後編
最終回です。ちょっと台詞がアレですが(ドレだよ!)
まあ、その、よろしければ・・・。
年齢制限は一応クリアかと。
わからない言葉は、いずれわかるようになります!
虹色マカロン 碧の章 (後編)
「難攻不落かと思っていたら橘がタイプだったとはね。意外、いや、逆に納得できるような・・・」
「あんまり鈍感で子供っぽいから、ちょっとからかっただけよ。ホテルに誘ったら気の毒なくらいうろたえてたわ、童貞かしら」
「ふうん・・・」
藍崎洋介は、唇の端をわずかに上げた。
この人は橘蒼祐とは正反対だ、何を考えているのかまったく読めない。
「アンビバレンツ・・・」
「え?」
「橘がのってこなくて残念だけど、逆に喜んで誘いに乗ってきたら幻滅しただろう?」
そうなんだろうか。
でも、そもそも、本気にされたら冗談だったと言ってかわすつもりだったし。
「ただの冗談よ。そこどいて」
そう言い捨てて、藍崎洋介の隣をすり抜けようとした。
と、
「おっと・・・」
いきなり腕を掴まれて、柱の陰に引き込まれた。
「ちょっと、何す・・・」
「しっ!」
彼が唇に人差し指をあてる。次の瞬間、橘くんがエスカレーターを上がって出口に向かうのが見えた。ここは反対方向で彼には死角になるところだ、橘くんは私たちに気付かずに店を出ていった。
「ここで鉢合わせしたら気まずいだろう」
まったく、抜け目がないというか、すべて見通しているというか。
綺麗な顔をしたただのプレイボーイかと思っていたけど、侮れない。
「そうね、ありがとうって言っておくわ」
「じゃあ、こちらもどういたしまして、と言っておこう」
本当に食えない男だ、言動がいちいち癪にさわる。
「ついでに、橘に告げ口はしないから・・・。口止め料がわりにキスのひとつも欲しいところだけど、まあ今回はひとつ貸しってことで」
「どういうこと?」
意味が分からず、相手の顔を見返す。藍崎洋介は意外そうな顔をしていた。
「もしかして、知らなかったとか?」
「わたしが何を知らなかったっていうの?」
聞き返すと彼はふっと笑った。
「ごめん・・・」
「なぜ謝るの?」
「君を誤解してたからさ」
「誤解って?」
「さっき、ちょうど君の目の前に奴の彼女がいたからさ。彼女の前で橘を掻っ攫って見せ付けるつもりかと」
「ええっ!」
知らなかった。あの時は橘くんしか見てなかったから、周りに誰がいるかなんて全然気付かなかった。でも、だとしたら、ずいぶんと酷いことをした。
謝るべき?だけど、橘くんもたぶん気付いてなかっただろう。
「本当に知らなかったみたいだな」
「当たり前でしょ、知ってたらあんなこと言わないわ」
「そうか、残念だな、君に貸しを作れたかと思ってたのに」
「お生憎さま。でも、あなたも人が悪いわね、黙って見てるなんて」
「あの状況で出て行って何をしろと?」
「それはそうだけど・・・」
「だけど、まあ俺としてはラッキーだった、今までこんなに長く君と話したことはなかったから」
思わず笑ってしまった。
「相変わらず、サービス精神旺盛ね。目の前の女はとりあえず口説いておくとか」
「俺ってそういう印象だったのか、傷つくな・・・」
「あら、今度は同情を引くつもり?」
はあー、と藍崎くんは大きなため息をついた。
「やっぱり難攻不落だ。橘が羨ましい」
「だから、それは誤解で・・・」
「ほんとにそう?」
気付くと、すぐ目の前に藍崎くんの顔があった。
「何が言いたいの?」
「橘がもしOKしてたら、そうなってもいいと思っていたとか」
「ノーコメントよ」
「でもまあ、奴は間違いなく童貞だろうから、とりあえずは避けておいたほうがいい」
「どうして?」
「いろいろと大変だろうからさ、お互い初めてだと」
「え?」
「橘のこと童貞じゃないかとか言ってたけど、君だって処女だろう・・・」
「なっ・・・」
頬が紅潮するのが自分でもわかった。
「あたり・・・」
彼がくすっと笑う。
どうかしてる、こんな単純なトラップにかかるなんて。
「あなたって最低!」
思わず声が尖る。
と、彼は、意外なことに嬉しそうに笑った。
「うん、初めて見た、君の人間らしい顔。失礼なこと言ってごめん。でも、そういう顔が見たかったんだ」
「わざと・・・」
「ごめん・・・」
彼は頭を下げた。
なんて人だろう、この人といると調子が狂う。いつもの自分でいられなくなる。
「ちなみに俺は童貞じゃないから」
「そう、わたしには無関係だけど。じゃあ・・・」
そう言って彼の傍を離れる。何でこんな長話をすることになってしまったのかわからない。
“橘がもしOKしてたら、そうなってもいいと思っていたとか”
そんなこと・・・。
私は頭を強く振って、小走りで店を出て駅に向かった。
今日のことは忘れてしまいたい。
何だか、怖かった。
でも、何が怖いのか・・・
どうしてもわからなかった。
END
あは、あはははは・・・
こんなの書いてよかったんだろうか。
藍崎くんは、また出る予定だったりしますが、見たくないという意見も出そうな気が^^;
ほんと蒼くんと性格真逆・・・。




