ある山奥で暮らす兄弟
2XXX年四月
ここはシンフォニア王国の王都から大分離れた村にある山の中。
多くの木々は鮮やかな緑の葉をつけてゆさゆさと体を揺らし、小鳥たちは大木の一本の枝に並んで止まり心地良いハーモニーを奏でている。燦々(さんさん)と照らす太陽は木々の陰で薄暗くなった小道に光を与える。
何やら甘い匂いがしている。その匂いに釣られて草の中から兎が数匹顔を出した。
匂いの発信源は、木々に囲まれ小さな小屋からの様だった。
「わー美味しそう!」
「こらっ!ローウェン、食べる前にまず手を洗って来なさい。さっきまで外で遊んでいたんだろう」
「はーい、分かったよ兄さん」
賑やかな声とともに小さな小屋の扉が勢い良く開かれた。そして中から10歳くらいの子供が飛び出してきた。その子供は可愛らしい顔立ちで少年にも少女にも見える。黒髪が彼(もしくは彼女)の幼さを一層際立たせている。
小屋の中にいるもう一人の子供は机の上にお皿を並べている。おそらく食事の準備だろう。
彼は15、6歳に見え、さっきの子供とは違って明らかに少年とわかる顔立ちをしている。所謂、美少年と言われる部類であるだろう。同じ黒髪でも彼の方は、凛々しさを際立たせている。