表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

中編

どれだけそうやって見つめ合っていただろうか。

彼は一言も言葉を発せず、ただ困惑しているようだった。


長い

永遠に続くかのような長い沈黙。

いや、もちろんそれは錯覚に過ぎない。実際の時間にすれば1分足らずの短い時間だったに違いない。


ふいに、なんだか可笑しくなってきた。

何に?明確な答えはないけど、たぶん彼の慌てぶりが思った以上だったからかもしれない。

突然の誘惑に戸惑うことしかできない、彼はどこまでも真面目で真摯だ。


そう・・・

いっそ残酷なほどに。



くすっと笑みがこぼれて、その途端、本当に笑いたくなってきた。堪えきれずに笑い出すと、彼はますます戸惑った様子だった。それがまた可笑しくて笑いが止まらない。


「いやだ、冗談よ。そんなに怯えなくても取って食ったりしないから大丈夫・・・」


笑いながらそう言うと、彼は心底ほっとしたように深いため息をついた。まったくもう正直者ったらありゃしない。


「冗談キツすぎるよ。中川さんみたいな美人にこんなこと言われたら、男なんてバカだからすぐ本気にするぜ」


からかわれていたと思ったのか、彼が抗議めいた口調で言う。


「橘くんもおバカさんなの?」


彼の顔を見上げながらそう言うと、


「男ってみんなそんなもんだろ」


と、ちょっと怒ったように答えた。


「ふうん、わたしにはずいぶんお利口に見えるけど」


と返すと、彼は不思議そうな表情になった。意味がまるでわからない、といった顔だ。失礼かもしれないけど、見ていて飽きない。

ナチュラルってこういう人のことをいうんだろう、どこにでもいそうで、でも今まで出会ったことがなかった。


「やっぱりやめておくわ、用事を思い出したから。じゃあ、また明日ね」


そう言ってこの場を後にする。

あっけにとられたような表情の彼を見て、少し溜飲が下がった気がした。




エスカレーターで一階へ、そして出口へと向かいかけたとき、


「作戦失敗?」


後ろから涼やかなバリトンが聞こえた。

驚いて振り返る。そこにいたのはよく知った顔だった。


「藍崎くん・・・」


藍崎洋介、やはり同学年で同学部。

こちらは誰が見ても美男で、しかもそれを自分で十分に認識している。

常に女子に囲まれているが、決して特定の彼女を作らないのがポリシーらしい。


「女の子はみんな可愛いのに、誰か一人だけを特別な存在にするなんて、そんな不公平なことはできない」

というのが彼の持論だ。


それもひとつの考え方かもしれない、普通の男が言うと「何をバカなことを」と思ってしまうが、なんとなく納得してしまうのは、この並外れた容姿と洗練された身のこなしのなせる業だろう。


「何のことかしら?」


見られていた。

こういう聞き方をするということは、話も聞かれていたに違いない。

それでも、一応はとぼけてみせる。

藍崎くんは「くくっ」と喉の奥で笑った。そういう仕草のひとつひとつまでもが妙に決まっていて、つい目がいってしまうのが癇にさわる。






新キャラ、藍崎洋介あいざき ようすけくんです。

彼がどういうポジションの人かはこれからおいおい・・・。

真矢さんはイケメンですが、藍崎くんは美形です。

ええ、趣味ですが、何か。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