その愛を純愛という
こんにちは、美甘です!
今回の短編いつもより長く書きました。
最後まで読んでくださると嬉しいです(>_<)
「ねえねえ、今日は何が欲しい?」
薄暗い部屋の中、彼の声だけが私の耳に響く。
甘くて、優しくて、でもどこかこちらを伺っているような、そんな声。
「何でもあげる。レティアのためなら、何でも」
「……」
「今日は機嫌が良くないね。何か俺、悪いことしちゃった?」
私が黙っていると、彼は少し寂しそうな声で私を抱きしめる。しばらく静寂の時間が続いたが、いたたまれなくなって、私は彼の腕を解きながら静かに言った。
「そんなことは、ない。シルウェ様は、優しい」
「そうだよね!レティアのこと、こんなに愛してるんだもん!」
私の言葉一つで、急にご機嫌になった彼。私が腕を解いたのにも構わず、もう一度抱きしめてくる。
その力は、さっきよりも強く、離れさせないとでも言っているかのようだった。
「だからね、レティアも俺のこと、愛してくれるでしょう?」
「……」
静かに、「はい」としか言わせないような声で彼は囁く。まるで、私が彼のものだと分からせるように。
ーー自分のものだと、実感したいように。
「今日も頑張ったご褒美。レティアの大好きなペロフィリト王国のチョコレート。俺だと思って大事に食べてね」
返事をしなかった私に少し悲しそうな微笑みを一瞬見せて、彼は私に箱を渡した。
「明日も会いに来るから。返事をくれると嬉しい」
かけてあった王族の紋章の入った上着を羽織り、彼は部屋を出ていく。
「最愛の、王女様」
彼がいつも出ていく時に言う言葉は、ずっと私の耳から離れない。
……私は王女じゃないのに。
彼を受け入れてはならないはずなのに。
ーーどうして、一人になると寂しくなるんだろう。
彼女が瞳を落とした先には、足枷のついた真っ白な彼女の足が震えていた。
♡♡♡♡♡♡
「レティア様は王女ではないらしいわよ」
ことの発端は、王族派ではない教会派の公爵令嬢が私の正体を暴いたことだった。
私は、ルミアレート王国の王女として育てられてきたが、本当は、ただの王家のメイドの娘だった。王妃が産んだ王女が幼い頃に病にかかり、髪の色や瞳がそっくりであった私を王女とすり替えた。前例もあり、その際はバレることなく、知っている人はみんな安らかに人生を終えた。その時と同じように王族が縁起の悪いことになって、王族派が力を弱めた隙に教会派が力を強めないよう、大事になる前に隠したのだ。
でもそれも何年も前のことーー。これまで私は、王女レティアとして生きてきたし、王族以外このことについて一切知らないから、誰も私の存在を疑ったことはなかった。だから、こんなことになるとは思いもしなかったのに。
「あたくし、分かってしまいましたの」
真っ赤なドレスを揺らして、紫の瞳を意地悪げに細めて目の前の令嬢は私の耳に口を寄せた。
「あなた、王女ではないのでしょ?」
ドックン、ドックン。
王女、じゃない……。バレたらダメなのにっ。
このことが公になれば、私なんて、お父様はばっさりと切り捨てる。
ーー国をこれからも動かしていくために。
「あら……あたりなのですわね?」
ふふふふっと令嬢は真っ赤な唇を歪ませる。
いつもなら、王族に対しての失礼な態度を謝らせ、爵位を落とすまでさせられるのに。
違うと、言えるのに。
頭の中で、お父様の声が響いた。
(「お前は、本物の王女ではない。それはわきまえておけ」)
ーー反論、できない。
「王族も落ちぶれたものね、教会派で正解だったわ。ねえ、偽物王女さん」
拳を握って少し俯いた私を見て、令嬢は笑い、私の元を去っていった。
そこからはあっさりと国に広まって、私はメイドの娘だと判明。お父様も思っていた通り、私を助ける気などなく民衆にギロチンにかけられそうになった。
……ここ、までか。どうして私は生まれてきたのかなあ。一度でいいから、誰かに愛されたかったな、必要とされたかったな。
ーーそんなこと、いまさら思っても遅いか。
悲しみと自分へのあわれみを持った複雑な感情で処刑台に立っていると兄王子であったシルウェが走ってきた。
え?
