壊れた墓の上で
黒い森の入り口には、いつも生臭い金属の匂いと腐った苔の香りが混じり合っていた。森の境界線である巨大な枯れ木の下、五、六人の男たちが集まり、武器を点検していた。彼らは正規の騎士団でも、信念に満ちた聖戦士でもなかった。革鎧のあち코ちに継ぎ合わされた鉄板、刃こぼれした斧、そして何よりその瞳に宿る露骨な強欲。彼らは金の匂いを嗅ぎつけて集まった賞金稼ぎたちだった。
「噂を聞いたか? 今回の魔女の賞金、先月より倍に跳ね上がったらしいぞ」
山のような体格の男、バルガスが砥石で短剣を研ぎながらぽつりとこぼした。鉄の粉が空中に舞った。
「神聖教団の奴らも、ようやく狂ったか。二十歳そこらの小娘一人捕まえるのに、城一軒分の値を付けるとはな。異端というのがこれほど金になるとは知らなかったぜ」
傍らで石弓の矢尻に毒を塗っていた痩せこけた男、レンがにやけながら応じた。彼は森の奥をちらりと覗き込んだが、立ち込める霧のせいで十メートル先さえ定かではなかった。
「金の問題じゃねえ。あの森に入って戻ってきた奴がいないってのが問題なんだ。『黒い森の亡霊』の怪談を聞いてないのか? 魔女を守る、死なない騎士がいるっていう……」
群れに加わっていた若い狩人が不安げに唾を飲み込んだ。バルガスは鼻で笑い、短剣を鞘に突き刺した。
「馬鹿なことを。それは魔女が脅しのために流した出鱈目だ。死体がどうやって剣を振るうんだ? もし本当にいたとしても、俺たちにはこの『聖水』がある。闇市で大枚はたいて手に入れた代物だ。これ一瓶あれば、アンデッドの野郎どもは煙になって消えちまうのさ」
バルガスは懐から銀の瓶を揺らして見せた。狩人たちの目に再び自信が宿った。彼らにとって、魔女エデリンは生きている人間ではなく、歩く金貨袋に過ぎなかった。首を撥ねるか、あるいは手足を縛って引きずっていくだけで、一生を酒と女に溺れて暮らせる好機。
「行くぞ。日が暮れる前に魔女の小屋を見つけねえとな。森が深くなれば道を探すのも一苦労だ」
彼らは一斉に立ち上がった。狩人特有の隠密かつ素早い足取りで、彼らは禁じられた森の霧の中へと消えていった。
森は奇妙なほどに静まり返っていた。鳥の声も、虫の音も聞こえない。ただ、狩人たちの足元で砕ける枯れ枝の音だけが、静寂を切り裂いていた。霧は時間が経つにつれて濃くなり、まるで生き物のように彼らの足首にまとわりついた。
「ちくしょう、方向感覚が狂ってやがる。確かに北に向かって歩いていたはずなのに……」
レンが羅針盤を取り出したが、針は狂ったように円を描くだけだった。森の魔力が理性を麻痺させ、空間を歪めていた。狩人たちは本能的に隊列を狭め、武器を握りしめた。森の中心部に近づくにつれ、空気は冷たく凍てつき、背中をなぞるような冷気に鳥肌が立った。
その時だった。
霧の向こうから、低く鈍い音が聞こえてきた。
カチャリ。
金属と金属がぶつかり合う音。そして続いて、重い何かが地面を引きずる音が聞こえた。
ズズッ、ズズッ……。
狩人たちは一斉に足を止めた。音は正面から聞こえていた。霧の合間から、巨大な影が徐々に輪郭を現した。最初は岩かと思い、次は倒れた古木かと思った。だが、それは動いていた。
霧を切り裂いて現れたのは、漆黒の板金鎧を全身に纏った騎士だった。鎧のあちこちには亀裂が入り、欠け、まるで数百年の間、墓の中に埋まっていたのが今しがた這い出してきたかのような姿をしていた。兜の隙間からは、生命の気配など微塵も感じられない、青白い眼火が揺らめいていた。
騎士の右手には、自身の背丈ほどもある大剣が握られていた。剣先は地面に突き刺さったまま長く引きずられ、その軌跡を追うように黒い魔力が煙のごとく立ち上った。
「な、なんだあれは……」
若い狩人が後ずさりした。バルガスは唾を吐き捨て、聖水の瓶を構えた。
「怪談は本当だったようだな。だが怯むな! 言っただろう? これはただの抜け殻だ!」
騎士は何の言葉も発さなかった。警告も、威脅も、怒りの叫びもなかった。彼はただ、狩人たちが越えてはならない一線を引くかのように、彼らの行く手を阻んで立ち尽くしただけだった。
「どけ、死体野郎! 俺たちは魔女を迎えに来たんだ!」
バルガスが叫びながら聖水の瓶を投げつけた。銀の瓶が騎士の胸当てに当たって砕け、澄んだ液体が四方に飛び散った。神聖教団の祝福が触れた瞬間、アンデッドは燃え盛る苦痛とともに灰にならなければならなかった。
しかし、騎士は微動だにしなかった。鎧からチリチリと少し煙が上がっただけで、彼は依然としてその場に立っていた。むしろ、その無意味な抵抗を嘲笑うかのように、騎士はゆっくりと大剣を持ち上げた。
その動きには一切の無駄がなかった。それは相手を殺すための、効率的で精巧な装置のような動作だった。
パッ!
