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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
2学年後学期

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 リアナを見て、リリアは内心で戸惑ってしまった。


 ――この子だけ反応が違いすぎて対処に困るのだけど……。

 ――以前レイを助けたことが本当にすごく評価されてるみたいだね。今のやり取りについても仲が良いなぐらいにしか思ってないんじゃないかな。

 ――結構本気だったのだけど。

 ――レイは仮にも王子様だってこと分かってる?


 仮にも、とつけるあたりさくらも言い過ぎだとは思うが。リリアは、分かっているわよと首を振り、立ち上がった。


「いつまでに聞いておけばいいかしら」

「僕たちは毎週休みの日にここを借りています」


 つまりは来週までに聞けばいいということか。答えてくれたアモスに頷くと、リリアは踵を返した。


「それでは来週までに聞いておきましょう。レイ。経緯は分からないけれど、協力するのならしっかりやりなさいよ。あと、勉強も疎かにしないように」


 そう言ってレイに釘を刺しておくと、レイは苦笑しつつももちろん、と頷いた。


「他にも何かあれば言いなさい。少しだけなら協力してあげるから」


 最後に四人にそう言うと、四人ははい、と元気な声で返事をする。リリアは満足そうに頷くと、扉を開けた。


「噂なんて当てにならないもんだな……」


 エルクのそんな呟きが聞こえたような気がしたが、リリアは気にせず扉を閉めた。




 ――やって参りました王子殿下のお部屋。部屋を守る兵士さんが怯えた目でリリアを見ています。見て下さい、このラスボスの風格。リリアの前では兵士さんなんて赤子も同然です。

 ――いい度胸ね。

 ――ごめんなさい冗談です。


 リリアは小さくため息をつき、顔を上げる。そのため息をどう解釈したのか、兵士二人が息を呑んだ。仮にも王子の護衛なのだからもう少ししっかりしてほしい。


 ――まあ、手を出せる相手じゃないから余計にね。兵士さんは手が出せないのにリリアの一言でアルディス公爵が動くかもしれない。恐怖しかないよ。


 そういうものだろうか。リリアが兵士二人へと微笑みかけると、あからさまに安堵のため息をついた。その行動が無礼だと思うが、今は気にしないでおくべきだろう。


「殿下はいらっしゃいますか?」

「はい。少々お待ちいただけますか」


 兵士が扉をノックすると、メイドが顔を出した。兵士が何事かを告げると、メイドの視線がリリアへと向く。少しだけ怯えたような目だ。リリアが首を傾げると、何故かこのメイドも安堵のため息をついた。


 ――前回が強烈だったからね。

 ――ああ……。なるほどね。


 メイドが扉の奥へと姿を消し、しばらくしてから戻ってきて扉を開けた。メイドに促されて部屋へと入る。王子とクリスが向かい合って座っており、こちらを見ていた。


「珍しいな、お前から訪ねてくるとは。何か用か?」

「ええ。お願いしたいことがありまして」


 リリアがそう言うと、王子は少しだけ驚いたようだった。クリスと目を合わせ、次にクリスが聞いてくる。


「私は退室した方が……」

「構わないわ。むしろ二度手間になるからいなさい」

「は?」


 クリスが怪訝そうに眉をひそめた。リリアはリアナから受け取った紙を取り出すと、それをテーブルに置いた。


「なんだこれは?」


 王子がそれをのぞき込み、読み始める。クリスも同じくだ。その間にリリアのためにいすと紅茶が用意された。


「あら。ありがとう」


 用意をしてくれたメイドにそう声をかけると、メイドは一瞬だけ動きを止め、すぐに勢いよく頭を下げてきた。そして慌てたように去って行く。何か気に障ることでも言ってしまっただろうか。


「リリア。私のメイドをいじめないでほしいのだが」


 王子の声にリリアは眉を寄せて王子を見る。しかし王子は薄く笑っていた。分かっていて言っているのだろう。リリアは小さくため息をつくと、いすに座った。


「それで、これは何だ?」


 王子の問い。リリアは先に紅茶に口をつけて、


「あら、美味しい。アリサほどではないけれど」

「メイド自慢はいい」


 リリアは肩をすくめると、大したものではありませんと前置きしてから言う。


「先ほどレイと会ったのですが、壁新聞というものを作ろうとしている子たちと一緒にいました。どうやら協力しているようなので、私も少しだけ手伝おうかと。その子たちに頼まれて、殿下と簡単に会うことのできないその子たちに代わって聞きにきました」

「ほう……。その者たちは貴族なのか」

「いえ、平民ですが」


 王子とクリスが凍り付いた。信じられないものを見るかのようにリリアを見てくる。その視線が気に食わずリリアが憮然とした表情になると、王子とクリスは慌てて誤魔化すように咳払いをした。


「一通り読んでみたが、クラビレスのことに関するものが多いな。隣の友好国について興味を持つのはいいことだ」

「答えていただけますか?」


 王子は顎に手を当て考え始める。だがすぐに、いいだろう、と頷いた。


「明日までに別の紙に答えを書いておこう。それで構わないか?」

「はい。ありがとうございます、殿下。クリスもお願いできる?」

「あら。殿下だけではないのですか?」


 意外そうに言ったクリスに頷きを返す。


「多くの人の意見が欲しいそうよ。この後で他の上級貴族の方の部屋も回ろうと思っているわ」

「それはやめてやれ」

「は……? 理由を聞いても?」


 リリアの目が細められる。王子は頭痛を堪えるような渋い表情になり、ため息をつきながら、それだ、と言った。


「リリアーヌ。お前が行くと相手には拒否権がなくなる」

「まあ、心外ですね。……その通りかもしれませんが」


 小声で付け加えるように言ったリリアの言葉に、また王子とクリスが目を見開いた。しかしすぐにその表情を取り繕い、クリスが言う。


「リリアーヌ様。女性の皆様には私からお願いしておきます」

「男側はグレンにでも頼んでおく。どうだ?」


 断る理由は特にない。念のためにさくらにも聞いてみれば、いいと思う、という短い答えだった。


「ではお願い致します。来週にまた集まる予定となっているらしいので、それまでで構いません」

「分かった。それまでに集めるようにしよう。それにしても……」


 王子がまじまじとリリアを見つめてくる。クリスも興味深そうにリリアを見ていた。一体何事かと怪訝に思いつつ眉をひそめると、二人は微苦笑して気にするなと首を振った。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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