あまりにも全速力で走っているものだから、その場にいた全員が驚いていたが、彼はそんなこと気にする様子はなく、私の前へ立って民衆の前で叫んだ。
「この国の民の者、この王女・レティアは嘘をついて生きてきた。しかし、王女として教育を受け、今日まで皆と同じ人間の一人として生きてきたんだ!どうか許してやって欲しい」
必死にそう言った兄を見て、私はさらに驚いた。
……私にも、味方になってくれる人がいたんだ。
私の瞳からはポタポタと雫が落ちた。
その件もあり、国民からも王族派協会派関係なく支持が高かった兄のおかげで、私は何とか一年の城での監禁刑で済むこととなった。
もしかしたら、死んだ方がマシだったのかもしれない。生きていても孤独な中、国の政治のために働かされるだけだから。
でもーー生きてきて、初めて気づいてしまった。
愛、というものに。
大事な人ができてしまったことに。
毎日毎日部屋にいるだけなのに、どんどん兄の存在が膨らんでいった。
ーーそして、現在に至る。
「レティア、レティア〜。聞いてよ、お父様がね、ひどいんだよ!レティアと会う暇が会ったら仕事しろってうるさいんだよ〜!俺はいつも本来の倍以上の仕事終わらせてるのにさ〜ひどいよ!レティアもそう思うでしょ?」
兄・シルウェは、私が監禁刑になってから毎日会いにきてくれていた。
ジャラ
私が、この部屋から出られない、足枷のついた罪人でも。
「そう、なのですか」
「そうなんだよ〜」
昔からの癖だったが、お父様……国王に私は王女ではないと影で言われ続け、家族という存在を感じたことがなかった。王女ではないのは事実だから、仕方がないのだけれど。
「でもね、レティアに会ったらそんなのどうでも良くなっちゃった!本当、生きてるだけで、レティアは俺の癒しだよ〜」
「シルウェ様にそう言っていただけるなら、生きていた甲斐がありました」
兄であったこの人も、二人の時はずっと様づけをして呼んでいた。本来なら、私なんかが話しかけてもいいような人じゃないから。
「またそんなこと言う、レティアは生きていないといけない存在なんだよ。レティアが死んだら俺もあと追って死んじゃう」
「時期王になられるお方が冗談でもそんなことを言ってはいけないです」
でも少し軽薄で、サラサラと冗談を並べる彼に私は少々生きていて良かったと思う。……この国が滅ばないか心配になるから。ははは……。
私が真面目にそう言うと彼はフッと真剣な顔をして言った。
「嘘じゃない。レティアは生きていて俺のためにも」
「へ……?」
「ああ、本題とずれちゃった。あのね、レティア相談なんだけど……」
一瞬見せた真剣な顔を彼はすぐに消し、にっこりと愛想良い微笑みをつくった。そして私の耳に顔を寄せた。
「結婚しよ?」
……え?
いま、なんて?
私が固まっていると、彼はまた笑う。
「俺と、結婚してくれない?」
サラッと言われた言葉に私は目を丸くする。何を言われたのか、理解するために時間がかかった。
「え?」
ようやく声を出すと、彼は私の手を握って見つめてきた。
「本当はね、ずっと隠していくつもりだったんだけど。ずっと君が好きだったんだ。本当の王女ではないと分かった今、血は繋がっていないから結婚できるし、時期王の正妃になる者を悪く言う奴は居なくなる。だから……どうかな?」
少し恥ずかしそうに、頬を赤らめて彼は言う。見たことのない彼の表情に私の心がときめくのを感じた。
私が、好き……?本当に?
シルウェ様が?私を?
