目を細めると、受付の生徒は慌てたように表情を取り繕った。笑顔で頭を下げ、手元の紙に何かを走り書きする。それを終えると、会場へと送り出された。

 会場のテーブルにはやはり料理が並べられているのだが、今回の料理はリリアには馴染みのないものが多かった。早速手をつけたいと思ってしまうが、まずは主催者に挨拶をしなければならないだろう。ティナに場所を聞いてみれば、


「挨拶? なにそれ?」


 首を傾げてそう聞かれた。


「何それって……。まずは挨拶をしなければならないでしょう。夜会を催した人とか……」

「そうなの?」


 ティナが首を傾げ、アイラとケイティンへと振り返る。ティナの視線を受けて、アイラも困惑に首をかげていた。


「挨拶なんてやったことないかな」


 ティナとアイラがケイティンへと視線を投げる。ケイティンは困ったように笑いながら、言った。


「一度だけ、上級貴族の方の夜会に出席したことがあります。その時は両親に連れられて挨拶をした覚えがあります」


 つまりは上級貴族の夜会の時だけらしい。ケイティンが補足した内容によれば、大きな商会の下級貴族なら知っているかもしれないが他の下級貴族や平民はそういったことは知らないそうだ。


「へえ、そうなんだ」


 ティナとアイラが驚いたように言って、ケイティンが呆れたようにティナを半眼で見つめた。


「殿下から招待を受けた夜会では挨拶をしなかったの?」

「うん。しなかったよ」


 ケイティンが眉をひそめ、リリアはそうでしょうねと頷いた。


「主催者側である殿下がティナを迎えに来たのではないの? 最初から一緒にいたのなら挨拶なんて自然に終わっているでしょう」

「あ、リリアすごい。殿下が迎えに来たよ」


 その時のことを思い出したのか、三人が遠い目になった。平民や下級貴族が集まる二階に王子が顔を出し、しかも女生徒を一人連れ出したのだから当然騒ぎになっただろう。終わっている話とはいえ、何をしているんだと思ってしまう。


 ――そんなことよりごはん!


 さくらに促されて、リリアは苦笑した。挨拶の必要がないのなら何も気にする必要はないだろう。


「私はこの夜会に詳しくはないから、ティナに任せるわ」


 ティナにそう言うと、彼女の目が輝いた。思わず頬を引きつらせたリリアの腕をティナが掴む。


「それじゃあ、こっち。あの料理がすごく美味しくて……」


 ティナの案内のもと、様々な料理に手を出した。純粋に美味しいものもあれば、何故これを勧めたのか、むしろなぜここにあるのかと疑問に思うような料理もあった。そのどれもが、例外なくリリアの食べたことのない料理ばかりだ。

 ティナが満足した頃には、さすがに限界を感じて隅に用意されているいすに座り込んでいた。


「リリア。大丈夫?」

「連れ回した貴方がそれを言うの?」

「あ、あはは……」


 ティナがそっと目を逸らし、リリアはやれやれとため息をついた。会場へと視線を戻すと、誰もが笑顔で語り合う場を見ることができる。一部の人は見るからに何かしらの駆け引きをしているのだろう者もいるが、やはり多くは純粋にこの夜会を楽しんでいた。


 ――夜会というよりただのお祭りだね。

 ――祭りと言われても、私はよく分からないけれど。

 ――あー……。そっか……。


 無論この街にも祭りはある。街の人の多くが騒ぐ祭りだ。だが上級貴族の多くはその喧噪を嫌い、いつも通りに過ごしている。もっとも、リリアの家族ならリリアの知らないところで参加していそうではあるが。


 ――お祭りにも行きたいね。ティナたちも一緒に。きっと楽しいよ。

 ――さすがにそれは……。一応、考えてはおくけれど……。


 さすがに祭りとなるとこの夜会以上に遠慮したいところだ。この夜会ですらティナについて行くのがやっとだったというのに、祭りになるとそれすら難しいかもしれない。おそらく早々に諦めて引っ込むことだろう。それが容易に想像できる。


 ――楽しいから大丈夫!

 ――精神論ね。


 苦笑しつつも、皆で祭りに行くというのは楽しいかもしれない、と思ってしまう。ティナに迷惑をかけてしまうかもしれないが、近いうちに聞いてみよう、と心の中で頷いた。

 その後はティナと少し会話をして、会場を後にした。




「うりゃあ!」


 さくらの勇ましいかけ声。リリアは即座に反応すると、勢いよくその場にしゃがむ。背後から飛びかかってきたさくらはそのままリリアの頭上を飛び越えて、地面に顔面から突っ込んだ。べしゃり、と倒れて動かなくなったさくらをしばらく見つめ、リリアはよしと頷いて桜の木をよく見ようと歩き始める。


「ちょっと! 心配してよ!」


 さくらが勢いよく起き上がり、叫んでくる。リリアは億劫そうに振り返り、あからさまな舌打ちをした。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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