風邪
「どうしたの?」
休日。
さつきが部屋に入ると冷えピタを貼った健一がベッドで寝ていた。いや、起きては居た。
「風邪をひきました」
「発症したのかと思ってびっくりした」
「縁起でもないことはやめてくれ」
さつきは暗い話も平気でする女だ。
良く言えば葉に着せぬ性格とも言える。
「そっかー風邪かー。あ、ネギ取ってくる」
風邪といえばネギだと思い出したさつきは、健一で実験することにした。
「待て。風邪って聞いて最初にするのがネギかよ」
「え? あ、うん、ごめんね。それじゃあ、その風邪は喉から? 鼻から? お尻から?」
「喉からだな」
お尻発言はとりあえず無視した。
「ふむん……。じゃあ銀のネギ持ってくるね」
「!? ゲホッ、ゴホッ。……おい、酷くはないけど体調悪いんだから変なネタはやめてくれ」
「うーん、銀なら破魔の効果があるかと思ったんだけど」
「ゲーム脳かお前は」
「しょうがない、ちゃんと看病しますか。実はあたし、看護師目指してるから」
前に言ってたメイドはどうした?
と、思った健一だったが、いつものことかと考え直し口にはしなかった。
「えっと……濡れタオル持ってくるね」
「冷えピタしてるけど」
「…だよね」
出鼻をくじかれるさつき。
見ればわかるのに。
もしかしたら意外と風邪に動揺しているのかもしれない。
「それじゃあ、お粥作ってくるね」
「さっき食べたけど」
「……だよね」
時間は昼過ぎ。
そこまで体調の酷くなかった健一は食事を済ませていた。
「だったら体拭いてあげる」
「汗かいてない」
「………だよね」
万策尽きたか……。
と、健一の耳に小さな小さな声が届いた。
なんだか申し訳ない気分になった。
「じゃあ、部屋の隅で静かに泣いてるね」
「いや、そこに居て話相手になってくれるだけで十分嬉しいから」
健一はフォローを込めて少し優しげな言葉を投げた。
さつきは怪訝そうな顔をした。
「なんか、たまにあるけど素直なあんたはちょっと引くかな」
「帰れ」
次の日、今度は二人揃って熱を出した。