心臓がバクバクし、私は少し下を向く。
きっと彼と結婚すれば、幸せになれる。処刑されそうになった時も助けてくれたのは彼だったし、国民からも支持の高い彼は聡明で人を惹きつける力があるのは間違いない。毎日こうして会いに来てくれる優しい彼とならきっと生涯、孤独になることはないだろう。
そしてーー何より、私は今、彼と生きたいと思っている。
でも。
本当にいいのかな?
一応罪人である私と結婚するなら、彼の名声は傷つくだろう。私のせいで、彼が傷つくのは嫌だ。
(「お前は、本物の王女ではない。それはわきまえておけ」)
何度も私の頭にはお父様の声が響く。
王女ではない。本来ならシルウェ様と私は赤の他人。
幸せにーーなってはいけない。
「っ……ごめん、なさい」
震える声でそう言うと、シルウェ様は少し顔を歪ませた。いつもの軽薄な顔とは真反対の苦しそうな顔で。
「分かった。急に言って混乱させてごめんね。でも、諦めるつもりはないんだ。また、話を聞いて欲しい」
でも、そう言って私の手を強く握った後、少し微笑んで部屋を出て行った。
シルウェ様は、やっぱり優しい……。
私とは、釣り合わない……。
一人孤独に戻った部屋で、私は自分の体を抱きしめた。
♡♡♡
「シルウェ王子、今日もあの部屋へ行かれておられたのですか?」
俺が城の廊下を歩いていると、側近のリチャが話しかけてきた。
「そうだけど」
「何だか少し落ち込んでいるように見えるのですが、何かありましたか?」
「……」
さすが、俺が今までそばに置いてきただけある。リチャは俺のことをよく分かっている。
はぁとため息をつき、俺は口を開いた。
「レティアに振られた。まあ受け入れて貰うまで、諦めないつもりだけど、結構断られるって心臓に悪いね」
(「っ……ごめんなさい」)
少し悲しそうに、何かに縛られているように言った彼女のことを思い出す。
……あやまらなくていいのに。
俺の側で笑ってくれていたら、それだけでいいのに。
何でも叶えてあげるのに。君も望んでくれるのなら、俺と君だけの世界にしてあげるのに。
「シ、シルウェ王子っ」
自分の中の黒い感情が渦巻いて、危うくリチャに手をあげそうになった。
「ああ、ごめん。ちょっと危なかった」
無理矢理笑うとリチャは顔をひきつらせる。
「そ、それだけ、レティア様のことを想われているのですね」
「ああ、そうだよ」
レティアのためなら、何でもできるくらいにはね。
自分の左の薬指に嵌めた指輪を見つめる。
この指輪を……レティアに嵌めることができたら、それでいいんだから。
「でしたら、あなた様の婚約者候補の令嬢の方々は保留にすると連絡しておきますね」
「ああ、助かる」
気の利くリチャに感謝しながらふっとある事を思い出した。
レティアの正体を暴き、死に追いやろうとした教会派の公爵令嬢もそういえば婚約者候補に上がっていたな……気に入らない。
「もし反抗するやつがいたら、ちょっと脅しといて。俺の邪魔をするやつは、この国に必要ないからね」
「かしこまりました」
……邪魔者さえ消せば、レティアは俺を受け入れてくれる。
もう少しだから、我慢しないとね。
愛しい彼女を想い、俺は仕事へと戻った。
♡♡♡
「レティア〜会いに来たよ〜」
先日の一件があったが、シルウェ様は毎日私に会いに来てくれた。
変わらず優しい微笑みを向けて、彼は今の国の現状や流行を教えてくれた。たまに二人でカードゲームとかもして、私は部屋の中で生きることが苦痛ではなかった。
そして、あっという間に半年が経っていた。
「レティア、お父様がお亡くなりになられた」
いつもと同じ時間に訪れた彼が告げた言葉に、私はなんとも言えない複雑な感情になった。
「お父様が……」
「ああ、病死らしい」
