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デスゲームイマージョン  作者:


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2/2

第1話:没入の誘い

「国木なぎささん、こちらへどうぞ」


受付の女性に案内され、私は施設の中に足を踏み入れた。施設は想像以上に豪華だった。ガラス張りの近代的な建物は、まるで高級リゾートホテルのようだ。


「すごい...」


思わず呟くと、隣にいた若い女性が同意するように頷いた。


「本当ですね。私、桜井美咲です。よろしくお願いします」

「国木なぎさです。よろしく」


軽く会釈を交わす。周りを見回すと、参加者たちが続々と集まってきていた。年齢層はバラバラだ。二十代から五十代まで、男女比もほぼ半々。全部で五十人ほどだろうか。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


白衣を着た研究員が、ステージに上がった。四十代ぐらいの男性で、穏やかな笑みを浮かべている。


「私は研究主任の高橋と申します。この度は、我々の実験にご参加いただき、誠にありがとうございます」 


高橋と名乗った研究員は、プロジェクターを操作しながら説明を始めた。


「今回の実験は、最新の痛覚フィードバックシステムを搭載した、没入型ホラーゲームの体験です。このシステムは、脳波と触覚を直接リンクさせる技術を用いており、ゲーム内で受けたダメージを、実際の痛みの十分の一程度に変換します」


スクリーンに、システムの図解が映し出される。 


「安全性については十分に検証済みです。痛みは軽度で、実際の怪我をすることはありません。また、いつでも中断することが可能です」


説明が終わると、私たちは各自の部屋に案内された。

部屋は驚くほど快適だった。ホテルのスイートルームのような広さで、ベッド、デスク、ソファ、そして大型テレビまで完備されている。


「これで三日間か...悪くないな」


荷物を置いて、ベッドに腰掛ける。デスクの上には、タブレットとスケジュールが置かれていた。三日間で合計五回のセッションがあるらしい。

オリエンテーションの時間まで少しあったので、施設内を軽く見て回ることにした。食堂、ラウンジ、図書室、そして大浴場。本当にリゾート施設のような充実ぶりだ。


「いいところだよな」


声をかけられて振り返ると、三十代ぐらいの男性が立っていた。眼鏡をかけた、理知的な雰囲気の人だ。 


「あ、はい。思っていたよりずっと快適で」

「俺は佐藤。エンジニアやってる」

「国木です。同じくIT関係で」

「おお、同業か。じゃあ、技術的な話も分かるかな。このシステム、かなり興味深いんだよ」


佐藤さんは目を輝かせて言った。


「脳波と触覚のリンクって、理論的には可能だけど、実用化されてるなんて聞いたことない」


話しているうちに、オリエンテーションの時間が近づいてきた。

オリエンテーションルームには、すでに大半の参加者が集まっていた。前方のテーブルには、見慣れないデバイスが並べられている。

VRヘッドセットよりも薄型で、まるでサングラスのような形状だ。


「皆さん、これが今回使用するデバイスです」


高橋研究員が、デバイスを手に取って説明を始めた。実演を見せながら、研究員がデバイスを装着する。


「それでは、まず動作確認を行います。デバイスを装着してください」


指示に従い、デバイスを装着する。こめかみの部分に、ひんやりとした感触。そして――

視界が変わった。

目の前には、シンプルな白い部屋が広がっている。しかし、これは現実ではない。完全に仮想空間だ。


「すごい...」


没入感が、これまで体験したどんなVRよりも圧倒的だ。視界に違和感がまったくない。まるで本当にそこにいるかのようだ。

触覚テスト、痛覚テストと続き、デバイスを外す。参加者たちは、興奮した様子で話し合っている。

休憩を挟んで、第一回の実験セッションに移った。

デバイスを装着すると、私は薄暗い廊下に立っていた。

廃墟と化した病院。壁は剥がれ落ち、床には瓦礫が散乱している。遠くから、不気味な機械音が聞こえてくる。

心臓が激しく鼓動する。これは、本物の恐怖だ。

角を曲がった瞬間、何かが襲いかかってきた。咄嗟に腕を上げて防御する。鋭い爪が腕をかすめ――痛い。


本当に、痛かった。

ゲームオーバーの文字が表示され、視界が元に戻る。デバイスを外すと、他の参加者たちも同じように驚きの表情を浮かべていた。

しかし、その夜。


大浴場で身体を洗っているとき、私は気づいた。腕に、赤い線が走っている。ミミズ腫れだ。ゲームの中で爪に引っかかれた、まさにその場所に。

気のせいだろうか。

不安が、じわじわと心に広がっていった。

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