雨が降ってきた
「病院行ったら途中で雨降ってきた」
と、言う割にはほとんど濡れた所が見当たらない健一。
「どうだった?」
「道の途中に100均があったからレインコート買ったよ。チャリだったから傘はな」
「そっちじゃなくて病院の方」
「なんだ病院の方か……別になんもなし。発症するまでは健康そのものだそうですよ」
二人の病気は潜伏期間があり、発症するまでは自覚症状のない病気だった。
「やっぱりかー。ありがたいことなんだけどその所為か全然実感わかないのよね」
「入院しなくて済むし、通院も楽だからいいだろ」
「そうなんだけどね」
「雨だからって憂鬱な話はやめて、別の話にしようぜ」
健一は暗い話が嫌いだ。
逆にさつきはたまに暗めの話を持ち込む。
「じゃあ天気予報の話ね。降水確率って、この空模様では今までこの位の確率で雨降りましたよ、って事なんだって」
「マジかよ。じゃあ0%でも降る可能性0じゃないってことか」
「10%でもたまに降るし、40%だったらほぼ降るしね」
さつきの体感では降らないと思っていたのに降ったということが印象に残り、40%の日は降るものだと認識していた。
ちなみに今日の予報では20%とTVは告げていた。
「あーあ、発達した科学を駆使して的中率100%の天気予報やってくんないかな」
「天気位は確実に知りたいね」
「見ろ、濡れはしなかったけど体が冷えてしまったじゃないか。降るって分かってたらもう一枚位なんか着てったのに。暖房つけよ」
「摩擦してあげよっか?」
何言ってるのかは分からないが、何が言いたいのかは分かることをさつきは言う。
「摩擦って……言いたいことは分かるけど、摩擦って……脱げってことか? 逆に寒くなるじゃん。全体を出来るわけじゃないんだし」
「思いつきで言ってみたけどダメかー」
「ダメダメだな」
「素早く、しゅしゅしゅーってしても?」
「もう暖房付けた」
「あ、はい」
適当な事を言うさつきと、それをあしらう健一の日常の一コマであった。
降水確率の話は嘘です。