病死……か。そうだよね、寿命で死ぬようなお年ではなかったはずだもの。
「それで、俺が継承権第一の王子だから、今日から王になってるんだ。立場上」
「はい」
「それで……」
彼は少し目を伏せてから、思いきったように私をまっすぐに見た。
「俺と、結婚してほしい」
私は目を見開いた。
また……そう言ってもらえるとは、思ってもいなかったから。
正直、私の気持ちは前の時よりもはるかにシルウェ様が好きになっていた。優しくて、私のことを考えてくれて。
私の中で唯一大事な人……だからこそ。
「婚約期間が欲しい。あと半年、私は罪人なの。その間に私が私でいいと思えるくらい、愛して欲しい。王妃として相応しいと思ってもらえるくらい、勉強もするから」
はっきりとそう言うと、彼は目を輝かせて私の手を握った。
「本当!本当に!?考えてくれるの?」
「ええ」
「嬉しい……いっぱい口説くからね。俺の王女様」
急に低い声で耳元で囁いた彼に顔の熱が上がるのを感じ、急いでベッドに走って隠れた。
し、心臓に悪い。
「レティアは本当かわいいんだから。このくらいで照れてちゃ、この先やってけないよ~?」
少し意地悪に彼は私に言い、部屋の扉を開けた。
「じゃあね、王女様」
……王女じゃ、ないんだけど。
出て行った私の心臓に悪い彼を毛布の隙間から見送り、私は本棚からたくさんの本を取り出した。
もう必要ないと思って勉強していなかったけれど、きちんと勉強しないとね。彼の言葉に応じたからには。
これまで、城にある何万という本を読んで勉強してきたけど、この部屋にある一番下の本棚の本だけは、まだ勉強していなかったのよね……。
本のページをめくりながら、私は目を動かす。
このくらいの量なら、2ヶ月もあれば細かいところまで覚えれるはず……って、え?
めくったページに手紙のようなものが挟まっており、開いて中を確認すると、私は息を呑むほど驚くことが書かれていた。
♡♡♡
「レティアと結ばれるまで、あと半年かぁ。嬉しい……。祝ってくれるよね?お父様」
前王の遺骨が収められている城の中の一室で、一人シルウェは語る。
「ああ、何も返せないか。忘れてた、ごめんね。でも、こうなったのはお父様のせいなんだよ?」
前王の写真……自分の父である写真を見つめ、シルウェは儚げに微笑む。
「俺がレティアのところに入り浸っているからレティアを殺すなんて言うから。こうするしかなかったの、分かる?俺だって実の父親を手にかけたくなかったよ〜」
はぁとため息を吐いてシルウェは涙を流す。
「これからは俺とレティアが国を守るから見守っててね」
王の印の入った腕輪を身につけて、シルウェはその場を後にした。
♡♡♡
私が見つけた手紙には、綺麗な達筆で、こう書かれていた。
『大きくなったレティアへ。
もうこの本を読むくらい大きくなったのね。その頃には、病で死んで私はもういないでしょう。きっとあなたは今までお父様に王女ではないと言われ、生きてきたんじゃないかしら?でもそれは嘘。あなたは本来の王女とすり替えて王女になったと思っているんでしょうけど、あなたとなくなった王女は双子なのよ。双子は不吉だと殺される可能性が高かったから、私はあなたをメイドへ預けた。……生きて欲しかったから。あの人には内緒ね、幸せになって欲しい。ーー王妃より』
どう、いうこと。
私は王女だったってこと?偽物じゃ、なかった?
この綺麗な字は間違いなくなくなった王妃のものだ。私……王女レティアの母である。
幸せに、なってもいいの?
それなら何で、もっと早く言ってくれなかったの?
言いたいことはたくさんある。
でも、私はーー
(「レティアが、好きなんだ」)
同じ父を持ったシルウェと結婚しても、いいの?