騎士が一瞬にして距離を詰めた。巨大な鎧の重量を感じさせない速度だった。先頭に立っていたバルガスが反応するよりも早く、大剣が水平に軌跡を描いた。
「あ……?」
バルガスは自身の視界が宙に浮くのを感じた。そしてしばらくして、首を撥ねられた自分の体が地面に転がるのを目撃した。痛みさえ感じることのない、刹那の死だった。騎士は返り血を浴びた鎧を拭うこともせず、次の目標へと剣を構え直した。
「こ、この化け物が!」
レンが悲鳴を上げながら石弓を放った。毒の塗られた矢が騎士の胸や肩に突き刺さった。だが、騎士は首を傾げることすらしなかった。矢が刺さったまま、彼はレンの襟首を掴み上げた。鋼鉄の篭手が喉仏を握り潰す音が、森の静寂の中で鮮明に響き渡った。
騎士はレンの死体をゴミのように傍らへ放り捨てた。その瞳には殺意すら宿っていなかった。彼にとって狩人たちは、排除すべき障害物、それ以上でも以下でもなかった。人間を相手にする態度ではなかった。まるで道端に生えた雑草を抜き取るように、彼は淡々と虐殺を続けた。
残された狩人たちが恐怖に駆られて武器を振り回したが、騎士の鎧に傷一つ付けることはできなかった。騎士は大剣を垂直に振り下ろして一人の頭を粉砕し、逃げようとするもう一人の背中をそのまま貫いた。
戦闘と呼ぶことすらできない、一方的な処刑だった。森の地面は瞬く間に狩人たちの血で泥濘と化した。最後に残った若い狩人は、腰を抜かして座り込み、ガタガタと震えていた。
「お願いだ……助けてくれ……俺はただ、金が必要で……」
騎士はその前に立ち止まった。巨大な大剣の先から、赤い鮮血がポタポタと滴り落ちた。騎士は答えなかった。慈悲や許しという概念そのものが、彼の魂には存在しないようだった。彼はゆっくりと剣を持ち上げ、そのまま振り下ろした。
「エピタフ、またどこへ……あ……」
森の奥から、清らかで落ち着いた声が聞こえてきた。
死体を突き刺した騎士の手が、ゆっくりと持ち上げられた。 騎士は首を巡らせ、声のした方を見つめた。
霧の間から、一人の少女が歩み寄ってきた。紫色の髪を無造作に結び、袖のほつれた質素なワンピースを着たエデリンだった。彼女の腕には、森で採れたばかりのような薬草がいっぱいに抱えられていた。彼女は地面に転がる死体や血生臭い匂いを目にしても、眉一つ動かさなかった。ただ見慣れた日常に直面した人のように、平穏な表情だった。
「助けてあげた甲斐もなく、また神聖教団の送り込んだお客さんが来たのね。今回は随分と騒がしかったわ」
エデリンが近づくと、騎士――エピタフは持っていた剣を低く下ろした。そして彼女が通れるように脇へ退き、ごく僅かに頭を下げた。先ほどまでの残虐な殺戮者とは信じがたい、騎士道的な礼遇だった。
エデリンは地面に横たわる死体を見つめた。 普通の女性なら死体を見て怯えるはずだが、彼女はすでに慣れ切っているようで、どこかやるせない表情を浮かべてエピタフを見た。 それは、死体に対する同情ではなかった。
「エピタフ、鎧に血がつきすぎてるわ。拭き取らないと、匂いが鼻について小屋の中まで悪臭が漂っちゃうじゃない」
エデリンはエピタフの傍らへ歩み寄り、抱えていた薬草の袋から乾いた布を取り出した。そして、巨大な騎士の胸当てに付着した血糊を、丁寧に拭い始めた。
エピタフはその手つきを黙って受け入れた。彼には自我があったが、エデリンの前ではただ、彼女の世界を構成する静かな一部となった。彼は答える代わりに、自身の大きな手を上げ、無理をして自分を追いかけてきたエデリンの肩に乗った土埃を慎重に払い落とそうと努めた。鋼鉄の篭手の無骨な動きが、よもや彼女の柔らかな肌を傷つけはしないかと、細心の注意を払っている様子だった。
「埃がついてるのを気にしてくれてるの? 大丈夫よ、昨日洗濯した服がちょうど乾いたところなんだから」
エデリンがふわりと微笑んで彼を見上げた。死体が転がる森のど真ん中、血の匂いが立ち込める壊れた墓の上で、魔女とアンデッドの騎士は、まるで平凡な恋人か兄妹のように穏やかな雰囲気を醸し出していた。
「夕食はシチューにするわ。あなたは食べないけれど、大好きな薪の燃える匂いがするはずよ。帰りましょう」
エデリンが先立って小屋の方へ歩き出した。エピタフは地面に突き立てていた大剣を引き抜き、肩に担いだ。彼は彼女の背後、正確に三歩後ろから、影のように付き従った。
先ほどまで人間の骨を砕いていたその手が、今は彼女が歩く道の上にある石ころを退けていた。森の霧は、彼らの後ろ姿をゆっくりと飲み込んでいった。遠くで小屋の小さな灯火が瞬き始めた。それは酷く残酷で、かつ奇妙に温かい、人間を拒絶した黒い森の日常に他ならなかった。
友人から勧められて, こちらで連載を始めることになりました韓国のユーザーです。至らない点もあるかと思いますが, よろしくお願いいたします。




