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審議しようか  作者: ポッポ
はじまりの第一事案
8/12

約束

 東棟三階の一年教室には絆を取り戻した三人の姿がある。そして中庭を挟んだ真逆の位置にある西棟三階にも別の三人の姿があった。


 望遠鏡で東棟の彼らの様子を確認し終えると一段落し、いつもの教室へと戻った。


「良かったね、仲直りできて。」


 教室に戻り真っ先に幸平が口を開いた。二人もそれに頷く。


「でもこれさ、俺たちいなくても解決してたんじゃないか?」


 疲れ気味に祐介が言うとそんなことないさと幸平が拳を握りながら答えた。


「仲直りは言うほど簡単じゃない。一度タイミングを逃すと長々と続いちゃう。俺たちは彼らの仲直りのきっかけを作ったんだよ。」


「きっかけか...確かにあのメールを大和に送らなければ、今日仲直りすることはなかっただろうな。」


 そういうこと、と幸平が言うとパソコンを操作していたひよりが顔を上げた。


「そういえばひらくん。よく最初に先生に西口くんの家庭の事情を聞こうと思ったね。」


 ひよりが言うと幸平はああとひよりの方に顔を向ける。


「大和の交遊関係について聞いてたら偶々ね。」


 交遊関係を洗うのは捜査の基本!とどや顔をする幸平に二人は感心する一方少しイラっときたことは秘密にした。


「ところでひよりは何してんだ?」


 祐介が近づくと、ひよりはノートパソコンの画面を見せた。そこには今回の事件の詳細が記されていた。


「陪審部の事件簿みたいなもの。こうやって活動記録をまとめて、先生方に提出するのが決まりなの。」


 今までの事案からして、まめに目を通されてるとは思わないけど、と付け加えてひよりは作業へ戻った。確かにと祐介も呟いた。


「なあ、何で陪審部って隠れてやるんだ?絶対捜査しにくいと思うし。」


 祐介が聞くと、幸平はソファーに座り直して答えた。


「生徒が陪審しましたって言ったらその審議の結果に腹を立てる人が出てくることも考えられる。」


 それに、と幸平は続ける。


「同じ生徒に悩みって中々言えないでしょ?七不思議なんて得体の知れないものだからみんな素直に本音を書き込めるんだよ。」


 幸平の言葉に納得した祐介だがそれでもやりにくいよなぁと言葉を洩らした。


「まあ、慣れるしかないね、前進あるのみさ!」


 高々と人差し指をかざす幸平に祐介は不安しか感じられなかった。



 *



 翌日、一年三組の教室では学校に登校してきた生徒が会話などをして暇を潰していた。


 そこに突如ドアをガラッと大きく開ける音が響き、その主が明希の姿を捉えると真っ直ぐに歩いてきた。


「おいおい、明希!今度でる新作ゲームめっちゃ面白そうだぞ!」


 ゲームの雑誌を持った大和が近づくと明希は一瞬面倒くさそうな顔になった。


「何よ、今忙しいの後にして。」


 明希は机に目線を向けたまま勉強を続けている。


「なんだお前、こんな時間から勉強なんて。」

「体育祭終わったらすぐテストよ、あんた平気なの?」

「おいおい、俺の頭の良さ忘れたのか?」


 得意気な表情で言う大和に明希は手を止めて大和を向いた。


「ああそうね、ばかの癖に勉強だけはできるもんね。」

「な、誰がばかだ!」

「自覚ない時点でばか決定ね」


 なんだと、なによといつもの会話を繰り返す二人に周囲のクラスメートは驚きを隠せないでいるが、やがてほっとした表情で二人を見守った。


 遅れて教室に入ってきた和人は二人の姿を見て溜め息をついた。その表情は明るい。


「なあ和人、あいつらいつの間に仲直りしたんだ?」


 眺めていたクラスメートに聞かれ和人は笑って答える。


「ん?ああ、今までのは倦怠期っていう新しい夫婦漫才だから。」


 和人の周囲が笑うと遠くから誰が夫婦だとハモった声が届いた。


「大体普通に話しかけたのに適当に流すなんてないだろ!」

「どうでもいい話に付き合いますって顔してたかしら?こっちは勉強中なの!」

「どうでもよくねぇだろ!つーかお前これのどこが勉強中だよ!」


 明希は雑巾を片手に教卓を挟んで明希のペンを持つ大和と向かい合っている。睨み合う両者には緊迫感が漂っているがクラスの雰囲気は至って平和である。


「誰のせいだと思ってんのよ!ペン返してよ!」


 和人はペンを取り合う高校生の図を見て笑いを堪えられないクラスメートたちを見てしょうがないと二人に近づいた。


「もうすぐ先生くるからそろそろ終わりにしろよー。」


 和人を視界に捉えた二人は同時に振り向き、和人は不気味がって足を止めた。


「和人はどっちが悪いと思う?」

「は!?」


 急に二人に訪ねられ和人はうろたえる。


「私たちこれからは和人が決めたことには従うことにしたの、ねえどっちが悪いと思う?大和でしょ!」

「自分で答えるのかよ!ってそうじゃなくて、え?」


 恐らく今回のことで何かしらの落とし前をつけたかったのだと察するがなんとも言えない和人である。


「それってどうなんだ...?」


 本音が溢れる和人にさあさあと二人は迫る。答えないとどうしようもない空気なので和人は渋々答えた。


「.....えっと、どっちも悪い。」

「えええええええええええ!?」


 納得のいかない二人に面倒くさくなった和人は席に戻ろうとしたが当然のごとく捕まった。


「なんで?」


 和人は二人に顔だけ向けきっぱりと言い放った。


「二人の喧嘩で片方が悪かったことなんて一度もないから。」

「なんだよそれ!...でも和人が決めたことだし...」

「...そうね、不本意だけど今日だけは謝っとく。」

「ああ、俺もほんの少しだけ悪かったよ。」

「素直に謝れよ。」


 成長したようで全くしてないのかもしれないと肩の荷が降りない和人だが、そんな二人もまた微笑ましいと内心は穏やかなのであった。



今回は補完みたいな回でしたね。

二人は和人を傷付けないためにはどうしようの会を開いて和人の言うことは聞こうという結論に至りました。どうしようもないですね。


こういうゆるーい話好きですね。あの二人が喧嘩するのを眺める回を50回くらい書けそうなくらい好きですね。どうでもいいですね。


もう更新頻度の件にはつっこまない体でいきましょうか。(ほんとすんませんしたぁぁぁあ!)


次回から体育祭の話になります。良ければ是非、ありがとうございました!



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