……どうしよう。でも返事しちゃったし
頭を悩ませていると、部屋の外から話している使用人たちの声が聞こえた。
「おい!教会派だったあの公爵家の令嬢が遺体で見つかったらしいぞ」
「半年前から行方不明になってた令嬢か?」
「そうそう。しかもかわいそうなことに、ギタギタに刻まれた跡が少し見つかったらしい。残酷だよな」
「そういえば、半年前ってシルウェ王様が荒れてた時期じゃなかったか?あの方、剣技においても優秀だったから令嬢を殺してても……」
「馬鹿なこと言うな!殺されるぞ!シルウェ王様は側近のリチャ様と妹であったレティア様以外に心をお許しになってないんだから……っ」
ガチャ
「「ひっ!!」」
罪人として良くないとは分かってる。でも、このまま聞かない訳にはいかなくて、私は勇気を出して、半年ぶりに自ら部屋のドアを開けた。
「今の話、詳しく聞かせてくれない?」
私は、本物の王女だったのだから。
二人から話を聞き出すと色々な情報を得られた。
私に毎日会いに来ていたシルウェは膨大な量の仕事をこなしていたということ。半年前……私が彼のプロポーズを断った日ぐらいから数日、彼が荒れていたということ。彼が婚約者候補の令嬢を全て断ったということ。……彼が、私に絆されていると噂になっていること。
私は絆すなんて考えたこともないのだけど。
知らないうちに大きくなっているらしい噂に私は驚くいた。
そういえば……特にそれが彼の通常運転だと思って何も感じていなかったけど、好きだと抱きしめられていたのは、普通じゃなかった?毎日毎日会いに来てくれていたのは、私と結婚するため……そう考えると彼はなかなかの策士だ。
ーー私は、彼に惹かれてしまったのだから。
どうしてもっと早く気づけなかったんだろう。
半年前までは、一線を引いていたではないか。
この部屋も彼が用意した部屋。お世話として部屋に出入りする執事もメイドも全て彼の部下。そして毎日会いに来るのは、シルウェたった一人。その一人からだけ愛を囁かれ、物を贈られ、結婚を申し込まれる。
ハハハッと乾いた笑いを私は浮かべる。
私は彼に惹かれたのではなくて、惹かれざるえなかったんだわ……。
気づいたところでもう遅い。彼は私を確実に手に入れようとしてたのね。
亡きお母様の手紙をそっと大事にしまい、私は薄く笑う。
いいわ、彼が私を自分のものにしようとしているのなら、私も彼を手に入れる。私がなくては生きていけないように。私を死ぬまで愛してくれるように。
……そう教えてくれたのは、あなたでしょう?
私は部屋にある造花の花びらをちぎって微笑んだ。
♡♡♡
「あーあ、バレちゃった。どこまで惚れさせたら気が済むんだろうね、レティアは」
城にある一室で、シルウェは笑う。
たった今途絶えたレティアの部屋の映像を残念に思い、ため息を吐く。
「もーあの護衛騎士二人は首だね、余計なことを喋っちゃうんだから。リチャ、始末しといて」
「仰せのままに」
リチャが部屋を出ていく姿を満足気に見送り、彼は上着を羽織る。
「死ぬまで黙っておこうと思ってたけど、バレたなら話は別だな。俺だけのレティアになってもらわないと」
シルウェは王として、いや一人の男として彼女の元へ向かった。
♡♡♡
「レティアは、俺のこと嫌い?」
私に問い詰められた彼は、普段と同じような微笑みを浮かべて笑った。
「違うでしょ?俺はこんなにも愛しているんだから。レティアも俺を愛してくれるよね?」
近づいてくる彼に少し警戒したのは、いつぶりだろうか。でも、不思議なことに彼を拒めない。
「初めから、こうなるつもりだったの?」
静かに言うと、「んー?」と彼は首を傾げる。
まるでそんなことを聞きたかったのかとでも言うように。
「そうだよ?だから邪魔なやつはみんな消したし、君の処刑を止めた。でも結果オーライでしょう?レティアは生きてたし、俺は望んでいたことだし」
「私、本物の王女だった。ーー全妃の手紙を見つけたの」
真実を伝えるべく見つけた手紙を手渡すと彼は驚いたように笑った。
「ここまで、分かってしまったとはね」
?
ここまで?
ーーもしかして、彼は知っていた?
私が後ずさると、彼は逃すまいと私に近づいてくる。
「そうだよ?ぜーんぶ、知ってた。ごめんね?レティアが王女なのも、王女だと分かった上で偽物の王女と言うのを反対しなかったのも。俺はレティアが一生側にいてくれればそれでいいんだ。他は何も望んでない」
彼の口から放たれる数々の真実に私は目を見開く。
きっと、彼のしてきたことは、許されることではない。本来なら王族でも殺されておかしくないはず。そんな人のそばに居続けたら、私はどうなるのか……。
でも、それでも彼が好きだと思ってしまうのはなぜだろう。何で彼を拒めないのだろう。
「嘘は結構ついちゃったけど。俺は、レティアを愛してる。これは本当、だから……結婚してくれるよね?レティア」
……ああ、もうだめだな。
どうして私の欲しい言葉ばかりくれるんだろう。
私の心を離してくれないんだろう。
「……ええ。私を一生愛してくれるのなら」
「それはもちろん。愛してるよ、レティア」
ーー誰かに心から愛して欲しいと願っていたけれど。
必要として欲しいだけだったけれど。
そんなこと、願う必要はなかった。
彼はーーシルウェは、ずっと、私を愛してくれていた。必要としてくれていたんだから。
周りから歪んだ愛と言われてもいい、病んでいると言われてもいい。この愛は、私にとって純愛だから。
愛してるよ、私だけのシルウェ。
♡♡♡
半年前ーー
「あなた様が、教えてくださったじゃないですか!?レティアが王女ではないと!」
目の前の公爵令嬢は泣き叫ぶように声を上げる。
「そして、公になって一年経ったら私をシルウェ様の正妃にしてくださるとも言ってくださったではないですか!?忘れてしまわれたのですか!?」
……うるさい。
レティア以外の令嬢なんて、元から興味なんてなかったけど。レティアを手に入れるためにはこうするしかなかったから、俺に惚れてる協会派の令嬢を使ったけれど、面倒だったな。
「もういいだろ。お前の役目は終わったんだ」
「そんなっ!そんなのあんまりです!もしかして、処刑をお止めなさるくらいレティアに絆されたのですか!?」
「絆された?」
笑える。絆されているのではなく、愛しているんだけど。
鼻で笑うと令嬢は目を見開いた。
「もしかして、初めからこのつもりで……っ!?」
「ようやく気づいた?だから教会派のお前を使ったんだけど。勢力が強まっては困るし」
「あんまりです!?」
「なんとでも言っていいよ。あとお前の人生は一時間だし」
「一時間!?」
「ああ、楽にあの世へ行けるよう手配しておいたから。俺の正妃を処刑へ追いやった悪女へのプレゼントだよ?感謝してね?」
「まさかっ!お待ちください!シルウェ様っ!シルウェ様!」
「リチャ、捕らえておけ」
「はい」
「シルウェ様ー!!」
わめく令嬢を置いて俺は歩き出した。
レティアを確実に手に入れるために。
俺があの令嬢を切り捨てたおかげで、今まで唯一の脅威だった協会派の勢力は弱まり、俺は圧倒的な支持で王になることができた。
政治の面で権力を持つのは悪くない。自分の思うように国を操れるんだから。
でも、そんな面倒なことよりも。
(「……ええ。私を一生愛してくれるのなら」)
あの時のレティア可愛かったなぁ。
そんなの当たり前に、死ぬまでドロドロに愛してあげるのに。
俺の愛はレティアに捧げるためだけに存在してるんだから。純愛はレティアにしか見せないよ?
だから、レティアは俺がいないと生きていけないような正妃になってね?
俺はもう君がいないと無理なんだから。
今日も愛しい君に会いに行くよ。
囚われた檻の可愛い可愛いレティア。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
よければ、リアクション・評価をしていただけると嬉しいです!感想もお待ちしております(^^)
皆さんにとっての“愛″はなんですか?
私はーー美甘作品を読んだ方にはバレちゃってますよね(*´∇`*)
この作品が皆様のドキドキの一部になってくれてたら嬉しいです。ここまで読んでくださりありがとうございました(^^)




